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私のリーダー論

会議の資料は数字だけ カプコン創業者のリスク管理術 カプコンの辻本憲三会長兼CEO(上)

2019/1/24

「そこで、必要な容量を聞き取り、それをまかなえる小型化したチップが作れないか、リコーに依頼しました。完成までに6カ月ほどかかりましたが、これで世界の誰もまねできないような高性能のゲームを作れるようになりました」

「開発陣には、とにかく最先端の技術で最先端のゲームを作るんだと言ってきました。織田信長が渡来したばかりの火縄銃を使って、最強と言われた武田軍の騎馬隊を破ったのと一緒ですね。相手が持っていない最先端の技術で攻めれば勝てる。2016年に約100億円を投じて最先端の開発施設を建設したのもその一環です」

■売上高を3つの視点から分析

米国の家電見本市「CES」に出展(1987年1月)=カプコン提供

――世界展開も早かったですね。

「当初からゲーム業界で生き残るには世界ブランドを目指す必要があると思っていました。特に本場である米国には85年に現地法人を設立し、認知度を高めてきました。その効果もあって『ストリートファイター』の実写版のハリウッド映画を94年に公開することができました」

「当社が40億円の製作費を全額出資しました。ゲームの世界を忠実に再現したかったのと、映画製作の現場を学びたいと思ったからです。いまだに関連収入がありますし、世界中で知ってもらうきっかけになりました。その後、他のゲームの映画化でも知見が役立っています」

――ゲーム会社はヒット作の有無が収益に影響しがちです。経営トップの役割は。

「やはり数字を重視することです。菓子卸をしていた頃、手形を切って運転資金を確保していました。支払期日がいくつも重なり、常にカネのことを考えていました。数字が分からないと商売はできないと実感したことが背景にあります」

「いま、当社の会議資料は数字ばかりで文章はほとんど入っていません。言葉を通じてなら考え方などは分かりますが、実態を把握するのには向いていないからです。経営リスクを社員全員が認識できるよう、重要な経営指標を定めています」

「具体的には損益計算書の項目ごとに、前年比、計画比、売上高に対する構成比の3つの数字を時系列で並べて見る。それを基準にソフトの開発計画や値下げのタイミングなどの販売戦略を練ります。悪いところを数字で見つけて、どう改善すべきか考えるのが経営者の役割です。うまくいっているところは放っておいてもいい。その意味では、トップの仕事は面白いことなんてほとんどないと言っていいかもしれません」

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