2019/1/17

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もちろん、相談のケースで民間連合約款が用いられているとは限りませんので、違約金・遅延損害金の計算は締結された請負契約書の規定に従うことになりますし、契約書に規定がなければ前述のとおり、注文者の側で実損の金額を立証することになります。

得策ではない完成間近の業者の変更

さて、あなたとしてはこの建築業者との請負契約を解除したい意向があるようです。本件では、建築業者が契約で定められた工期を過ぎてしまっていますから、注文主は建築業者の債務不履行(履行遅滞)を理由とする契約解除が法的には可能です。

解除の効果は遡及するので、本来、建築業者は工事を中止してすでに出来上がった部分まで取り壊しをしなければならないのですが、そのようなことは経済的にも不合理ですから、すでに完成した部分の解除はできず、未完成部分だけ一部解除を認めるのが判例の立場です。

ということは、すでに工事が完了した部分の出来高を査定して(前述のとおり、この出来高査定というのがかなり厄介です)、もしその部分が未払いになっていれば、建築業者に対して違約金を差し引いた差額を支払わなければなりません。また、この建築業者との解除ができたとしても、次の業者は工事の途中から携わることになるわけですから、前の建築業者との引き継ぎがうまくいかないと、完成はますます遅れることになります。しかも、途中からかかわる業者の費用はどうしても割高になります。

完成間近になってから請負契約を解除して他の業者へ替えることは、よほどのことがない限り、注文主にとって得策ではないのです。納得がいかないかもしれませんが、実務上は建築業者が違約金分として残代金の値引きをするなどして工期の延長を合意しているのが実際です。

建築業者選びは価格だけで決めず、信頼できる業者かどうかの慎重な見極めが必要ということになります。

志賀剛一
 志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。