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住人が長期不在の空き家は防災や景観など様々な問題を発生させやすい イラスト・よしおか じゅんいち

住人が長期不在の空き家は防災や景観など様々な問題を発生させやすい イラスト・よしおか じゅんいち

「空き家問題」が注目され、関連書籍がつぎつぎと出版された。国の住宅・土地統計調査によると、空き家は増え続け、2013年に820万戸、全住宅の13.5%に達した。内訳では「賃貸用」(52.4%)が最も多く、次いで「その他」(38.8%)の割合が高い。セカンドハウスなどの「二次的住宅」(5.0%)や「売却用」(3.8%)は少ない。

空き家は必要である。「賃貸用」空き家があって初めて転居が可能になるからだ。しかし、住人が長期不在だったり、利用予定が不明確だったりする「その他」の空き家は、維持・管理や防犯・防災、景観・環境の問題を発生させやすい。腐朽・破損のある住宅の比率は、全空き家の26.0%に比べ、「その他」は33.1%とより高い。

空き家問題はどう説明されるのか。野澤千絵『老いる家 崩れる街』(講談社現代新書・16年)は、人口が減りはじめたにもかかわらず、超高層マンションの大量建設、郊外の住宅建設、賃貸アパートの建設ブームなどが合わさり「住宅過剰社会」を形成し、空き家を増大させる実態を描いた。住宅過剰のおもな要因は都市計画、住宅政策などのあり方に求められる。都市計画の相次ぐ規制緩和、開発規制がほとんどない地域の存在、人口を奪い合う建設促進の政策、立地に無頓着な住宅政策などから空き家が増加した。

空き家だけではなく、所有者不明の土地が増えた。吉原祥子『人口減少時代の土地問題』(中公新書・17年)によれば、所有者がわからない土地は全国の私有地の約2割を占めるまでに増え、農地・山林を中心として都市地域にも存在する。その結果、固定資産税の徴収困難、老朽空き家の危険化、公共事業の停滞などの状況が拡大した。土地所有の不明化の原因は、おもに相続未登記である。人口が減り、土地の価値が下がれば、不動産登記は任意であるうえに、とくに農地・山林では登記コストが資産価値を上回る場合が多いことから、面倒な手続きを避ける相続人が増える。さらに相続放棄の増加によって、土地所有の実態はほとんどカオスになる。

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