東大より学費10倍の米MITへ 学生、奨学金集め苦闘

末岡さんは「共働きの家庭は裕福と見なされ、MITの制度は利用できなかった」という。最初に申し込んだのは公益財団の「グルー・バンクロフト基金」だった。かつての駐日米国大使2人の名前から取った基金だ。しかし、まだ足りない。

3つの奨学金を併用して乗り切る

末岡陽太朗さんは3つの奨学金を利用する

16年の渡米後に、やはりデイヴィーさんを紹介された。17年にソフトバンクの「孫正義育英財団」が発足すると第1期生に選ばれた。「世界の高い志と異能を持つ若者を支援する」とうたう育英財団にとって、趣旨通りの人材であったためだろう。「3つの奨学金を受けることで生活費も含めた留学費用を捻出できた」(末岡さん)

末岡さんにデイヴィーさんを紹介したのが副島智大さん(24)。自身も13年に東大とMITの両方に合格し、MITを選択した先駆け組の一人だ。ただ、「アベノミクス」の影響で円安・ドル高が進み、「年間約4万6000ドルのMITの授業料が、円換算で約2割上がった」。

日本では立教池袋高に通い、父親は大手商社に勤務。最初の1年間は両親に加え祖父母の支援も受けて乗り切ったが、2年目からは見通しが立たなくなった。米国に日本人を対象にした奨学金制度はなかった。

最後に頼ったのが、デイヴィーさんだった。年間約4万ドルを支援してもらった。

副島さんは17年にMITを卒業し、ドイツ研究機関での研修を経て18年9月から米カリフォルニア大バークレー校で理論固体物理学を研究する。「博士課程まで進んで、ようやくお金の悩みから少し解放された」とほっとした表情を見せる。学業優秀として「バークレー・フェローシップ」に選ばれ、2年間の奨学金を大学側から受けられるからだ。MITからの3通の推薦状が決め手となった。

結局、3人ともミヨコ・デイヴィーさんの支援を受けているが、篤志家の善意に頼るだけでは、これから増えていくと思われる日本人学生を支えるには限界がある。

日本の大学から米国の大学院へ進む場合の奨学金制度は、ある程度整備されてきているという。現役留学生から聞こえてくるのは、学部進学に対する支援制度の不足だ。

副島さんは「金銭的な理由で海外進学が難しいのではないかという不安を、今でも多くの後輩が抱えている」と話し、「できるだけ早い段階で奨学金の獲得の可否がわかるようなシステム」を提唱する。さらに「審査過程の透明度が高く、海外からでも応募しやすいような奨学金ができるならばベスト」と付け加える。

「留学前に一番のストレスになったのが学費」と話す前田さんも、副島さんの提案に賛成する。合格しても学費が払えるかどうかわからない状況では、受験勉強にも身が入らない。実力があっても受けることを見送る学生も出てくるだろう。

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