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音作りにこだわり 最新カセットテープを聴いてみた

「年の差30」最新AV機器探訪

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NIKKEI STYLE

若い音楽好きの間で、音楽メディアとして再評価されているカセットテープ(記事「人気再燃カセットテープ ノイズや面倒くささも新しい」参照)。ただ昔を知る世代には「懐かしい」、その頃に生まれていない若者には「新しい」メディアと、カセットに対する印象は異なる。そこで、カセット全盛期の作品、そして若いアーティストによる新作カセットを、オーディオ評論家の自宅スタジオで試聴してみることに。平成生まれのライターはカセットの持つ力量に、そして昭和生まれのオーディオ評論家は若いアーティストによるカセットテープの新作のクオリティーに驚く結果となった。

◇  ◇  ◇

再評価の兆しがみられるカセットテープ。かつて使っていた人には懐かしく、触れたことがない若い世代には逆に新しさが感じられ、数年前から徐々に注目を集めている。

そのアナログな雰囲気から、若い世代にはカセットテープはデジタル音源よりも音質は劣るというイメージを抱いている人も多い。パソコンやスマートフォンで高音質なデジタル音源を手軽に聴けるようになった今、その対極としてよく使われる「温かみのある音」という表現を、「音の悪さやノイズを含めての味」という意味で認識している人もいるのではないだろうか。平成生まれの筆者も、そう思ってカセットを楽しんでいた。

しかしカセットテープ全盛期を知るオーディオ・ビジュアル評論家の小原由夫さんは「本来カセットテープにはデジタル以上の音のポテンシャルがある」と話す。そこで今回は平成生まれのライターが小原さんの自宅スタジオにうかがい、カセットテープを聴き比べた。

カセットテープは音が悪い?

小沼(27歳のライター) 今回はカセットテープの聴き比べのため、小原さんのスタジオにお邪魔しています。

小原(54歳のオーディオ・ビジュアル評論家) 小沼さんをお呼びしたのは、前回、東芝を取材した時に「カセットテープはチープな音がいい」というような発言があって、ちょっと引っかかったからなんですよ(記事「若い世代も親近感 最新ラジカセを聞いてみた」参照)。

小沼 カセットに音質が良いものだというイメージはありませんが……。やっぱり、CDやハイレゾ音質には劣るんじゃないかと思ってしまいます。

小原 そんなことはないですよ。それを体感してもらうために、まずはこちらで僕の持っているカセットを聴いてみましょう。ドナルド・フェイゲンの「ナイトフライ」という、1982年の作品です。録音技術の高さや音質の良さから、現在もレコーディングやサウンドエンジニアのシステムチェックに利用されている作品です。

小沼 僕もCDでは聴いたことがありますが、カセットははじめてです。これをこのスタジオで聴くわけですね。

小原 使用するのはTEACの「AD-850」。カセットの音をUSBメモリーに取り込むこともできるCDプレーヤー&カセットデッキです。もちろんCDの音をカセットに録音することも可能ですよ。これをスピーカーにつないで聴いてみましょう。

小沼 このスタジオにお邪魔するのは久しぶりですが(記事「人気の『1万円』レコードプレーヤー 音質向上に挑戦」参照)、やっぱり、すごいスピーカーですね。高さが1メートルくらいあって、スピーカーユニットの大きさもアナログレコードくらいある。これで再生する音は迫力があるだろうなあ。ちなみに、下世話ですが、お値段は……?

小原 手に入れたのは2006年ですが、税別で700万円くらいだったかと。仕事道具ですからね。

小沼 700万円! 一体どんな音になるのか……。

小原 では、再生してみます。

小沼 お願いします。……うわー、すごい! 出だしの音から聞きほれてしまいます。音に広がりがあって、目を閉じた時に浮かんでくる情景の解像度が上がるというか……。音楽の表現力ってこういうことを言うんだな、と感じました。

小原 ふふふ、これがカセットテープの本当の音ですよ。

アナログながら情報量は膨大

小沼 こうして聴いてみると、カセットはCDよりも音に厚みがあって、体全体で聴いているような迫力を感じました。

小原 ハイレゾ音源など、デジタルの高音質音源を聴いた時の印象が「音が澄んでいる」「きれい」だとしたら、カセットテープなどのアナログ音源はまず「迫力がある」と感じるでしょう。これは、カセットテープのレンジがデジタルに比べると狭く、中音域にエネルギーが集中しているからです。使用できる周波数帯域が限られているからこそ、音にダイナミズムが生まれるんですね。カセットテープはアナログメディアですが、録音できる情報量は膨大。そのことがわかってもらえたと思います。

小沼 ノイズや音のチープさがカセットテープの味だと思っていましたが、そんなことはまったくなかったんですね。あらためて、自分が持っているカセットを聞き返してみたくなりました。

小原 今日はいろいろとカセットを持ってきてくれたんですよね。次はその作品を聴いてみましょうか。

カセットで冒険する若いアーティスト

小沼 今日持ってきたのは、くるりの「だいじなこと/わすれないように」、ceroの「陸(おか)のうえの晩餐」、mei eharaのミックステープ「ALL THE ROMANTICISTS ARE GONE ...」の3本です。

小原 最近は若いアーティストでもカセットテープをリリースする人が増えていると聞いていましたが、本当なんですね。くるりは知っていますが、他の2人は初めて聞く名前です。

小沼 mei eharaは神宮前にあるショップ「トーキョー カルチャート by ビームス」で行われたグループ展の作品、ceroは2018年にリリースしたアルバムのタワーレコード限定特典です。リリースの仕方も多彩ですよね。

小原 どれもデザインも凝っていて格好良いですね。ただカセットテープはデジタル音源とはまた別のミックスが必要なんです。そこまで意識しているアーティストがどれだけいるかな? というのは気になるところです。

小沼 まずはくるり「だいじなこと/わすれないように」です。これはパッケージも凝っていますよね。カセットを持っているようなデザインで、カセット部分だけが外れるようになっています。

小原 おっ、しかもドルビーが入っているじゃないですか(ドルビーについては記事「若い世代も親近感 最新ラジカセを聞いてみた」参照)。これは期待できますね。どれどれ……おお、これは音が良いですね! ダイナミックレンジも広いですし、正攻法で作ったハイファイな音だと感じます。

小沼 僕はサブスクリプションでこの曲を聴くことが多いのですが、それよりもダイナミックで、体で聴いているような感覚になりますね。

小原 すごくちゃんと作っていると思いますよ。今風な音でもあると思います。

小沼 カセットテープでも最新の音作りができるんですね。面白いなあ。では、次はceroの「陸(おか)のうえの晩餐」です。

小原 これはあえてノスタルジックな音づくりを目指しているのかな。ハイファイではないけど、逆にノスタルジーを喚起する音に感じます。

小沼 特典のアイテムなので、どこまでこだわることができているかはわかりませんが。ただ、ナローレンジの音が曲の雰囲気に合っているのもたしかですね。最後はmei eharaのミックステープ「ALL THE ROMANTICISTS ARE GONE ...」です。

小原 聴き慣れた曲も織り交ぜたミックステープですが、つくりが面白いな。音を左右に振っていたり(パンニング)して、実験的です。カセットが昔のメディアだということを、あえて音づくりにも反映させているように感じました。

小沼 なるほど。こうして聴いてみると、それぞれこだわりを持ってカセットテープに向き合っていそうですね。

小原 カセットは新しいメディアなのか、アンティークなのか、アーティストによっても考え方が分かれるところだと思うのですが、それぞれの哲学を持って冒険していると感じました。いやあ、感心しましたよ。

700万円のスピーカーで聴くでんぱ組.incは?

小沼 最後に、ちょっと毛色の違うカセットを聴いてみてもいいですか? でんぱ組.incの「でんぱーりーナイト」というカセットなんですが……。

小原 でんぱ組.incって、小沼さんの好きなアイドルですよね。ももクロ(ももいろクローバーZ)がアナログレコードを出しているのは知っていましたが、アイドルもカセットを出しているのか。

小沼 最近は出さなくなってしまったんですけど、一時期はカセットでもリリースしていたんですよ。ぜひ小原さん宅のオーディオで聴きたいと思って……。

小原 いいですよ、聴いてみましょう。

小沼 お願いします! ……うわー、やっぱり全然違いますね! CDで聴くよりも音に厚みがあるし、それぞれの楽器や、メンバーのボーカルがしっかり聴き分けられます!

小原 小沼さん、今までで一番テンションが上がってますね……(笑)。でも、でんぱ組.incはサウンドが華やかで、いろいろな音が入っているので、カセットテープ向きの音かもしれません。ただ、おそらくこれはCDと同じミックスをそのまま収録している気がするなあ。そこが残念なところです。

小沼 そうなんですか……。でも、僕としては音数の多い「でんぱーりーナイト」をより深く知れたようで、大満足です! 

専門家が薦める1万2000円のスピーカー

小原 カセットを自宅でも楽しみたいなら、TEACの「AD-850」はおすすめですよ。

小沼 でも、その場合はアンプやスピーカーもそろえる必要がありますよね。できればもっと手軽に楽しめるといいのですが……。

小原 それなら、BOSEの「Companion2 Series III multimedia speaker system」というスピーカーを使ってみては? オーディオで大切なのは「入り口と出口」です。入り口はカセットテープなので選択肢は限られますが、出口のスピーカーはこだわることができるはずですから。

小沼 これはヘッドホン端子に接続して使うんですね。ポータブルカセットプレーヤーを持っているのですが、本体内蔵のスピーカーで鳴らすとどうしても音が良くなくて。出口となるスピーカーを変えることで、音質を向上できるんですね。……今調べてみたら、BOSEの「Companion2 Series III multimedia speaker system」は1万2420円(家電量販店のネットショップで調査)。アンプから何からそろえるよりはずっと安価だけど、少し迷う値段だなあ……。

小原 この価格でも迷うのか(笑)。でも、これならレコードやパソコンから再生する音楽も良い音で聴けますよ?

小沼 そうか、ヘッドホン端子で接続できれば何にでも使えるってことですもんね。パソコンで見る映画もいい音になるわけですか。そう考えるとほしくなってきました。

小原由夫
 1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳のスタジオに200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。2019年注目のアーティストはSuchmos。「紅白歌合戦で見て、このボーカリストはいいなと。アナログレコードも買ってしまいました」
小沼理
 1992年生まれのライター・編集者。最近はApple Musicで友人たちと自分が作ったプレイリストを共有するのがブーム。2019年注目のアーティストは中村佳穂。「昨年末に出たアルバム『AINOU』は歌詞やリズムが自由自在で新しさを感じました」

連載 「年の差30」最新AV機器探訪バックナンバー
「人気の『1万円』レコードプレーヤー 音質向上に挑戦」
レコード生産復活のソニー アナデジ融合の新メディア
完全無線イヤホン 音質か操作性か、世代で違うベスト

(写真 田口沙織、渡辺慎一郎)

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