グルメクラブ powered by 大人のレストランガイド

食の達人コラム

フレンチトースト ホットサンドメーカー使えばうまい 土屋敦の男の料理道(4)

2019/1/16

焼き上がり、砂糖を振ってしばらく焼くといい色合いになる

さて、ホットサンドメーカーにバターをのせ、その上にパンを置く。さらにバターをのせてふたをし、弱火から弱い中火程度で加熱する。やがてパンが膨らんでふたを押し上げてくるが、無理に抑えたりせず、そのままにしておく。 各面を4分ぐらいずつ、じっくり焼き、うっすらと焼き色がついたら、ふたをあけて表面に砂糖をふる。少し火を強め、さらに両面を3分ほど焼き、きつね色になったら火からおろす。

カリカリでアツアツでふわとろな、新食感のフレンチトーストのできあがりだ。時間と手間はかかるが、ぜひ一度試してみてほしい。特にアウトドアでは最高。ふわとろ感にやみつきになることと思う。 ほかにもホットサンドメーカーならではのフレンチトーストの楽しみ方がある。それは薄めのフレンチトーストにバナナやチョコを挟んだホットサンドだ。6~8枚切りに切ったパンを卵液につけ、ホットサンドーメーカーに、バター→パン→バナナやチョコ→パン→バターの順にのせて閉じ、普通にホットサンドを作る要領で焼く(閉じる途中で卵液が染み出てコンロは汚れるが)。これも大変美味。また砂糖を入れず、塩味のフレンチトーストでハムやチーズ、ホワイトソースを挟んだものもの大変美味、ぜひ試してみてほしい。

ところで、フランスではパン・ペルデュ(pain perdu)という。perduは、英語のloseと同じような意味の動詞であるperdreの過去分詞なので、パン・ペルデュは、失われたパンと意味になるだろう。これは、パン自体が消えてしまったという意味ではなく、パンが、古くなってそのまま食べられなくなってしまった状態のことを指すようだ。

小麦粉、塩、水、酵母で作られる本場のバゲットは、食べかけをそのまま放っておくと、翌日にはすでに固くなってしまう。気候によるが、数日もすれば棒のようにカッチカチになり、とても歯が立たないほど。これを牛乳と卵に浸して食べられるように再生したのが、パン・ペルデュ。その呼び名に、「失われたパン」(を再生したもの)というような意味が込められているようだ。

つまりは、無駄をなくすための庶民の節約レシピのようなもので、フランスだけでなく、牛乳や卵を一般的に食べるヨーロッパ各国に存在している。私が長く旅したスペイン語圏ではpan perdido、パン・ペルデュとまったく同じ「失われたパン」と呼ばれていたし、ドイツではArme Ritterだった。これは直訳すると貧しい騎士という意味で、その呼び名からはやはり節約レシピのニュアンスがありそうだ。

それが今や、行列のできるカフェのモーニングやブランチの華やかなレシピとなっている。このようなフレンチトーストの扱いは日本だけでなく、例えばパリのパティスリー「ラデュレ」のサロン・ド・テでもパン・ペルデュは人気のメニュー。ここでは当然、節約レシピの面影はなく、使うパンも卵とバターをふんだんに使ったブリオッシュである。

そう、フランス王妃マリー・アントワネットが「パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃない」と言ったといわれている(実際には彼女の言葉ではなく、ルソーの「告白」のなかの一節だ)あのブリオッシュ。それだけで、おしゃれで高級感が漂うものに感じてしまう。ホットサンドメーカーで作ったフレンチトーストを食べれば、その気分も盛り上がること間違いなしだ。

土屋 敦

ライター 1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌などで書評の執筆を開始。著書に『男のパスタ道』『男のチャーハン道』(いずれも日本経済新聞出版社)など

グルメクラブ 新着記事

ALL CHANNEL