署名求めたら「私はおとめ座」 名詞signは通じない
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(52)sign
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、ビジネス文書でも必要とされる「サイン」についての表現を見ていきましょう。
◇ ◇ ◇
勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
契約書や申込書などに印鑑を押す文化のある日本とは異なり、海外では名前を自署するのが主流です。外国のオフィスで働くヒロシは、ある書類に同僚ナンシーの署名をもらう必要がありました。そこで、書類にサインをしてくれるように頼んだつもりなのですが……。なぜかナンシーからは予想外の答えが返ってきました。どうやら彼女は別なことをたずねられたと思ったようです。いったいヒロシの言い方のどこがまずかったのでしょうか?
それはこんな会話でした。
Nancy: I'm a Virgo.
Hiroshi: A Virgo? What's a Virgo?
Nancy: I was born in September, so it's my sign.
Hiroshi: Oh...
日本語に訳すとこうなります。
ナンシー:私はおとめ座よ。
ヒロシ:おとめ座? なんのこと?
ナンシー:私は9月生まれなの。だから、おとめ座が私の星座よ。
ヒロシ:ああ……。
日本語では署名のことを「サイン」とも言いますよね。ですからヒロシは、「あなたのsignをもらえますか?」と聞いたのでした。ところが英語のsignは、もっぱら動詞として「署名をする」という行為を意味することはあっても、名詞としては「署名」の意味を持っていないのです。