戦略的に婚活する看護学生 将来設計はエクセルで試算
結婚相談所代表が見た今どき「婚活」事情
「就活」と同じように計画的に婚活を進め、幸せをつかんだ女性もいます。今回登場するのは、看護師を目指して専門学校に通う28歳の看護学生。「看護師として忙しくなる前に結婚したい」と思い、戦略的に婚活を始めた彼女に、東京・青山の結婚相談所「マリーミー」代表の植草美幸さんは、どんなアドバイスをしたのでしょうか?
婚活をするときには具体的な目標設定を
結婚を考えるとき、目標は明確になっていますか? 今回は、自分のライフプランをしっかりと持ち、「戦略的」に結婚を手に入れた女性のお話です。
相談者は、看護師を目指して専門学校に通う江川千夏さん(仮名)、28歳。一度は就職して社会に出ましたが、将来のことを考えて看護師を目指し、時間的にも精神的にも余裕のある学生のうちに「結婚したい」と考え、結婚相談所に入会した計画性のある女性です。
彼女は高校時代、母親をしっかりと看取った後に、苦労して大学へ進学したという経歴の持ち主でした。
この経験から、彼女は「命の尊さ」と「家族の大切さ」「お金のありがたみ」を実感したのでしょう。「結婚して家庭を持ち、35歳くらいまでに子どもを産みたい」という具体的な目標と、「相手の年収は1000万円。そして自分の家族を大切にしてくれる男性」という条件がハッキリとしていました。
学生時代に母親を亡くした彼女にとって、たった一人の肉親である父親は大切な存在。自分が結婚して家庭を持っても、父親が寂しくならないよう配慮してくれるパートナーを持つことも、大事な要素だったようです。
また、将来的には子どもを育て、なおかつ自分が育ってきた生活水準を維持したいという希望があったため、自分の父親と同じくらいの収入がある男性がいいと考え、年収1000万円を条件としていました。
江川千夏さん(仮名)28歳、看護学生
一度は社会人として働くも、将来のことを考えて看護専門学校へ入学。就職して忙しくなる前に結婚したいと考えて、「マリーミー」に入会。看護学生のうちに婚活をスタート。
戦略的に婚活、結婚後の生活設計はエクセルで試算
ゆっくりと落ち着いた口調で、淡々と話すタイプの千夏さん。彼女は結婚に対しても冷静で、計画を立てて着実に婚活を進めていくタイプの女性でした。
特徴的だったのは、結婚後の生活設計をエクセルでシミュレーションしていたこと。自分が看護師として働き、相手の年収が1000万円だった場合、1年後の収入と支出はいくらになり、預貯金はいくらになるのか。2年後、3年後は……。そして子どもが生まれた場合、家を買った場合は……と、詳細に試算していたのです。
さらに千夏さんは、婚活では自分が「学生」であることがネックになるだろうと考えていました。ですから、なんとお見合いをする男性には、「学費を全納」していることを示す証明書を見せていました。その上で、「結婚したら生活費の負担だけよろしくお願いします」と、事前に伝えるようにしていたのです。
証明書がなければ、男性としては、「結婚後は自分が彼女の学費も負担するのかな……」と、不安に思うことでしょう。千夏さんには、相手の立場に立って物事を考える配慮と、先回りをして不安要素を取り除いておく賢さがあったのです。これは、結婚相談所ならではのエピソードですね。
彼女のように、結婚の条件や優先順位がハッキリとしていて、結婚後の具体的なライフプランを持っている方は、成婚率もグッと高まります。それにプラスして、「相手が自分とお見合いをするときには、どういう点を気にするだろうか?」と客観的な視点を持つことも、婚活では重要です。
しかし、彼女のように「戦略」と「計画」、そして「目標」を持って進んでいても、すべてが順調にいくとは限らないのが婚活です。千夏さんは自分でも意識しないうちに、婚活の「迷路」に迷い込んでしまったのです。
植草さんがアドバイス、婚活の「迷路」を抜けるには?
千夏さんは、男性の年齢範囲を50歳にまで広げ、何人もの方とお見合いをしていました。一回り以上年上の方とも、5人以上はお見合いをしたと思います。しかし、やはり年が離れ過ぎていると、共通の話題を見つけたり、価値観を擦り合わせたりすることも一苦労。
もちろん、年の差婚で幸せになっているカップルもいますが、彼女の希望――将来的には子どもを育て、自分の父親ともいい関係を築いてくれる年収1000万円の男性――を満たすためには、やはり年齢差は一回り(12歳)までが私はおすすめです。
千夏さんの場合、最初から条件や優先順位はハッキリしていたものの、彼女が選んでお見合いをする男性たちは、なぜか「彼女の結婚観に沿う男性ではない」という課題がありました。
そこで私は、彼女にこう伝えました。
「千夏さん、あなたはもともと、どういう結婚生活を送りたいと思っていた? これまでお見合いをしてきた男性は、あなたが一生懸命考えた将来設計を、一緒にかなえていける相手? 年が一回り以上も離れていたり、年収が1000万円以下だったりすると、その夢を現実にするのは難しいと思わない? それに、あなたが大切にしていることは、年齢や年収だけじゃないはず。もう一つあったよね?」
私は、千夏さんのもともとあった条件を、整理するように言いました。そして、何日かたって会った時には、千夏さんは自分の答えを見つけていました。
「家庭的で、家族を大事にしてくれる人と結婚したいです」
どんなに賢くても、どんなに冷静でも、道に迷ってしまうことはあります。これからの人生を左右する「結婚」という決断であればなおさら、当初の希望を見失ってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、彼女たちの軌道を修正し、もとの道に戻してあげることが婚活アドバイザーの役目。本来の目的を再確認して、自分の現在地をしっかりと把握すれば、今度は道に迷わず進んでいけるのです。
千夏さんも、自分が求めていたことを再確認したことで、将来を一緒に歩んでいけるパートナーと出会いました。
出会いから1カ月、40歳の包容力ある男性とスピード婚
彼女が結婚したのは、包容力のある40歳の男性。二人は1回目のデートでお互いの結婚観を確認し合い、2回目のデートで、将来を共に歩んでいける人だと確信。
千夏さんが学生のうちは、彼女の生活費を負担することも喜んで引き受けてくれ、父親とも良好な関係を築いてくれる思いやりのある男性と成婚を果たしました。
「婚活」は、いうなれば「就活」のようなもの。「計画的」に婚活を進めて、より自分にぴったりのパートナーを求めることは、幸せになる方法の一つです。もしも「結婚したい」と望むなら、千夏さんのように結婚相談所を通して婚活することも、賢い選択だと思います。
なぜなら結婚相談所に登録している男性は、「結婚したい」と思っている人がほとんどだから。付き合っている彼氏の結婚に対する意志が分からず、「私、いつか結婚できるのかな?」と不安になったりするようなことは少なく、千夏さんのように出会いから1カ月ほどでスピード婚する人もいます。
千夏さんは、学校を卒業して看護師として働いた後、勤め先の病院の産休・育休制度を利用して、子どもを産み育てたいと語ってくれました。
将来設計を共有した上で結婚した相手は、同じ目的と目標を持つ、かけがえのないパートナー。お互いに新しく家族となったパートナーの存在は、仕事や人生の糧になるはずです。
・条件や優先順位、結婚後のライフプランを明確にすると、成婚率はアップ!
・婚活をする中で道に迷ったら、闇雲に突き進まず、本来の目的を思い出す。
・「戦略的」「計画的」に婚活を進めることは、幸せになる方法の一つ。
(ライター 青野梢)
[nikkei WOMAN Online 2018年11月1日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。