写真はイメージ=123RF今月のマネーハックのテーマは夫婦で最適な資産配分を考える「ファミリーアロケーション」です。共働き夫婦が増えている我が国においては、2人の稼ぎをそれぞれの口座に置きつつ、夫婦として1つの目標に向かった資産形成が求められます。
■投資について夫婦で話し合うことは意義がある
投資について夫婦間で話し合うことはとても意義があります。それは自ずと夫婦間での資産形成の意識共有や合意につながるからです。
1人で投資をすると「とりあえず増やそう」「増やしたらあぶく銭なので何かパーッと使おう」といった発想になりがちです。その原資は、夫婦が協力して稼いだお金の一部ですから、どちらかが勝手に使ってしまってはいけないお金なのですが、なぜか1人で投資するとそうなってしまいます。
しかし、夫婦で話し合えば「このお金はこれくらいの増やし方を目指し、○○○を実現するための資金の元にする」というような形で具体的な資産形成の手法や資金の使途が見えてきます。目標が見えてくればむやみに投資でリスクを取ることもなくなります。
ファミリーアロケーションの重要性は「資産形成の方針」を明確にすることにあります。そのとき大切なのは投資よりまず先に「貯蓄のペース」や「貯蓄の目標金額や使途」を決めることです。
■投資の前に貯蓄ノルマの共有をまず考える
つまり、ファミリーアロケーションについて段階を踏んで考えるとしたら、夫婦間で「貯蓄の目標(金額や使途)」をイメージし、「毎年の貯蓄のノルマ」をまず設定。その後でようやく「現在の貯蓄額のどれくらいを投資に回すか」「毎月の貯蓄額からいくら投資に回すか」といったことを決め、最後に「投資方針」を具体化することになります。
もちろん、夫婦がお互いの貯蓄額も把握せずに投資をすることは全くお勧めできません。これはリスク管理をしていないことを意味するからです。夫婦の資産形成は貯蓄を確保した上で、一部を投資に回してプラスアルファの利回りを狙うといった手法が望ましいと思います。
まずはそれぞれの貯蓄額を確認し合い、今後の目標を整理していきましょう。1月は「年始の計画」を話し合ういいタイミングですから、数年後あるいは5~10年後くらいまでの夢とそのための資金額をイメージしておきましょう。
「○年後に家を買う」と具体的な目標ができれば、「そのために頭金など○万円くらいはためよう」という計画が立案できます。目標がはっきりしない場合でも、「老後に備えて毎年○万円くらいはためる」という設定はしておきたいところです。
その上で、「夫婦の目標貯蓄率(年収に占める貯蓄額)」を決めます。今までちゃんと貯蓄できていない夫婦であれば、まずは年収の10%以上はためたいところです。すでに10%くらいはためてきた夫婦なら、もう少し頑張って15~20%に目標を設定すると経済的安心が得られるようになります。
■毎月の投資金額を決めてリスクを管理
そして、現在の貯蓄額のうちどれくらいを投資に回すのか、また毎月の貯蓄額のうちどれくらいを投資に回すのかを決めていきましょう。ここまでステップを踏むことができれば、ファミリーアロケーションは成功したも同然です。
例えば、「投資はやっているけど、いくらやっているかもいくらもうかっているかも非公開」というのでは夫婦の歩み寄りは不可能でしょう。しかし、「夫婦合計で今年収が○百万円あって、2人で毎月計○万円を貯金する。そのうち、月1万円分は投資に回す」といったように決めることができれば、今後の資産形成のイメージもつきますし、合意も得やすいでしょう。
投資初心者ほど、無制限に投資金額を決定してしまいがちです。特に高いリスクを取って損失を出している場合、次々資金をつぎ込んで損失を取り戻そうとしますが、これは夫婦の資産形成としては不適切です。
毎月の投資資金が決まっているからこそ、リスク管理ができるわけですし、だからこそ夫婦間での信頼も成り立つわけです。情報が共有されることで、現状がうまくいっているのかいっていないのか相互に把握することも可能となります。
もし、これからゼロベースで投資をするのであれば、初期元本として貯蓄から回すのは数十万円で十分です。むしろ、毎月の積み立てで少額から投資元本を増やしていくアプローチを取るといいでしょう。
■運用スタイルにはアクティブとインデックス
さて、投資金額が明確になったところで、もう一歩だけ意識共有しておきたいテーマがあります。それは投資スタイルです。投資のスタイルには大きく分けて、成績が市場平均と連動するインデックス運用と、平均を上回る成績を目指すアクティブ運用があります。
簡単にいえば、一般的な個別株の売買はアクティブ運用です。この場合、売買頻度は高くなるでしょう。一方、インデックス運用は個人投資家の場合、一般にインデックス型の投資信託を購入することで可能となります。インデックス運用の多くは細かい売買はせず、中長期的に構えることになります。
一見すると、短期売買で個別銘柄を絞り込んだほうがもうかりやすいように思えますが、リスクは高くなります。年に数回転以上売買されるようなアクティブな投資スタイルについては金額ベースで一定の制限を課すほうがいいでしょう。
先ほども指摘しましたが、投資にのめり込んで次々資金をつぎ込むようなスタイルは夫婦の投資としては好ましくありません。
インデックス運用については毎月一定額を投じる積み立て投資が向いています。毎月定期預金を積み立てるのと同時に、少額ずつでもインデックス運用を続けていくといいでしょう(相場が下がっているときほど安く買えるので、将来値上がりしたときに含み益を生み出す源泉になります)。
今週はちょっと内容を盛り込みすぎたかもしれませんが、夫婦で投資を始める前に考えておくべき大事なポイントです。ぜひ話し合いの参考にしてください。
マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「共働き夫婦 お金の教科書」(プレジデント社)など。http://financialwisdom.jp 本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。