自由な麻布、考えた自分の軸 ヤフーアカデミア学長伊藤羊一・ヤフーアカデミア学長が語る(上)

これまで毎日、入荷していた水が、週に1回しか入ってこない。当然、全国から来る注文をさばききれません。そのとき、ほかの地域の注文を全部捨てて東北に送れ、と決断したことは、今から振り返ってみると美談みたいになりますが、当時は社内でもいろんな意見がありました。

Aを選ぶと言った瞬間、「Bはどうするんだ!」という声が上がる。結局、何に基づいて判断するかっていうと、麻布のときに重要だった自分の軸、信念、譲れない思いなんです。正しいかどうかなんて、この際もうないわけですよ。正しいかどうかは自分で決める。いや、正しいかどうかじゃなく、これが俺の道だと決めるしかない。このことを震災のときの経験で初めて知りました。

社会人になってからいくつか災害とかかわる経験があったので、とにかく前に突っ込んでいこうという決断ができました。ただ、前のめりに突っ込んでいけばいくほど意思決定、判断を求められることになります。

東日本大震災のときは、これまで1日1回もないような意思決定を1日に100回ぐらいしているような状況でした。そこから、自分の軸って何だろうって改めて考えるようになりました。もう40歳を過ぎているんですけどね。震災後3カ月ぐらいはずっとそのことを考えていましたね。「やっぱり軸は大事だわ」と。当時は「困っている人を助けるのが仕事なんだ」というぐらいでしたが、ビジネスパーソンとして、ちょっとずつそういうことを大事にするようになってきました。

自分の軸をつくるヒントを、高校時代にたくさんもらっていた。

麻布時代の伊藤氏

今、ヤフーアカデミアでやっているリーダーシップ開発というのは、リーダーとして目覚めるということですが、それは言ってみれば自分自身が目覚めるということです。僕自身が判断の軸とか信念を本当の意味で実感し、リーダーとして目覚め始めたのは2011年の経験からですが、思い起こすと、麻布の高校時代には自分の軸をつくるヒントのようなことをみんなでとにかくよく話していました。

音楽の話が中心でしたが、この曲いいぞ、と紹介しあうようなことをしょっちゅうしていました。高3のときは毎週火曜の朝、10人ぐらいで輪になって、自分の好きな曲を歌うんです。「火曜朝の歌謡会」です。歌うだけでなく、なぜそれを歌ったかも話す。議論というか、対話していました。そうすると「あいつはああいう軸を持っている」とか「こういう軸もある」とか。たくさんのケースに触れていた、みたいなのが印象にすごく残ってますね。自分の人生を形作る軸を考えるヒントみたいなものが、実はそこにいっぱいあったんですね。

(ライター 高橋恵里)

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧