物干しざおにぶら下げられた写真は、虫干しを終えたジャンパーをふと眺めた瞬間、ひらめいた。「自分が入ったら面白いかな」。表情を工夫しながら、拳に隠したリモコンシャッターを切った。

プライド捨て、何度も教わる

「カメラのことはよく分からないし、上手でもない。次の作品へのアイデアも多くはない。だったら、面白いと思ってもらえる方にいくしかないでしょ?」と西本さん。「人が見て悲しい思いをする写真だけは撮らないでいこうと思ったんですよね」。自分を撮る恥ずかしさを超え「自分も楽しみながら見る人を楽しませる」スタイルと才能が、場数を踏む中で開花した。

編集や加工も自ら手掛ける

74歳の時、遊美塾でパソコン講座が始まると、これも受講。「フォトショップ」などのソフトで画像処理もやってのける。「しょっちゅう使い方が分からなくなります。その度に手取り足取り、写真仲間に教えてもらいます。プライドを捨てれば、何度でも人に教わることができますよ。どうしても駄目だったら、そこでやめればいいんだから」

柔軟さ、チャレンジ精神は今も健在。だからこそ年の差を意識せず、仲間と気の置けない付き合いを楽しむことができるのだろう。「写真塾の後、真っすぐ家に帰ったことがないんですよ。息子や娘世代の皆さんとご飯を食べたりお酒を飲んだりして、年齢を忘れて楽しみます」

西本さんは「やりたいことがあり過ぎて、老後の時間が足りない」という。創作への探究心は尽きず、和民さんに手伝ってもらい、自宅の一室に撮影用のミニスタジオも作ってしまった。

90歳となった今は、腰を痛めて、以前のように気軽にバイクに乗るようなことはできないが、写真教室やイベントのある日は、仲間や友人に会いたい一心で出掛けていく。「おしゃべりをしたり、色々なものを見たりするうちに、また新しい考えが浮かんでくるんですよね」(日経おとなのOFF2月号から再構成 文・飯田敏子 写真・西本喜美子、松隈直樹)

[日本経済新聞夕刊2019年1月12日付]