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キャッシュレス化 英米に見る普及のヒント(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2019/1/21

写真はイメージ=123RF
「英国でキャッシュレス化が進んだ背景には、多くの銀行が積極的に発行している非接触型カードがある」

現金志向が強い日本はキャッシュレス決済の比率が2割にとどまる。政府は2025年までに同比率を4割まで高める目標を掲げており、19年10月に予定する消費税率引き上げに対応した経済対策の柱の一つとしてキャッシュレス決済した際のポイント還元を盛り込んだ。

今回はキャッシュレス決済が進む英米の事例を紹介し、普及のための条件と課題を浮き彫りにしたい。

■英国では銀行業界が共通の非接触型カード

英国における決済のキャッシュレス化はここ1~2年で急速に進んだ印象を受ける。特にロンドンでは「現金を普段持ち歩かなくなった」と語る人がとても増えた。街中のATMを利用する人が大幅に減ったため、同国では最近月300台ペースでATMが撤去されている。

英国におけるキャッシュレス化推進の主因の一つは、多くの銀行が積極的に発行している非接触型カードの劇的な普及にあるだろう。同カードのデビット機能を用いて消費者が店舗で「ピッ」とやれば、30ポンド以下なら暗証番号やサインなしで支払い完了となる。スマートフォン(スマホ)に同カードの機能を入れることも可能だ。

ロンドンではこのカード(およびスマホ)で地下鉄も乗れるようになった。しかもこれを利用すれば、1日または1週間の支払い運賃にキャップ(上限)が設定される。定額で何回も乗車できるので、これによるお得感も同カードの人気を高めた。この支払いは銀行口座に連動しているので、日本の交通系カードのように銀行口座からチャージする必要はない。

ロンドンで使われている銀行の非接触式デビットカードの機能を持つスマホのアプリ(一部画像を処理しています)

英国の事例は、銀行業界が共通の非接触型カードをつくり、それを交通系カードと融合させれば、都市部ではキャッシュレスのスタンダード(標準)を瞬時に握れることを示唆している。日本でも普及に向けた参考になろう。なお同国では中国本土で主流のQRコード式決済はほとんど見かけない。個人的感想だが、利用者にとっては非接触型の方が短時間で決済が終わるので便利である(QRコード式はスマホのアプリを立ち上げる必要がある。キャッシュレス先進国の北欧でもQRコードは少数派。香港もカード式が圧倒的だ)。

■ロンドンで唯一の例外が人気B級中華料理店

18年10月のロンドン出張時に、滞在中どこまでキャッシュレスでいけるか意識的に試してみることにした。一般的な商店やレストランでクレジットカードの使用が拒まれることはまずない。伝統的な黒色のタクシー、ブラック・キャブでさえ2年ほど前から全ての車両でクレジットカードや非接触型カードの支払いを受け付けている(ロンドン市交通当局の要請を受けて、カード会社がキャブに課す手数料を10%から3%に引き下げたことがそれを後押しした)。

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