サクソフォン、習うべきか?
著述家、湯山玲子さん
父の形見のサクソフォン(サックス)があります。セカンドライフに習ってみたいと思っているのですが、小さい時から楽器は苦手。習うべきなのか、思いとどまるべきなのか、日々悩んでいます。(埼玉県・男性・60代)
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音楽教室と言えば、子どもが通うものと相場が決まっていたものですが、今や中高年の生徒さんで盛況のようです。知り合いのピアノ弾き(美人)は、企業の会長クラスの個人レッスンで、メシが食えている、という状態。確かに、仕事をリタイアした後、楽器を通じて、自己表現の道に入っていくことは素晴らしい第二の人生の選択です。
サックスが手元にあるのならば、一日も早く吹き始めるべしです。相談者氏の青少年期の音楽環境は、バンドの存在自体が珍しかったり、初心者用のメソッドが偏っていたりで、あまり良いものではなかったはず。しかし、現在は状況が違っているので、挑戦してみたら「こんなに演奏っておもしろかったのか!?」となる可能性は高い。
で、ここからがアドバイスです。教室に通って年一回の発表会でだけ曲を吹く、というようなお稽古事にすることは、できれば避けてください。せっかく「表現」という可能性のとば口に立ったのだから、「よくできました」というお世辞が定番の世界に浸りきるのはもったいないし、たいていの場合、三日坊主で終わります。
オススメなのは、もう、最初っからライブ! 一通り音が出たところで、観客がいる場にどんどん出ていって、人前で演奏の経験を積みましょう。表現者全てに言えることですが、1回の舞台は100回の練習に勝るのです。サックスの特徴は、音が他の吹奏楽器より簡単に出せるところ。今はユーチューブに練習動画がたくさんアップされていますので、独学でもある程度吹けるようになるでしょう。
そうしたら、仲間を募ってバンド結成です。メンバーを集めて、スタジオに入りましょう。コピーバンドではなく、最初からオリジナル楽曲を作っても良い。オヤジバンドはちまたにたくさんあるので、そこにサックスだけ飛び入りをさせてもらうのもいいでしょうね。
ちなみに、ここに至るまで絶対に1年以内でやる、と決めてください。もはや、1年後にライブハウスを予約してしまう勢いで! 仕事と同じく「納期厳守」感覚は、エネルギーを呼び起こす導火線としてはとても有効です。一度きりの人生の総仕上げは時間つぶしのようなユルい行為より、もう一花、ぐらいの挑戦があったほうが生きがいがあるというものです。
[NIKKEIプラス1 2019年1月19日付]
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