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「恐怖ビジネス」で若者つかめ ホラー活用、客層に幅

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10代、20代の獲得に多くの企業が苦戦している中、「恐怖」を活用して成功を収めているスタートアップ企業が闇(東京・世田谷)だ。ホラーは若い世代の男女共に人気があるジャンルでSNSとの親和性も高いため、拡散されやすい。ホラー演出に特化した同社の事例を見ながら、若者を取り込む「恐怖のビジネス」の可能性を探った。

観覧車に若者を乗せろ

東京・お台場のパレットタウンにある観覧車。2018年11月下旬に訪れると、2台のゴンドラだけ異なる仕様になっていた。ヘッドホンを渡され乗り込むと、ゴンドラ内は血のりが付いた写真で埋め尽くされている。地上を離れるとヘッドホンから聞こえてくる男性の声が、そのゴンドラで起きた悲劇を語り始める。そしてきれいな夜景が見えていた窓の外に、ハサミを持った女性の姿が現れる。

これは18年7月からパレットタウンとマリノアシティ福岡に登場した「血バサミ女の観覧車」というアトラクション。両施設の観覧車を管理するサノヤス・ライド(大阪市)が企画した。「観覧車は地上から隔離されるし、個室から出られない。ホラーにぴったりだと考えた」(サノヤス・ライドの岩永亮平氏)。

観覧車をホラーにした狙いは、若い世代の獲得だ。一般的に観覧車の乗客は親子連れなどファミリー層が中心。「遊園地に来ても観覧車に乗らない若者に関心を持ってもらいたかった」(岩永氏)。その狙い通り、別のゴンドラとは異なる若いカップルや女性同士が列を作った。

7月14日から9月2日までの期間限定で始めたが、8月後半になっても乗客が減らなかったため、福岡は常設に変更。一度幕を閉じたパレットタウンも、11月10日~11月25日の土・日・祝日限定で復活した。反響は他の遊園地にも広がり、サノヤス・ライドが管理・運営を担当していない遊園地からも問い合わせがあるという。

このホラー観覧車の企画・演出を実際に手掛けたのが闇だった。

競合がいなかったホラー

15年に設立した闇が目指すのは「ホラーとテクノロジーを組み合わせ、新しい感動を提供する企業」(頓花聖太郎社長)。お化け屋敷と異なり、脅かす役の人間が乗れない観覧車では、立体音響を利用したホラーを採用。立体音響が生きるシチュエーションは何かと考えて、乗客の耳元でハサミの音が聞こえる「血バサミ女」というコンテンツを生み出した。意識しているのは「テクノロジーが生きるホラー」だという。

新しいテクノロジーを利用した体験型イベントには、チームラボ(東京・千代田)を筆頭に先行者がいるが、闇の特徴はホラーに特化した点。「新しい技術で驚かせる施設は子どもが楽しめるハッピー路線が中心で、ホラー路線はまったくなかった」と頓花社長は設立当時を振り返る。しかし、実はホラーとテクノロジーは相性がいい。「ホラーの魅力は、人をどれだけ裏切れるか。たとえば予想もしていないところから驚かされるように。テクノロジーを使えば魔法のような体験ができる」

若い世代、しかも男女両方に人気

設立したばかりの闇に、最初に声をかけたのは夏季限定のお化け屋敷を開催しているMBS。15年に開催された「呪い指輪の家」で闇は、NTT西日本が開発した、端末を付けた人間の脈拍と移動速度を外部に通信する技術を「ビビり度診断」という演出に活用。さらにお化け屋敷内に3台のカメラを設置し、来場者が大きな声を上げたところの映像を自動で編集し、YouTubeにアップするシステムを作り上げた。

来場者は機器を装着してお化け屋敷を楽しんだ後、渡されたQRコードでインターネットにアクセス。すると自分がどれだけ怖がったかというビビり度が示され、さらに大きな声を上げて驚く自分の動画が再生される。自分が驚く姿をSNSで共有することで、お化け屋敷を出た後も仲間同士で楽しめる仕組みだ。

ホラーが若者に刺さるコンテンツだということは、MBSがお化け屋敷の来場者に向けて行ったアンケートからも見えてくる。

来場者の65%を10代と20代が占め、40代以上は10%しかいない(16年の観客アンケートより)。さらに同じアンケートで男女比を見ると、男性46.2%、女性53.8%とほぼ同じ割合。若い世代に人気のあるアイドルやアニメなどでは、作品によって男女の比率が偏ることが多いが、ホラーは男女両方に人気がある。「ホラーはティーン、M1層、F1層に届く貴重なコンテンツ」とMBS事業部の荒井丈介マネージャーはホラーの魅力を語る。

ホラーはSNSで拡散されやすい

SNSとの相性の良さもホラーの魅力だろう。衝撃的な動画は、その驚きを誰かと共有したくなるからだ。福岡県苅田町のタイヤ通販会社オートウェイが、13年に公開したウェブCM「雪道コワイ」は、スタッドレスタイヤを着けないで雪道を走る危険を訴えるのにホラーを利用した。SNSで多くの人に拡散され、海外ニュースにも取り上げられるほどの話題になった。

若い世代を獲得するために、ホラー映画もSNSを積極的に利用している。18年9月に公開された「クワイエット・プレイス」は、ウェブ用にローカライズした15秒のCM素材、6秒のバンパー動画、SNS用素材を用意し、Twitterを中心にデジタルのPRに予算の多くを投じた。「ホラー映画の成功は、はまると爆発力が大きい若年層(ライト層)が来るかどうかがキーになる」(映画を配給した東和ピクチャーズの山本杏氏)からだ。「王道かつ新感覚な怖さで若年層が劇場に来てくれるポテンシャルがある映画だと感じたので、デジタルに注力した」という。狙い通り、クワイエット・プレイスは12月までに興行収入8億6000万円のヒット作となった。

リゾート地での住み込み型アルバイト「リゾートバイト」に特化した求人サイトを運営するアプリ(東京・新宿)は、若い世代にリゾートバイトという存在を知ってもらうために、闇に仕事を依頼した。

「今の若者はリゾートバイトという存在を知らない人も多いんです。彼らがアルバイトしようと思ったときに候補に思い浮かべてもらえるように、リゾートバイトの存在を知ってもらいたいと考えたのがきっかけでした」(企画を担当したアプリの東代亮プロダクト・マネージメント・オフィサー)

自身がゲーム好きで、ホラーゲーム実況もよく見るという東代氏は、怖い話は話題性があり、ネットでバズるのではないかと考え、闇に企画を依頼した。その結果、生まれたのが、リゾートバイト紹介サイト「はたらくどっとこむ」のプロモーションとして制作された無料ホラーゲーム「サクヤサマ 呪われたリゾートバイト」だった。離島の温泉で働くことにした主人公が、眼をえぐられ殺された「サクヤサマ」という怨霊の呪いに巻き込まれていく。

実際にプレーして驚くのは、ゲームが本当の恐怖体験だったことだ。「最初はハッピーエンドだったのですが、プレーしてみて、なんだか普通だなと思ったんです。インパクトがあったほうがリゾートバイトが記憶に残るし、話題にもなると考えました」と東代氏。狙い通り、「サクヤサマ」はネットで話題になり、YouTuberもゲーム実況で取り上げた。「『そんな求人、誰が行くかよ』という書き込みを見たときは、やったと思いました」と東代氏は笑う。ゲームがSNSで拡散されていると実感できたからだ。

意外に強くないホラーと夏の関係

一方、弱点として思い付くのは「ホラー=夏」というイメージだろう。だが、コンテンツを見ていくと、ホラーと夏の関係がそれほど強くないことも見えてくる。

ホラー映画は夏という印象が強いかもしれないが、大作映画が相次いで公開される夏休みを避け、秋から冬にかけて公開されるものが多い。先に例を挙げた「クワイエット・プレイス」は9月28日公開。2017年22億円の興収をあげ話題になった「IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」は11月、ジャパニーズホラーとして有名な「リング」や「呪怨」は共に1月公開だ。ホラーゲームやホラー漫画も夏という季節にひも付いてはいない。

ハロウィーンも夏以外のホラーコンテンツだ。毎年秋に大々的にイベントを行うUSJが最初にハロウィーンを手掛けたのは02年だが、11年に本格的なホラーを導入して以来、若い観客に支持され急成長。今では一年のうちで最もパークが盛り上がる時期となった。

冒頭に紹介した血バサミ女の観覧車が11月に期間限定で復活したのも、「ホラーは夏のみではなく、どのシーズンでも楽しめるのではないかと考えた」(岩永氏)からだという。

なのに今も「ホラー=夏」というイメージを持つ人が多いことについて、頓花社長は「お化け屋敷や怪談というフォーマットの印象が強いからではないか」と考える。「ホラービジネスを成長させるには、ハロウィーンのような、夏以外のフォーマットをどれだけ生み出されるかにかかっていると思います」

MBSメディアホールディングスは11月、闇を子会社化した。メディア企業がスタートアップに投資する場合に多いコーポレートべンチャーキャピタル(CVC)ではなく、株式の8割取得し、荒井丈介氏を代表取締役として送り込んだ。

荒井氏は頓花社長と共に15年からお化け屋敷を開催してきた関係だが、お化け屋敷だけにとどまるつもりはないという。2人が目指すのは「クライアント企業が抱える課題を、ホラーというアプローチで、怖くて楽しいソリューションを提案できる。そんな会社に育っていくこと」(荒井氏)。観覧車、求人サイト。「恐怖のビジネス」は次にどんな場所で若者を狙うのか。

(日経BP社編集委員 大谷真幸)

[日経クロストレンド 2018年12月28日の記事を再構成]

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