シンプルな服から役をつかんだ、主演映画『チワワちゃん』
2019年1月18日公開の主演映画は「チワワちゃん」。90年代を代表する漫画家・岡崎京子さんの短編を、26歳の新鋭・二宮健監督が現代を舞台に移して映画化した作品だ。門脇さんは、バラバラ死体で見つかった遊び友達「チワワちゃん」の在りし日の記憶をたどる主人公・ミキを演じている。

「ミキはチワワの話をみんなに聞いて回るシーンはたくさんあるのですが、自分のことを語るシーンがほとんどないんです。キャラクターが強い役が多い中で、一番、個性が浮かび上がらない役。どう作っていったらいいか分からなくて、脚本を読んでも探りきれず、難しい役でした。
助けになったのは、衣装です。ミキはクラブで遊んでいる華やかな人なので、衣装合わせでは最初、柄モノのワンピースとか、派手な服ばかりを合わせてたんです。でもどれもしっくり来なくて、これも違う、あれも違う、となかなか決まらなくて。髪形も、かつらをかぶってみようとか、とにかく迷走していって、結局、衣装合わせに2日かけました。
そうして最後にたどり着いたのが、白いTシャツにパーカーを羽織るという、シンプルなスタイルだったんです。こういうふうに着飾らなくてもクラブに行けるということは、ミキは自分に自信があるというか、自分の中には核があると自分で思っているということ。だからチワワちゃんが現れたときに、自分の場所を取られるかもしれないと焦りを感じたり、悔しく思ったりという感情が生まれる。その衣装から役の本質みたいなものがようやく見えた気がして、衣装の大切さを改めて実感しました」

完成した映画からあふれるのは、刹那の青春を生きる若者たちの強烈な光と影。特に夜の町で騒いで、踊って、恋をして、エネルギーを発散させるきらびやかなシーンが印象的だ。
「原作は90年代の話ですけど、人間が抱える感情は、今も変わらない。この映画を見て、若者の虚無感や孤独は普遍的なものなんだなと改めて思いました。あと、私たちが『本番!』と言われて必死に遊んでいたシーンが、出来上がってみると胸に迫るというか。例えばチワワちゃんが真ん中に立って踊るシーンなんかは、現場で見ていても輝かしくて泣けました。若さの爆発も感じるし、みんな今、このときしかない時間を過ごしているんだなぁって……。監督の編集の力もあって、想像していたよりも感傷的になる作品でした」