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フレンチトースト ホットサンドメーカー使えばうまい

土屋敦の男の料理道(4)

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NIKKEI STYLE

カフェなどで人気のフレンチトースト。卵液につけた食パンをバターなどをしいて焼くだけの単純な料理だが、おいしく作るのはそうそう簡単ではない。それがホットサンドメーカーを使うと信じられないくらいおいしく作れると言えば、驚かれるだろうか。今回は、その秘けつをお伝えする。

日本で長らくおいしいフレンチトーストを出すことで有名だったのは1962年に開館し、2015年に閉鎖、取り壊しとなった日本の老舗ホテル「ホテルオークラ東京」本館の欧風料理「オーキッドルーム」だ。たっぷりの卵液を含んだ分厚い耳なしのサンドイッチ・トーストをオーブンで焼き上げた、ぷるぷるとなめらかな一品は、多くの人に愛されてきた。

実はこのホテルオークラのフレンチトーストについては、公式ウェブサイトにレシピが公開されている。2012年ごろ、ホテルオークラのフレンチトーストのプチ・ブームとでもいうべきものが来たときに、私もこのレシピのことを知ったのだが、パンを卵液につける時間が丸1日(片面12時間×2で計24時間)と書いてあったことに衝撃を受けた。それまで私は、パンを卵液につけるのは、せいぜい30分程度だったからだ。

実際に試してみると、いまにも崩れんばかりに卵液を吸い切ったフレンチトーストは、なめらかで軟らかく、とろとろとしてびっくりするほど美味だった。以来気合を入れてフレンチトーストを作る際は、必ず、長時間卵液につけるようになった。

ただし、難点もある。まず、卵液を吸ったパンが軟らかくなりすぎて、フライパンで焼くと途中で崩れてしまうことがある。また中までなかなか火が通らない。これを回避するためにホテルオークラではオーブンを使っているのだろうが、フレンチトーストだけのためにいちいちオーブンを予熱するのも大変だし、また時間もかかってしまう。

これを解消するために行き着いたのが、ホットサンドメーカーである。バターを入れたホットサンドメーカーに卵液が染みたパンを入れ、さらに上からバターをのせて閉じる。こうしておいて両面を焼けば、崩れることも、中まで火が通らないことない。

そして、ここからが大事なのだが、フライパンで焼くよりも、オーブンで焼くより、ホットサンドメーカーで焼いたほうが圧倒的においしいのだ。まず表面はパリパリに仕上がる。まるで軟らかいフレンチトースト全体が、パリパリの「皮」で包まれているよう。パリッとした「皮」を破ると蒸気がふわっと上がり、その中身は、ふわふわ&とろとろで、なおかつアツアツ。これはホットサンドメーカー以外では出せない素晴らしい食べ心地なのである。

簡単に作り方を示そう。まず卵液だが、これは好みだろう。ホテルオークラのレシピは卵1個に牛乳60ミリリットル程度と、かなり卵たっぷりの比率。私はふだんは牛乳1カップに卵2~3個程度を使い、来客があるなど、本当においしいものを提供したい場合は、牛乳に生クリームを加え(比率は2:1か1:1)、さらにバニラビーンズで香りをつけ、卵は全卵ではなく卵黄のみを使う。これで本物のバニラの香りが漂う、コクのあるフレンチトーストができあがる。

大切なのは材料をよく混ぜること。泡立たないようにしながらホイッパーでよく混ぜ、最後にザルでこす。これにパンをつける浸ようにする。なお、乳製品が苦手なら豆乳でもおいしくできる。また牛乳の代わりにオレンジジュースで作るレシピもある。

そしてつけ時間。3時間もつけると、見た目には十分に卵液が染みているように見えるが、実際に焼いて作ってみると、丸1日つけたものとは食感がまったく違う。特に中心部がふわふわになっていない。8時間ほどつけると、かなり丸1日つけたものに近づいてくる。とはいえ、場所によってはまだふんわりとしていない。8時間つけたものを半分に切ってみたが、まだ卵液が染みていない部分が残っていた。もっと卵液を吸える余地があるのである。

私は、本気でおいしいフレンチトーストを作るときは、だいたい前日の晩につけ、朝に裏返し、翌日の午後3~4時に作るようにしている。時間的には丸1日には足りないが、ふんわり感は遜色ない。

そして使うホットサンドメーカーだが、パンがまるまる入る大きさがあり、ある程度厚みがあって中心に仕切りがない、シングルタイプがいい。電気式ではなく、直接コンロにかけるタイプのものが、洗い物などを含めて、使い勝手がいいだろう。有名なところだと、バウルーのホットサンドメーカー・シングルやCHUMSホットサンドウィッチクッカーなどがフレンチトースト向きと言えるだろう。なお、IHクッキングヒーターを利用している人はそれに対応するものを使ってほしい。

そして自分のホットサンドメーカーに合わせてパンの厚みを調節する。私は3.5~4センチの厚さに切っている。ただし、厚くするとふたを閉じるときに卵液があふれ出てくる。また焼いている間にも卵液がはみ出してきてコンロが汚れる。私はアウトドアでたき火や作ることが多く、その際は気にする必要はないが、家庭用コンロの場合は、コンロが汚れる。私はあふれ出すそばから拭いたり、あふれそうになってきたらコンロから外して流しに少し卵液を流すなどして対処しているが、コンロを汚したくないなら、パンをもっと薄くするほかないだろう。

また、厚手のパンを使うときは、ただ軽く閉じるだけで、しっかりふたをしてストッパーをはめることはしない。焼いているうちにパンがどんどん膨らんでくるからだ。

さて、ホットサンドメーカーにバターをのせ、その上にパンを置く。さらにバターをのせてふたをし、弱火から弱い中火程度で加熱する。やがてパンが膨らんでふたを押し上げてくるが、無理に抑えたりせず、そのままにしておく。 各面を4分ぐらいずつ、じっくり焼き、うっすらと焼き色がついたら、ふたをあけて表面に砂糖をふる。少し火を強め、さらに両面を3分ほど焼き、きつね色になったら火からおろす。

カリカリでアツアツでふわとろな、新食感のフレンチトーストのできあがりだ。時間と手間はかかるが、ぜひ一度試してみてほしい。特にアウトドアでは最高。ふわとろ感にやみつきになることと思う。 ほかにもホットサンドメーカーならではのフレンチトーストの楽しみ方がある。それは薄めのフレンチトーストにバナナやチョコを挟んだホットサンドだ。6~8枚切りに切ったパンを卵液につけ、ホットサンドーメーカーに、バター→パン→バナナやチョコ→パン→バターの順にのせて閉じ、普通にホットサンドを作る要領で焼く(閉じる途中で卵液が染み出てコンロは汚れるが)。これも大変美味。また砂糖を入れず、塩味のフレンチトーストでハムやチーズ、ホワイトソースを挟んだものもの大変美味、ぜひ試してみてほしい。

ところで、フランスではパン・ペルデュ(pain perdu)という。perduは、英語のloseと同じような意味の動詞であるperdreの過去分詞なので、パン・ペルデュは、失われたパンと意味になるだろう。これは、パン自体が消えてしまったという意味ではなく、パンが、古くなってそのまま食べられなくなってしまった状態のことを指すようだ。

小麦粉、塩、水、酵母で作られる本場のバゲットは、食べかけをそのまま放っておくと、翌日にはすでに固くなってしまう。気候によるが、数日もすれば棒のようにカッチカチになり、とても歯が立たないほど。これを牛乳と卵に浸して食べられるように再生したのが、パン・ペルデュ。その呼び名に、「失われたパン」(を再生したもの)というような意味が込められているようだ。

つまりは、無駄をなくすための庶民の節約レシピのようなもので、フランスだけでなく、牛乳や卵を一般的に食べるヨーロッパ各国に存在している。私が長く旅したスペイン語圏ではpan perdido、パン・ペルデュとまったく同じ「失われたパン」と呼ばれていたし、ドイツではArme Ritterだった。これは直訳すると貧しい騎士という意味で、その呼び名からはやはり節約レシピのニュアンスがありそうだ。

それが今や、行列のできるカフェのモーニングやブランチの華やかなレシピとなっている。このようなフレンチトーストの扱いは日本だけでなく、例えばパリのパティスリー「ラデュレ」のサロン・ド・テでもパン・ペルデュは人気のメニュー。ここでは当然、節約レシピの面影はなく、使うパンも卵とバターをふんだんに使ったブリオッシュである。

そう、フランス王妃マリー・アントワネットが「パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃない」と言ったといわれている(実際には彼女の言葉ではなく、ルソーの「告白」のなかの一節だ)あのブリオッシュ。それだけで、おしゃれで高級感が漂うものに感じてしまう。ホットサンドメーカーで作ったフレンチトーストを食べれば、その気分も盛り上がること間違いなしだ。

土屋 敦

ライター 1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌などで書評の執筆を開始。著書に『男のパスタ道』『男のチャーハン道』(いずれも日本経済新聞出版社)など

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