各地のスキー場がインバウンド(訪日外国人)向けに施設やサービスを整えている。長野県白馬村には村内初となる外資系ブランドホテル「コートヤード・バイ・マリオット白馬」が開業。安比高原スキー場(岩手県八幡平市)は新雪を滑れるエリアを12倍の60ヘクタールに広げた。国内客がスキーから離れるなか、訪日客を取り込んだスキーリゾートへと変身を図る。
森トラストと米マリオット・インターナショナルは18年末、森トラストの「ラフォーレ倶楽部」を増築してマリオット白馬を開業した。増築した27室には全て温泉の露天風呂を設けた。温泉付きのツインルームは、2月の1室料金が素泊まりで4万8千~6万円(税別)前後。白馬村観光局の福島洋次郎事務局長は「マリオットグループのポイント会員なども白馬を訪れるのではないか」と期待する。
ロッジ「バターミルク」を家族経営する藤田リゾートマネージング(白馬村)は、40年近く営業していたロッジとレストランを閉じて、外国人が好むコンドミニアムを1月に開業する。ロッジは1人当たり1泊1万円以下だったが、2万円以上と高級にする。
スキー場の活用法も変わる。安比高原スキー場は今季、圧雪をせずふわふわの新雪の上を滑るバックカントリーエリアを5ヘクタールから60ヘクタールへ大幅に拡大した。山形県米沢市の天元台高原も木々の間を滑れるようにして、新雪を求める傾向が強いオーストラリアなどの訪日客をつかむ。
リフトがない場所でも楽しんでもらおうと、秋田県はたざわ湖スノーリゾート(仙北市)で1月から訪日客を狙ったモニターツアーを展開。スノーモービルで移動し、ドローン(小型無人機)を飛ばして誰もいない斜面でパウダースノーを楽しむ様子を撮影してPRする。プライベートゲレンデとして、廃止した旧田沢湖高原アッスルスキー場の活用も検討する。
バブル崩壊後、スキー客は長く減ってきた。鉄道統計年報によると、1990年代前半のピークと比べ4割ほどにまで減少。ただこの数年はスキーに慣れた欧米客に加え、初心者が多いアジア系も目立っている。安比高原は買い物エリアを改装し、家電製品や美容品、腕時計などをそろえた。訪日客は昨季より4万人多い10万人を見込む。
一足早く外国人でにぎわう北海道のニセコでもアジアの富裕層が増えている。今冬はスカイニセコ(105室)とザ・メイプルズニセコ(73室)が開業し開発が加速。シンガポールの不動産開発大手、SCグローバル・デベロップメンツは2021年の完成をめざし、190室のコンドミニアム「雪(せつ)ニセコ」を建設する。投資額は150億円規模とみられ、最高額のペントハウスは10億円程度で売り出す。
[日経MJ2019年1月14日付]