絶滅危惧のハワイ固有カタツムリ 最後の1匹が死ぬ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/26

多様なカタツムリが絶滅の危機に

約10年前、ハワイマイマイのうち、90%以上の種が失われたと広く信じられていた。しかし、絶滅したと考えられていた数十の種が再発見され、新種もいくつか見つかった。

しかし依然として、現存するハワイのカタツムリたちは苦境に置かれている。ほとんどの種が単独の尾根や渓谷のみに生息しており、捕食者が最後の隠れ家に侵入し始めたことで、近年、個体数の減少が加速しているのだ。

「10年以上観察を続けた群れがいるのですが、ずっと安定しているように見えました……ところが、この2年弱で、完全に消え去ってしまったのです」とシスチョ氏は話す。「私たちは皆、その場で泣き崩れました」

シスチョ氏によれば、野生下で保護するか研究所に持ち帰らない限り、これらの種は数カ月から数年以内に絶滅する可能性が高いという。

さらに、世界中で同じことが起きている。1500年以降に絶滅したことがわかっている動物のうち、約40%がカタツムリとナメクジだ。しかも、より多くの種が発見前に絶滅したと考えられており、現在もたくさんの種が危機にひんしている。もしジョージの死に希望の兆しを見いだすとしたら、対策を講じる時間が残されているうちに、世界の陸貝が直面する絶滅の危機に注目が集まる可能性があることだろう。

急激な現象の理由は?

ハワイの陸貝が減少している原因は外来種、特にヤマヒタチオビ(Euglandina rosea)だ。ヤマヒタチオビはカタツムリやナメクジを食べる陸貝で、同じく外来種のアフリカマイマイを駆除するために持ち込まれた。ところが、ヤマヒタチオビはむしろ固有種を気に入り、1955年の導入以降、異常な早さで捕食している。

雨量の増加と気温上昇の影響で、ヤマヒタチオビが高地に移動し、固有種がすむ最後の隠れ家が侵食されているのではないかと研究者は考えている。また、個体群の健全性がすでに崩れていたにもかかわらず、カタツムリの寿命の長さがそれを覆い隠していた可能性もある。寿命が長ければ、新しい世代が生まれなくなっても、しばらく個体数が維持されるためだ。

崩壊は急激だ。分子生態学を専門とするハワイ大学マノア校のメリッサ・プライス氏は、遺伝学的な手法でカタツムリの生態と進化について研究している。プライス氏は2018年4月、お気に入りの種であるAchatinella lilaが野生で絶滅しかけていることに気付いた。3年前、最後の一群を数えたときは、プナルウ渓谷とカネオヘ湾を見下ろす尾根に約300匹が残されていた。

「地球上で最も神秘的な場所でした。虹色の美しいカタツムリたちが木にぶら下がっているのです」。しかし2018年、プライス氏らが再び訪れてみると、20時間探して1匹しか見つからなかった。

ほかの島で暮らすほかの種にも同じことが起きている。「少しずつ姿を消しています」とプライス氏は嘆く。「ハワイマイマイがまるごと地上から消え去ろうとしています」

1980年代、ハワイマイマイ属の全種が絶滅危惧種に指定された。これを受け、ハドフィールド氏は希少種を救いたい一心で飼育繁殖施設をつくった。「私たちは当時、今見ているのは最後の個体だとわかっていました」

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