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パラアスリート 夢を追う

「水中では腕も足もある」 障害超える天性のスイマー ブラジルのディアス選手

2019/1/25 日本経済新聞 夕刊

ディアスはパラリンピックで通算24個のメダルを獲得している(写真は12年のロンドン大会)=ロイター

2016年リオデジャネイロ・パラリンピックの開会式。選手入場の前、マラカナン競技場のフィールドいっぱいに設置された巨大スクリーンに、1人の選手が泳ぐ映像が流れた。右足はひざまで、右手はひじまでしかない。左手も短く、指は1本だけ。

母国ブラジルではペレやロナウドなどに並ぶスーパースターだ

だが水をかき、蹴る動きは障害を感じさせず、流麗で優雅。大歓声とともに、観客のため息を誘った。ブラジルのダニエル・ディアス。出場した前2大会で15個のメダルをとり、地元開催で最も活躍を期待されていたスイマーだ。

実際、ディアスが出場した水泳会場の熱気はすさまじかった。サッカーでのブラジル代表への応援にも匹敵すると思えるほど。ディアスも「あれは忘れられない。水中でも僕には聞こえた。みんなの声援で水が波打っていたと思うよ」と感慨深げに話す。

その後押しを受け、金メダル4つを含む出場全種目で9つのメダルを獲得。パラの通算メダルを24個とし、男子パラ水泳の史上最多記録を更新した。ただ本人は「昨日よりもきょう、きょうよりもあすと常に前進したいからがんばるのであって、メダルの数や誰かの記録を破るとかを考えたことがない」と強調する。

根底には、「パラ」ではなく「アスリート」の側面に注目してほしいという強い気持ちがある。「パラアスリートという言葉もあまり好きではない。五輪のアスリートもパラアスリートも、トレーニングに費やす時間、情熱、意気込みはなんら変わらない」

■魅力的な笑顔のわけ

04年アテネ・パラでのブラジル選手の活躍に刺激を受け、16歳で水泳を始めた。重い障害ゆえ、本格的なスポーツをそれまでしたことがなかったが、1カ月半で4泳法ができるようになったというから、よほど水の中が肌に合った。

初出場の08年北京大会で、出場選手最多の9つのメダルをとって注目され、12年ロンドン大会では6つの個人種目すべてで世界新、金メダルという離れ業。ペレ、セナ、ロナウドといった母国のスーパースターの仲間入りを果たす。

実質的に足一本で水を蹴る技術や、自由形では長い方の左手でタッチするタイミングの取り方など、様々な工夫があるかと思いきや、「考えたことがない。試合ではトレーニングでやっていることを再現するだけ」と一笑に付す。

「泳いでいる自分は足も腕もあるという感覚なんだ。水をかくときも足をキックする時も。わかりづらいかもしれないが、そういう感覚なんだ」。まさに、「ギフト(神に与えられた才能)」と言うほかないのだろう。

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