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92%も削る超精米、香り立つ花酵母 茨城・来福酒造ぶらり日本酒蔵めぐり(8)

8%まで削った「来福 純米大吟醸 超精米」(左)

ベストマッチはすぐに見つかるものなのだろうか。「花酵母ごとにデータはありますが、初めて使うときにはあまり先入観をもたずに造っています」と佐藤さん。消費者の反応と売れ行きが答え合わせとなるが、さっぱりだめ、という失敗はほとんどないという。「逆に醸造過程で失敗だと思っても、案外仕上がりがよくて評価されることもあります」

25種類もの原料米を使いこなす蔵はそうそうない。まず、ひたち錦など茨城県産米。山田錦や五百万石、美山錦の生産量上位3品種。加えて、漫画「夏子の酒」で知られる亀の尾、山田錦と雄町の交配種の流れをくむ愛山、北海道で開発され2000年に品種登録された吟風など。倉庫に積まれた袋には、個性的な特徴をたたえた品種の名が書き込まれている。

佐藤さんは洗米の段階からコメの品種、精米歩合、目標とする吸水率など異なる要素を細かく管理しながら工程を進める。酒造りは毎年9月には始まり、翌年6月まで続くという。「季節商品や企画商品もあるので、どうしても種類が多くなる傾向にありますね」と笑うが、製造計画から工程管理まで、苦労がしのばれる。

来福酒造の商品には「来福 純米吟醸 愛山」「来福 純吟生原酒 八反」などとコメの品種を明示したものが多い。藤村さんは「山田錦で造った酒、といえば飲む前からだいたいイメージがわくと思います。でも『八反』だとどうでしょうか。先入観なく味わってもらえる利点もあります」と話す。好奇心をかき立てる効果がある。

藤村さんは「伝統の味とか来福の味とか、こだわってとどまるつもりはありません。老若男女、いろいろな好みの人がみな満足してほしい。そういう多様な商品を提供したい」と強調する。「そのためのチャレンジを日々しています。新しいコメ、新しい酵母が出てくれば、もちろん試します」。甑(こしき、コメを蒸す器)に蒸気を送る機械や、醪(もろみ)を絞る遠心分離機など、設備投資にも積極的だ。

東日本大震災では一部の棟に被害が出た

日本酒だけではなく、焼酎やワインも製造している。焼酎はコメ、ムギ、イモ、クリの4種類を時期をずらしつつ仕込む。ワインは茨城県産のブドウをつくばワイナリー(茨城県つくば市)や契約農家から調達し醸造している。「3年目の仕込みが終わり、これが売れればワイン醸造の本免許が下り、来年からは本格的に造れそうです」と佐藤さんは目を輝かせる。これもチャレンジのひとつの形なのだろう。

目印だった煙突は東日本大震災の際に壊れ、危険防止のため上部を解体したそうだ。仕込み水は敷地内の井戸からくみ上げている。蔵見学は完全予約制。最寄り駅はJR水戸線下館駅。車なら常磐自動車道谷和原インターチェンジから。順路はわかりやすいが国道294号を30キロほど北上する。

(アリシス 長田正)

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