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92%も削る超精米、香り立つ花酵母 茨城・来福酒造ぶらり日本酒蔵めぐり(8)

季節商品などを含め商品数は60にのぼる 焼酎やワインも生産している

高精白にすればするほど味はすっきりするが、削りすぎるとコメが割れてしまう問題が生じる。どんな種類の原料米を使いどのくらいの精米歩合に落ち着かせるか、酒蔵がそれぞれ蓄積したノウハウをもとに決めている。極端に硬いコメとの出合いは、そのバランスの新しい可能性に門を開いた。

「はじめから30%以下にはしたいと考えました。いざやってみるとかなり削っても割れたりせず、高精白に向いているのがわかりました」。本当はさらに削っても大丈夫だという。「ただ、これ以上精米歩合を下げても味は変わりません。縁起のいい『8』で止めることにしました」。刺し身など薄味で淡泊な料理に合う、独特のフルーティーな香りと優雅で繊細な後味を実現した。

来福酒造では原料米を自家精米している。筆者が蔵を訪ねた際、ちょうどひたち錦を精米中だった。制御盤の数字を見ると「49.7」とある。半分くらい削れたところのようだった。「900キログラムを8%まで削るのに10時間以上かかります」。同社に入って10年になるという、杜氏の佐藤明さんが精米途中のコメ粒を見せてくれた。「均等に丸くきれいに削れています」

醸造する日本酒のほとんどに、花から抽出された花酵母を使っているのも来福酒造の特徴だ。「超精米」も例外ではなく、毎年の新酒鑑評会に出品する酒にも花酵母を使う。

花酵母とは、元東京農業大学の中田久保教授が自然界から日本酒の醸造に有効な酵母として分離抽出したもので、機能は既存の日本酒酵母と変わりない。2003年には「花酵母研究会」が発足。今、日本酒酵母として分離された花酵母は14種類になった。全国の約30の酒蔵が研究会から花酵母を譲り受け、それを使って日本酒の商品化を手がけている。来福酒造では自家培養もしている。

花酵母といっても花の香りがするわけではない。「花酵母、というと女性からは受けがいい。でも年配の男性からは、花の香りの酒が飲めるか、といわれることもある。誤解なんですけどね。だから『花酵母ですよ』とあまり強調しないようにしている」。藤村さんは、花のイメージよりも酒としての香味を、飲んで感じてほしいと願っている。

この器(甑=こしき)の中で下からスチームを当ててコメを蒸す

酵母は酒の香りを決める重要な役割を果たす。代表的な吟醸香にはカプロン酸エチルに由来するリンゴっぽい香りと、酢酸イソアミルからくるバナナ風の香りがあるが、花酵母もそうした分類ができるようだ。佐藤さんによると「ナデシコやアベリア、アジサイ、タンポポなどはリンゴっぽい、フルーティーで華やかな香りが立ちます」という。対して「ベゴニアやサクラ、ヒマワリは酢酸イソアミル系。中間的なのがツルバラです」。

すべてが華やかな香りではなく、力強さやキレを感じさせる種類もある。「花酵母研究会の発足直後、会員の蔵がこぞって、ナデシコを使った、すごく華やかな香りが立つ酒を世に送りました。そのイメージに引きずられて花酵母イコール華やかと思われているところもありますが、うちの酒はむしろイソアミル系の穏やかな香味のものが多いです」

定番商品、季節商品、企画商品をすべて合わせると、年間60種類の日本酒を醸造しているという。佐藤さんによると「コメは25種類、酵母は花酵母以外も含めてだいたい20種類ぐらいを使っています」。計算上は500ほどの組み合わせ数になるが「コメと酵母のベストマッチを探る中で組み合わせが絞られてきます」。

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