メルカリ会長、後輩に語った「打席に立ち続ける」ワケ

この出来事を機に「自分の本当にやりたいことはインターネットサービスをつくり皆に届け、世の中をよくしたり便利にしたりすることだと分かった」という。山田氏は大学卒業からほどなくして、個人事務所としての性格が強い会社を設立していた。外部資金を受け入れてスタートアップ企業として世界市場を目指すようになった原点はここにある。

「そんな簡単なら、皆成功している」

新規事業はそもそも、簡単にいくものではないとの思いがある

「一生をかけられるものを見つけられるのは幸せなことだ」。講演ではこのセリフに力を込めたものの、理想と現実は異なるのが常だ。起業家の歩む道は平たんではない。いくつもサービスを開発したが鳴かず飛ばずの日々。当時の経験を通じて「新規事業はそもそも、簡単にいくものではない」と痛感することになる。この考えは今も変わらない。

以前の起業では失敗を重ね、メルカリでも試行錯誤は続いている。国内のフリマアプリこそ月間利用者が1100万人を突破するまで成長したが、山田氏のこれまでの経験と照らし合わせると「例外」であるはずだ。

「そんな簡単なら、皆成功しているという話だ」。淡々としていることが多い山田氏には珍しく、この発言には力がこもっていた。

「ちょっと進んでは一歩後退を繰り返している」。山田氏は現在のメルカリについてこう説明した。講演の3日前、海外展開の一翼を担う英国からの撤退を発表し、新規事業の創出のために設立した子会社でも旅行事業の中止を決めたばかりだ。いずれも事業開始から日が浅く、学生からも「なぜこれほど意思決定がはやいのか」との質問が出たほどだ。

質問への回答も「新規事業はうまくいかない」という経験則に沿ったものだ。「基本的にうまくいかないので、ダメでも『グッドチャレンジだったね』と言って次のことをやる仕組みができてきた」。このおかげで事業を閉鎖しても担当していた社員が辞めることはほとんどないと付け加えた。

起業では成功に到達するまでに数多くの失敗と向き合う必要が生じるが、チャレンジはこれだけではない。山田氏の言葉を借りれば敵は「評論家」だ。「(中古品の売買では)すでに『ヤフオク!』があるじゃん」「こんなの誰が使うの」――。国内でメルカリのサービスを始めた当時もこうした反応がほとんどだったと振り返っていた。

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