しかし、通常は注文主と建築業者の間で遅延損害金に関する合意がなされているはずです。民法は「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない」と規定し、違約金の定めは賠償額の予定として扱われます。

「債務の不履行」には工期の遅延も含まれるので、違約金の取り決めがあればそれに従うことになります。では、取り決めはどこに書いてあるでしょうか。

遅延損害金の計算式、民間団体が作成も

建築工事に関する請負契約書は「民間連合協定工事請負契約約款」(以下、民間連合約款)を添付し、契約内容とすることがしばしば行われています。この約款は日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建築業組合の4団体が集まってつくっていた「四会連合協定工事請負約款」に由来し、現在、さらに新たな団体も加わって民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会の名で約款が法改正や社会情勢に適合するよう継続的に改訂されています。

民間連合約款はビル建設など比較的大きな建築工事に用いられ、小規模な住宅建築では使われない場合もありますが、建築業者の自前の契約書でも民間連合約款に準じた条項が盛り込まれていることが多くあります。

余談ですが、まだ「民間連合」という言い方があまり定着しておらず、いまだに「四会連合」とか「旧四会連合」と呼ぶ人が多いように感じます。これ以外に日弁連が「住宅建築工事請負契約約款」を発表していますが、正直なところほとんど利用されていません。

民間連合約款では「受注者の責めに帰すべき事由により、契約期間内に契約の目的物を引き渡すことができないときは、契約書に別段の定めのない限り、発注者は、受注者に対し、遅滞日数に応じて、請負代金に対し年10%の割合で計算した違約金を請求することができる」と定めています。これに基づけば、請負代金×10%×遅滞日数/365日が遅延損害金という計算です。

例えば、請負代金が2400万円で遅滞日数が30日の場合、遅延損害金は20万円弱になります。なお、民間連合約款は以前「遅滞日数1日につき、請負代金額から工事の出来高部分と検査済の工事材料・建築設備の機器に対する請負代金相当額を控除した額の10000分の4に相当する金額」を違約金としていましたが、工事の出来高部分などの算定が難しく、金額が不明確であるため、現状のように請負代金を基準とした計算に改訂されました。

次のページ
得策ではない完成間近の業者の変更