音声からネットへ、転機はiモード 携帯電話の平成史携帯・スマホ30年史(上)

「着うた」で3G時代の到来を感じさせた「A5303H」

iモードなどの普及に伴い、携帯電話の通信方式も音声中心の第2世代(2G)から、より高速なデータ通信が利用できる第3世代(3G)へと変化していった。そして3Gの登場とともに、携帯電話上で利用できるサービスもよりリッチなものへと進化していったのである。

そのことを象徴したコンテンツの1つが「着うた」であろう。それまで携帯電話で鳴らせる音楽といえば、譜面となるデータを携帯電話が読み取り、音を再生する「着メロ」が主流だった。だが着うたは、録音した楽曲を携帯電話でそのまま鳴らせることから、多くの人に驚きを与えたのである。

その着うたに初めて対応した携帯電話の1つが、KDDI(au)が02年に発売した日立製作所製の3G対応端末「A5303H」である。この端末は当時としては高速だった下り最大144kbpsという通信速度を生かし、携帯電話としては大容量だった着うたのデータをダウンロードして再生できるという、3G時代の到来を感じさせる非常に先進的なものであったのだ。

3Gによる高速データ通信に対応し、「着うた」のダウンロードが可能だった「A5303H」。3Gの頃にはほとんどの端末が、折り畳みスタイルを採用するようになった
本体を開いたところ。自分撮り用にカメラが回転する機構を備えるなど、ハード面でさまざまな工夫が取り入れられているのもこの時代の特徴だ

ちなみに着うたは当初30秒程度であったが、その後携帯電話の通信速度が高速になったことを受け、楽曲1曲を丸ごと配信する「着うたフル」へと進化。スマホが普及するまでの約10年間、日本の音楽配信市場を支えるなど、音楽業界にも大きな影響を与える存在となっていたのだ。

ウェブサイト見放題を実現したPHS「AH-K3001V」

18年に新規受付を停止したPHS。サービス開始後の普及速度にインフラ整備が追いつかず、「つながりにくい」などのマイナスイメージで不振となったPHSだが、実は技術やサービスなどさまざまな面で、後の携帯電話業界に大きな影響を与えた。

その1つがデータ通信の定額制サービスである。かつてはデータ通信が従量制だった上にその料金も非常に高く、インターネットサービスを使い過ぎて1万円単位の通信料を払っている人も少なくなかった。だがPHSは、携帯電話より電波の出力が弱く遠くに飛びにくいことを逆手に取り、狭いエリアに多数の基地局を設置することで、多くの人が同時に通信しても安定して通信できる体制を整え、データ通信の定額制をいち早く実現したのだ。

そうしたデータ定額のメリットをフルに生かしたのが、DDIポケット(後のウィルコム、現在はソフトバンクのワイモバイルブランド)が04年に発売した京セラ製のPHS「AH-K3001V」である。折り畳みタイプのスタンダードな端末ながらデータ定額に対応し、さらにWebブラウザに「Opera」を搭載。携帯電話向けだけでなく、パソコン向けのWebサイトも外出先から閲覧し放題という特徴を備えていたのだ。

「京ぽん」の愛称で親しまれた「AH-K3001V」。データ定額サービスに対応した「Air H" Phone」の1つだ
本体を開くと、パソコンなどでも知られるウェブブラウザ「Opera」のロゴが。低速ながら料金を気にせずウェブサイトが利用できたことは大きな魅力でもあった

この端末の通信速度は32kbpsと決して速いとはいえないのだが、当時は通信料を気にすることなく、外出先でもインターネットを利用できること自体が非常に画期的だったのだ。それゆえAH-K3001Vは一時品薄になるほどの人気となり、ファンから「京ぽん」という愛称が付けられるなど、PHSとしては異例のヒットを記録。データ定額時代の幕開けを象徴するモデルとなったのである。

佐野正弘
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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