スマートフォン(スマホ)市場で国内メーカーの苦戦が続く中にあって、唯一好調なのがシャープだ。MM総研によるスマホ出荷台数調査では2位のシェアを獲得している。そのシャープが2018年末から2019年始にかけ、立て続けに新しいスマホ3機種を投入。強みを持つディスプレー技術を中心に、コンパクトなサイズや軽量を実現しているのが特徴だ。
自社製有機ELを採用した「AQUOS zero」
1機種目は、2018年12月に発売されたハイエンドモデルの「AQUOS zero」だ。
AQUOS zeroの大きな特徴は、シャープ製のスマホとして初めて、ディスプレーに有機ELを採用したこと。シャープといえば液晶ディスプレーで知られているが、自社で有機ELディスプレーを製造できるようになり、採用に踏み切ったのである。
有機ELディスプレーの特徴は、コントラストが高くくっきりした映像が楽しめること。だが液晶とは発光の仕方が異なるため色の表現がやや極端になりがちで、本来の色とのずれが生じやすいという。そこでAQUOS zeroでは色の調整をゼロから見直し、さらに「リッチカラーテクノロジーモバイル」というシャープ独自の技術を用いることで、表示するコンテンツに応じた適切な色を表現できるようになっているという。

もう1つの特徴は軽さだ。最近スマホは大画面化の影響でサイズが大きくなっただけでなく、重量化が急速に進んでおり、200gを超えるものも出てきている。だが重くて大きいスマホを長く片手で持っていれば、当然のことながら手が疲れやすくなる。
そこでAQUOS zeroでは、ボディー素材に従来のアルミ素材より軽量のマグネシウムを用い、背面にも鉄の5倍の強度を持つ繊維を編み込んだ「テクノーラ」という素材を採用。新素材を積極的に取り入れることで、6.2インチのディスプレーを持つスマホとしては非常に軽い146gという重量を実現しているのだ。例えば画面が一回り小さい5.8インチのiPhone XSでも177gと、AQUOS zeroより30g以上も重いのだ。

一方でAQUOS zeroは、カメラに関してはメインカメラに2260万画素のものが1つ、フロントカメラに800万画素のものが1つ。同社のもう1つのハイエンドモデルで、メインカメラを2つ搭載した「AQUOS R2」と比べると、カメラ機能はやや見劣りする。有機ELによる美しい映像を軽量なボディーで長時間楽しめることに加え、高性能のチップセット「Snapdragon 845」を搭載するなど性能が高いことを生かし、動画やゲームなどのコンテンツを楽しむのに適したスマホだ。
より大画面になった「AQUOS sense2」
2つ目の機種は2018年11月に発売された「AQUOS sense2」である。これは前機種「AQUOS sense」の後継機種であり、性能はやや抑えられているものの、その分購入しやすいミドルクラスのモデルとなる。

最大の特徴はやはりディスプレーだ。前機種のAQUOS senseは解像度がフルHD(1920×1080ピクセル)のIGZO液晶を採用し、リーズナブルな価格ながらディスプレーの質が高いことが高く評価されてヒットを記録している。IGZO液晶は画面が明るく、動画表示がなめらかなどの特徴がある。AQUOS sense2はさらにディスプレーを中心に強化されている。
本体サイズは幅71×高さ148×奥行き8.4mmと、AQUOS senseの72×144×8.6mmとほぼ同等のサイズだが、画面を大幅に拡大した。最近のトレンドとなる、18:9と縦長比率のディスプレーを採用し、ベゼル部分を小さくするなどで、AQUOS senseの5.0インチから5.5インチへと23%拡大しているのだ。ディスプレーの素材はAQUOS sense同様IGZO液晶を使っている。
もう1つの強化ポイントはカメラ。イメージセンサーの素子を大きくするなどして暗い場所での撮影に強くなっているのに加え、最近のスマホで採用機種が増えている、AI(人工知能)による被写体の識別機能も搭載し、被写体に応じて最適な画質に自動調整してくれるようになったのだ。

こうした性能に加え、防水やおサイフケータイなどといった日本でのニーズが高い機能はしっかりサポートしており、指紋センサーも搭載する。3万円台という購入しやすい価格であり、多くの人にとって、安心して手に取りやすいスマホに仕上げている。