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住宅は購入前に災害リスク目配り 地盤保証など確認 耐震性、基準クリアで地震保険料割引

2019/1/20

西日本豪雨では多くの住宅が土砂災害に見舞われた(広島市安佐北区)

筧家のダイニングテーブルでは幸子と恵が話し込んでいます。恵の会社の先輩が今年、家を購入する予定で、幸子にアドバイスしてほしいようです。そこへ良男がやってきて、「熊本地方でまた地震があったそうだよ」と心配そうな表情で話しかけてきました。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

筧良男 昨年末のニュースでも西日本豪雨のことを振り返っていたけれど、2018年の土砂災害の発生件数は約3400件で、集計を開始した1982年以来、最多だったそうだ。これからの時代は災害にいかに備えるかが課題になると締めくくっていたな。

筧恵 今年は10月に消費増税が予定されているから、私の会社の先輩のように、この機会に住宅を購入しようと考える人は多いと思うの。災害に強い住宅を選ぶようにしたいよね。

筧幸子 ファイナンシャルプランナーの清水香さんは「住宅を購入する際、従来は頭金の額や住宅ローンの借り入れ条件など資金計画を第一に考えていた。これからはそれと同等に災害への備えを意識したい」と話しているわ。

 具体的にはどんな備えをすればいいの?

幸子 まず、どこに住みたいかを決めたら、その地域の自治体が作成した「ハザードマップ」を確認しておきたいわ。

良男 その地域に大雨が降ったとき、土砂災害など浸水被害がどのくらいの範囲に及び、その規模がどの程度になるかを予測して、地図上に示したものだよね。昨年の西日本豪雨で大きな被害を受けた倉敷市真備町もハザードマップで被害が予想されていたらしいよ。地図には避難経路や避難場所も記されているので、住宅の購入を考えている人だけではなく、だれもが一度は見ておくといいよね。

幸子 ハザードマップと同様、実際に家やマンションが建つ地盤がどういう状態かも大事よ。特に新たに開発された地区は土地を造成していることがあるの。元の地盤に土砂を盛り上げた「盛り土」は、地盤改良工事が不十分な場合には軟弱な地盤になるおそれがあるし、水田や湿地などを埋め立てて盛り土にしていることもあるの。

良男 地盤がしっかりしていないと、建物が沈んで傾く危険がありそうだな。

幸子 戸建ての場合、住宅保証機構(東京・港)やGIR(同・江東)などが手掛ける「地盤保証」を知っておくといいわ。これらの保証機関に登録した民間企業が地盤を調査し、地盤に問題があったらその企業が補強工事をするの。問題を見逃していたり、補強工事をしたのにもかかわらず建物が傾きながら沈下する「不同沈下」などによって被害が発生したりすると、保証の対象になるわ。例えば、引き渡しから10年間、5000万円を限度に回復工事や工事期間中の仮住まいの費用などを負担してくれるの。ただ、保証が付いた物件はその分、価格が高くなるわ。それに、地震など自然災害による地盤の変化で生じた被害は必ずしも保証されない点も留意しておきたいわね。

 地震といえば、戸建てでもマンションでも、耐震性の高い住まいを選びたいわね。

幸子 手掛かりになるのが国の住宅性能表示制度よ。耐震性を示す「構造の安定」「火災時の安全」など10分野について、国に登録した第三者機関が住まいの性能を評価するの。基準をクリアすると、住宅金融支援機構では住宅ローン「フラット35」の適用金利を5~10年間、引き下げてくれる場合があるわ。戸建てだけでなく、マンションなど共同住宅も対象よ。

 家を買おうとすると、いろいろ目配りしないといけないのね。最初の話に戻るけど、「ハザードマップをみると洪水の被害が及びそうだけど、やはり便利だから住みたい」といった場合はどうしたらいいの?

幸子 万一のときに備えて保険に加入しておくことね。火災保険は火災による被害だけでなく、集中豪雨や土砂崩れ、ひょうや豪雪などによる被害も補償してくれるわ。現在契約できる火災保険のほとんどは、基本的にこうした風水害も対象にしているけれど、十数年前の古い保険では水災補償を外した商品もあったの。すでに火災保険に加入しているなら、風水害補償が付いているかどうかを確認しておくといいわ。

良男 地震が原因の建物の損壊や火災は、火災保険では補償されず、地震保険に入らないといけないんだよね。

幸子 その通り。地震保険は1月から保険料が全国平均で3.8%上がったけれど、住宅性能表示制度で耐震性が基準をクリアしていれば、最大50%の保険料割引が受けられるわ。

 被災して家が壊れたのに、住宅ローンを払い続けないといけないという人もいるそうね。そうした状況に備える保険はないのかな。

幸子 一部の金融機関が災害補償付き住宅ローンを取り扱っているわ。保険料を住宅ローン金利に上乗せするか、最初に手数料として支払ってしまうタイプがあるの。1回の被災に対して月々のローン返済額の最長2年分、複数回被災した場合は通算で最長3年分を保険金として受け取れる商品よ。ただ、被災して家が全壊したからといって、ローンの残債すべてが免除になるわけではないの。ローン返済に支障を来す場合は、借入先の金融機関に相談すれば、一時的に返済を猶予してくれることが多いわ。

■高層階でも保険に加入を
ファイナンシャルプランナー 清水香さん
自然災害の増加で、住宅を購入する際にはより慎重さが求められるようになっています。ハザードマップなどを確認することはもちろんですが、「高層マンションの上層階なので水害は大丈夫だ」と思っていても、停電するとエレベーターは停止し、風呂もトイレも使えないとなると、そこでは暮らせず、避難することになります。6カ月分の生活費を流動資金として用意しておき、住宅ローンもなるべく残高を減らしておくようにしたいものです。
昨年9月の台風21号では、堺市のマンションの上層階の一室に近所の屋根の一部が飛び込む被害があったそうです。被害者が相手に弁償を求めても、資力がないと応じてもらえず、どうにもなりません。被害者が火災保険に加入していれば「風害」として保険金が受け取れます。
(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞夕刊2019年1月16日付]

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