このように新築住宅の取得を検討している人にとっては、住宅ローン控除の延長は実にありがたい制度といえます。また、中古住宅でも売り主が不動産業者の物件であれば適用はされるので、売り主の属性をよく確認するとよいでしょう。
住宅資金贈与の非課税枠も拡大
今年と来年が新築住宅購入のチャンスとなるのは、住宅ローン控除の改正だけではありません。実は、すでにある住宅取得等資金贈与の非課税制度も新築住宅については優遇されているのです。特に19年4月から20年3月までの非課税枠は次の表の通りかなり大きくなっており、「新築を取得するならこの期間に」と言わんばかりの制度になっています。
こちらについては、消費税10%で取得すると最大で3000万円の贈与が非課税となります。この非課税制度は、夫婦が共有名義で住宅を取得するのであれば、夫婦双方の親から3000万円ずつ計6000万円の贈与を非課税で受けることができます。さらに期間が延長される住宅ローン控除も併用できるので、新築住宅を取得する予定があるならば、ぜひ検討しておきたい制度といえます。
期間が延長される住宅ローン控除と住宅取得等資金贈与の非課税枠の最大額を併用したい場合、19年4月から20年3月までの間に売買契約を締結し、住まいの引き渡しと居住開始は19年10月1日から20年12月31日までとなります。今年と来年は新築住宅の取得を予定している人にとっては好機といえます。
売り主が個人の中古住宅、恩恵は少なく
売り主が一般の個人の中古住宅を取得する場合は消費税がかかりませんので、住宅ローン控除については、11年目から13年目の控除の適用はありません。また、中古住宅の住宅ローン控除は毎年末の借入残高2000万円が上限となるため、控除額は新築住宅に比べて少なくなります。
また、住宅取得等資金贈与の非課税枠も住宅ローン控除とともに併用可能ですが、「住宅取得等資金の非課税額一覧表」にあるように、新築に比べるとかなり小さくなります。
筆者は、これらの税制が消費増税に伴う需要減を回避せんがための制度であることは理解できます。しかし、中古住宅を購入して自分なりにリノベーションするなどカスタマイズしたいと考えている方が、こうした税制によって中古住宅の取得を断念せざるを得ないとすれば、少々残念だと思っています。
また、優遇税制によって必要以上に新築が供給されるとすれば、将来、想定以上に空き家が増え、私たちの生活に様々な影響を及ぼす恐れがあるかもしれません。できれば新築住宅取得に偏って優遇するのではなく、既存住宅の断熱改修工事などにも同様の優遇税制があったほうが、住宅市場全体にとっては無駄なくよりよい資産が蓄積されていく意味で、効率的なのではないかと考えています。
