「Oh!間違いない」は焼き上がり当日はそのまま食べるのがお薦め

こちらの食パン「Oh!間違いない」(2斤800円、税別)の特徴は自然な甘み。

「奄美大島で精製せずに煮詰めて作られたざらめ糖を使っています。サトウキビ由来のコクと素朴な甘さがあります」

他にも、黒潮の海水を自然ろ過して煮詰めた奄美大島の「真塩(ましゅ)」と呼ばれる塩、厳選された生乳から作る添加物を一切使用していないフレッシュな生クリームなど、間違いない素材が使われている。

店名のインパクトに負けない味への追求はもちろんだが、こだわりはそれだけではない。

岸本さんは「お客さまのニーズ、つまり、『おいしさ』を超えた『体験』や『付加価値』を売っていきたい。例えば、朝食だけじゃなく午後のおやつとしての食パンというライフスタイルの提案だったり、ちぎって食べるという食べ方の提案であったり、手土産として行列に並んでみて買うという日常生活ではないワクワク感だったり。そのために紙袋を4色刷りにして無駄にお金をかけたりしています」と笑う。

パン店には珍しい4色刷りの紙袋

こうしたエンターテインメント性を重視するのは、パン店をプロデュースするようになったキッカケが大きい。

「東日本大震災の後、甚大な被害を受けた岩手県大槌町で住民アンケートをとったところ一番欲しいものが『焼きたてパン』だったということで、パン店の出店プロジェクトのお手伝いをしたんです。開業したパン店では買いに来る人だけじゃなく働く人も楽しくなるようにパフォーマンスを取り入れていました。結果、みんなに喜んでもらえて、地域が元気になったんです」と岸本さんは振り返る。

パンには地域を活性させる力があると、パンの可能性を改めて知ったという。

「よく『おいしいものを作れば売れる』とか『うちはおいしいものを作っているのになぜか売れない』という人がいます。でも、蛍光灯の下でそのへんの机に商品並べて売れるかといったら、売れるわけないだろうと思うのです。モノを売るのも色々な考え方があるので、味だけをひたすら追求することも否定はしません。でも、僕らはこれからもエンターテインメント的なパン屋を作っていきたいですね」

隅々まで計算された店作りと、ロジックだけではない熱い思い。このギャップも魅力の一つだろう。パン好きだけでなく、パン店経営に興味がある人も行列に並んでみれば参考になるのではないだろうか。

(ライター 柏木珠希)

「話題のこの店この味」の記事一覧はこちら