光と影の競演 冬こそ必見の暗夜に浮かぶ城10選

NIKKEIプラス1

月や光に照らされた城郭は昼とは違う趣を見せる。
空気の澄んだ暗夜に浮かぶ城は「凜(りん)」という言葉が似合う。
冬にこそ訪れたい夜の城を、専門家11人が選んだ。

刻む淡い陰影 想像力を刺激

戦国ブームや明治維新への注目、外国人観光客の増加を追い風に城人気が続いている。時代を重ねた城本来の趣が、淡く陰影を刻んで浮かび上がる冬の「夜城」には大人の味わいがある。闇夜に鎮座する天守は過去を語り、栄華を極めた木造建築としての建物の魅力が、時を超えて冬の光によみがえる。夜景評論家の丸々もとおさんは「夜城は想像力を活性化してくれる存在だ」という。

ベスト10には、江戸時代以前に建設された姿が現在もほぼ残る現存12天守の弘前城と高知城のほか、その中でも5つしかない国宝の松本城、彦根城、姫路城など歴史的にも価値が高い城が並んだ。大きな地震の被害を受け、復旧途上の熊本城も選ばれた。

これまでの「日本百名城」に加えて、2017年に「続日本百名城」が選定され、各地で観光資源として城を照らす演出が増えている。冬の張り詰めた空気の中で渋く光る夜城は旅情を誘う。明と暗、光と影の競演に、これまで見えなかったものが見えてくるかもしれない。

1位 松本城
(長野県松本市) 710ポイント
漆黒の国宝、堀の水面に逆さ天守

現存する日本最古の五重天守で国宝。江戸時代以前の建設時の姿が残る「現存12天守」の一角だ。400年以上風雪に耐えた漆黒の天守は別名「烏(からす)城」と呼ばれ「白鷺(しらさぎ)城」の名を持つ国宝の姫路城と対比をなす。公園内の地面が堀の水面とほぼ同じ高さにあり、堀に「逆さ天守」が映り込む。黒い城は白い光に照らされると「お堀と織り成す空間夜景が美しく輝く」(小塩稲之さん)。とりわけ冬の夜は厳かさが際立ち、「澄んだ空気の中で凜とたたずむ質実剛健な天守群は別格。時間を忘れる」(萩原さちこさん)。

「冬は雪化粧した北アルプスの山々が黒いお城のバックに映える」(山田阿友美さん)。天守群は大小5棟で構成され、「その均整の取れた姿は絵画を思わせ、雪が積もる夜は情緒ある光景が現れる」(丸田あつしさん)。松本の住民らが修理を重ね、今も子どもたちが城内の床磨きをする。松本城管理事務所の西沢可奈子さんは「冬場は比較的すいているので、地域の人が守ってきた城をゆっくり見てほしい」と話す。

(1)JR松本駅から徒歩約15分(2)https://www.matsumoto-castle.jp/

2位 五稜郭
(北海道函館市) 560ポイント
星形に光る2000個の電飾 タワーから観覧

西洋の城塞都市を模した星形の城郭。午後5時以降は堀のまわりに約2000個の電飾がきらめき、雪の反射で城郭が柔らかい光に包まれる。隣接する五稜郭タワーから「城郭とイルミネーションの合作で、幻想的な光景」(中村勇太さん)を見下ろせる。明治維新最後の動乱の舞台となった歴史的な場でもあり「寒気が城郭の消長をしのばせる」(宮嶋康彦さん)。雪の中に浮かび上がる開拓使のシンボル、五稜星は「ここでしか見ることのできない唯一無二の景観」(丸田さん)。城郭の奥に瞬く街並みの光も美しい。

タワーの展望室では点灯時、観光客が歓声を上げる。五稜郭タワーの大場泰郎営業部長によると、「函館山から望む夜景と合わせ、函館の光の名所として外国人にも定番になりつつある」。イルミネーションは2月末まで。日没時間の影響で1月中旬以降、展望台からは青っぽく見える。タワー営業は午後7時まで。

(1)函館市電、五稜郭公園前駅から徒歩約15分(2)http://www.goryokaku-tower.co.jp/

3位 大阪城
(大阪市) 450ポイント
背景にビル群、イルミネーションも

大都市の公園の中心に立つ高さ55メートルの城。1950年代からライトアップが始まり「城郭ライトアップの歴史でナンバーワンのスポット」(いなもとかおりさん)だ。日没後、天守の窓から明かりがもれ、段階的に城全体の明るさが増していく。同時に背後のビルにも明かりがともる。「徐々に点灯、消灯するストーリー性がある唯一の存在」(丸々もとおさん)。3人の専門家が1位に選んだ。「ライトアップされた城と背景のビル群との対比は、大都市にある城ならでは」(横倉和子さん)

「広大な敷地を背景に、いつでも誰もが様々な角度からその夜景を見られる環境を整えている」(小塩さん)。西の丸庭園で3月3日まで幕末や明治維新をイメージしたイルミネーション「大阪城イルミナージュ」(有料)を開催中で「お城に興味のない人でも関心を持つきっかけになるかもしれない」(有金淳さん)。

(1)JR大阪城公園駅からすぐ(2)https://www.osakacastle.net/

4位 弘前城
(青森県弘前市) 410ポイント
灯籠と城郭がコラボ 清浄な雪景色

現存12天守で最も北にある城。小ぶりだが、「夕暮れからライティングされるまでの城の姿が絶妙に変化する」(小塩さん)。城のある弘前公園は広く、「雪を踏みしめながら歩く城内の景色は、清浄さが際立つ」(宮嶋さん)。

毎年2月開催の弘前城雪灯籠まつりは「幻想的な雰囲気に包まれる」(中村さん)。観光客も多く「灯籠や雪像に明かりがともり、城郭とのコラボがフォトジェニック」(丸田さん)だ。弘前市弘前城整備活用推進室長の古川勝さんは「武者絵をはめ込んだ灯籠など地元の魅力を味わってほしい」。

(1)JR弘前駅からバスで約15分(2)https://www.hirosakipark.jp/

5位 姫路城
(兵庫県姫路市) 400ポイント
白亜の天守、暗闇の中に気品と迫力

城郭建築としての美しさは名高く、1993年に法隆寺とともに日本で初めて世界文化遺産に登録。「連立式大天守と櫓(やぐら)群が暖色系の280個の照明でライトアップされる冬の姿は圧巻」(横倉さん)だ。2015年に大修理が完了し、一層白くなった。「誰もが魅了される白亜の天守は照明で輝きを増し、夜は姫路城のためにあると思うほど」(いなもとさん)。白鷺城の別名は夜こそふさわしい。

その白さゆえ、照明が消えた後も気品と迫力がある。「松本城とは逆に白さが浮かび上がるのが秀逸」(小和田哲男さん)。特別な色で照らされる日も。

(1)JR姫路駅から徒歩約20分(2)http://www.city.himeji.lg.jp/guide/castle/

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