高価なしゃもじ・小型薫製器…カッコいい調理道具5選
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、一つの機能を極めたカッコいい調理道具を紹介する。
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こんにちは、飯田結太です。調理道具は進化し続けていますが、便利や時短になるというイマドキの視点とは違うこだわりつくしたものもあります。あまりにもこだわっているので高額なものも多いのですが、個人的には機会があったらぜひ欲しいと思う、カッコいい調理道具を厳選しました。
軽くてこびりつかない最新の無水鍋
水をいれずに、食材の水分だけで煮込む無水調理は、ここ数年で広く知れ渡り、家庭でも気軽にできて、栄養がしっかり取れることから人気調理方法のひとつになりました。そうなると、各メーカーが無水調理用の鍋の開発を進め、さまざまな商品が発売され、今では定番鍋のひとつといえるほど。そのなかで2018年10月に発売されたばかりの最新の無水調理用の鍋が、北陸アルミの「HAMON」です。
無水調理ができる鍋は、鍋の中の食材を加熱することで、蓋の内側の突起部分に素材のうまみが詰まった水蒸気がたまり、それが食材に降り注ぐことで水分を入れなくてもおいしく仕上がる構造になっているもののこと。
ただし、加熱することで出てくる水分をためるには、ある程度の重さと高い密閉性が必要なため、今までの無水鍋は重量感のある鉄製のものがほとんどでした。しかし、重いほど密閉性は高くなりますが、鉄製は食材がこびりつきやすく、あとかたづけが大変。
それらのデメリットを解決したのが、HAMONです。HAMONは、金属のなかでも軽いアルミニウム製。鉄の約3分の1の比重といわれます。そして、内側にセラミックコーティングをしているので、食材がくっつきにくく、洗いやすい。さらに、本体よりも蓋を重くして水の膜を作れる構造、「ウオーターシール効果」をキープ。さらに、アルミニウムの熱伝導率は、鉄の約3倍も高いといわれているので、料理時間が短縮するなどいいことずくめ。
これは、アルミニウムに強い北陸アルミだからこそできた鍋なんです。手作業で作られているので1日に製造できるのは50~60個。デザインも色もカッコいい。価格は高めですが、絶対に損しない鍋だと思います。
構想24年、芸術作品のようなしゃもじ
初めてこのしゃもじを見たとき、パーツごとに使われている素材が高級すぎて驚きました。まず、柄の部分は積層強化木という水に強い木材。これは、超高級包丁に使われる素材。次にヘラの部分は、フッ素樹脂をコーティングしているのではなく、霧吹き状に吹き付けてそれだけで固めているんです。要するにまるごとフッ素樹脂。
素材だけでも驚きですが、価格が1万2000円と聞いてあっけにとられました。聞くと、プリンス工業の高野信雄社長が24年も考え続け、試作を重ねて作り上げたものなんだとか。
なぜしゃもじにこだわったのかというと、高野社長いわく、「ご飯を炊く熱源は、かまどからガスに変わり、IHになっている。炊飯器も土モノから鉄、アルミなどに進化しているのに、しゃもじだけはずっと昔から進化していない」と。くっつかないように凸凹になっているものはありますが、数年使えばご飯がくっついてしまうなど、満足できるものではなかったそうです。
そこで、「もっとデザインがカッコよくて、ご飯がくっつかないものを作りたい」と、構想を練っていたと言います。その言葉通り、完成したものは本当にご飯がくっつかない。つるんと落ちるんです。それがあまりにも面白すぎて何度も茶碗にご飯をよそいなおしてしまったほどです。しかもフッ素樹脂でできているので、半永久的にくっつかないのではないかと思います。
軽くて香り際立つ、銅製のミル
ソルト&ペッパーミルといえば、プジョーか、コール&メイソン製がプロの定番です。特にコール&メイソンの特徴は、コショウや塩の粒を潰して細かくするのではなく、細かく切り刻むように刃がついていること。これによって、香りも際立ちます。
いろいろなミルを使い比べてきましたが、コール&メイソンのものが最も軽くひけると思います。そして、調節もかなりしっかりしています。ペッパーミルなら粗めから細かいタイプまで6段階。ソルトミルでも3段階に調節できるんです。まさに玄人好みのミルですね。
そんなコール&メイソンのミルのなかで、これは銅でできた特別仕様。さらに、永久保証付きです。それだけ自信があるミルなのです。これは料理好きな男性へのギフトとしてもお薦めです。飾っておくだけでもカッコいいですね。
細かい気配りがきいた、飾っておきたいやかん
クックベッセルは、日本で初めて笛吹きやかんを生産した会社。やかんのデザイン性の高さには定評があります。中でも人気が高いのがこちら。重心が低くて鍋のようなデザインは美しいですよね。
底面が広いので熱効率も良く、湯がすぐに沸かせるのも魅力です。さらに、蓋の取っ手は、天然木を挟んだデザイン。これは見た目が美しいだけじゃなくて、木を挟むことで熱を伝えづらくしているので、沸騰したばかりでも蓋を開けることができるんです。
さらにハンドル部分を倒すと取っ手と同じ高さになり、収納もラクラク。冷蔵庫にもすんなり入ります。魅力的なデザインは優れた機能にもつながっているんですよね。
とにかくフォルムが美しいので一度は憧れるやかんなんです。これで湯を沸かし、カップラーメンを食べるのが私の夢。ぜいたくな使い方だと思いませんか。
瞬間で仕上がる超コンパクト薫製器
一見、何の道具だか分からないですが、これはれっきとした薫製器。薫製もここ数年のブームですね。いろいろな薫製器がありますが、ここまでコンパクトなのは、これだけではないでしょうか。
本体の上にチップを載せて火をつけ、横のスイッチを押すと、モーターが回り、ホースから煙が出てくるという仕組み。ホースは取り外し可能。例えば、卵を薫製したいときには、卵を入れた器をラップで覆って、その中にホースを入れるだけ。スイッチを押すとすぐに煙がホースから出て器の中に充満します。薫煙が落ち着くまで待ち、薫製の完成まで数分。ビニール袋の中でもできるので、キャンプなどにも重宝です。
薫製を作りたいけど、大量にはいらない、思いついたらすぐに作って食べたいというときに便利です。これは収納場所を選ばない、すぐにできることから飲食店でも人気で、おいしいと評判です。気軽に薫製が楽しめるのがいいですね。ホームパーティーに持っていっても注目されそうです。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
[日経トレンディネット 2018年12月13日付の記事を再構成]
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