――海外と比べて日本の気候変動適応策への取り組み状況をどう見ますか。

「そんなには進んでいない。国が法律をつくり、自治体はこれからという状況だ。海外では海抜の低いオランダのロッテルダムが進んでいる。水が高い位置にあるというのがDNAに組み込まれ、それをうまく制御して住民の暮らしを良くしていこうとしている。気候変動に積極的に向き合っている印象だ」(向井氏)

「日本はトップではない。災害が過去の知見を超えてしまう状況を目前にして何をするか、まだスタートラインに立ったところだ。今は自治体が何を必要としているかを踏まえて、私どもが情報を提供し、一緒に何が必要かを考えるフェーズにある」(行木氏)

――市町村レベルで影響を予測するのは難しい面もあります。

「降水量の予測などを市町村単位の狭い地域に落とし込むと不確実性が増す。そこをどう解釈して施策に反映するか、政策担当者が理解する必要がある。セミナーや研修で一緒に勉強してもらうなど人材育成が必要だ。予測の技術はどんどん進歩する。最新の情報を提供するが、どう使うか、施策にどう反映するかも含めて伝えたい」(向井氏)

――先進的な地域のモデルを似たような気候の地域に当てはめることもできそうです。

「1つの地域の適応策を隣の県などに横展開していきたい。各地にセンターができればその情報を我々が他の自治体に横展開しやすい」(向井氏)

「東北など全国7ブロックに広域協議会を設けて、国、自治体、企業などが集まる場も設ける」(行木氏)

――都市計画など各分野の施策に適応策を反映するには首長のリーダーシップが鍵を握ります。

「自治体関係者に聞くと『トップを説得できない。それをやってくれないか』という声が結構あった。首長向けのセミナーを開くのも一案だと思う」(向井氏)

「縮小社会の中で少子高齢化も進み、住まい方を考え直さなければならない中、防潮堤を高くするには莫大なお金がかかる。何に優先順位を置いてお金を使うか、この先の気候変動のリスクを考えながら都市計画などを見直すタイミングに来ているのではないか」(行木氏)

――ビジネスに活用する動きも出ています。

「A-PLATでは『適応ビジネス』の事例を紹介しており、営農支援などで活用している例がある。保険会社の関心も高い」(行木氏)

「企業にとってチャンスは大きい」(向井氏)。

――最近の異常気象で一般の人たちも関心を持つようになっていますか。

「気候変動への関心は高まっている。イベントで聞くと、夏の暑さや雨の降り方におかしいと感じる人はとても多い」(向井氏)

「実感として天気がおかしいなと思っていても、それが気候変動の影響があって、この先どのくらいまで変化がありそうなのか、どういう努力をすれば抑えられるのか、といった点に気がついている方はまだ少ない。『適応』という言葉も知らない人の方がまだ圧倒的に多い。天気がおかしいなという実感と、この先どうなるのかという想像力をつなげることが必要だ」(行木氏)

(編集委員 斉藤徹弥)

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