父の教えと故郷への思い 歴史・地理、図書館の本読破公明党代表 山口那津男氏

ふるさとでいうと、母校の水戸一高に徹夜で歩き続ける「歩く会」という伝統行事があります。これをモチーフにしたのが、後輩である恩田陸さんの『夜のピクニック』です。映画化の際、同窓生が何人か保護者役でエキストラ出演しました。母校の思い出がこういう形で共有できるのは幸せなことです。私の座右の銘「至誠一貫」も、もとは将軍徳川慶喜の筆になる母校の校是です。

近年、ドラマなどで慶喜を鳥羽伏見の戦いの際、おじけ付いて逃げた人として描いていることがあります。それは戊辰戦争を戦った人たちが明治になって広めたものでしょう。尊皇をはぐくんだ水戸藩出身の慶喜は、時代の先を見通して大政奉還をしたからには、無益な血を流すべきではないと考えたのでしょう。それを描こうとした司馬遼太郎の『最後の将軍』(文春文庫)を考えるヒントにしてもらいたいですね。

詩集も読まれるとか。

米詩人ホイットマンの『草の葉』の底流にある開拓者魂のようなものには、随分と支えられました。「さあ、行こう! 苦闘と戦いを突きぬけて!/名ざされた目的地は、いまさら取消しがきかないのだ」とのくだりが好きです。大学に入る際は浪人し、司法試験はなかなか受からず、選挙も落選を経験しました。苦しいときに読み返して励まされました。

人生観に影響した本では、『人間の土地』も挙げておきます。読んだきっかけは、高校の教科書に載っていたからですが、『星の王子さま』の印象から、ふわふわした人かと思っていたら、全く違いました。死との瀬戸際で生きることの大切さを示した本です。

仕事絡みで読んでよかった本もありました。『周恩来「十九歳の東京日記」』は周首相の母校の南開大学で講演した際、事前に読みました。デパートなどを訪れたときの感想が率直に書かれていて面白かったです。

(聞き手は編集委員 大石格)

[日本経済新聞朝刊2019年1月5日付]

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