東京五輪でeスポーツ世界大会 インテル、IOCと協議エバンス上席副社長に聞く(下)

――IOCをはじめとする伝統的なスポーツ界では、eスポーツをスポーツとみなすことに懐疑的な見方が強いのではないですか。

「平昌大会のときに比べて、(IOCなど)五輪のコミュニティーはeスポーツについて格段に多くの知識を持ち、開放的になっている。今後さらに開放的になってほしいし、そのためには我々も五輪、そしてアスリートに敬意を払わなければならない」

「我々は、eスポーツの人たちにも五輪をもっと知ってほしいと考えている。競技性とエンターテインメントという共通項はあるが、2つのスポーツは同じではない。互いに理解を深めて、将来一緒に何ができるのかを考えるきっかけにしたい」

eスポーツ大会のもようはインターネットを通じて全世界に配信された(2018年2月、韓国・江陵市)

――eスポーツを五輪の種目に加えるべきか、IOCでは議論が続いています。インテルもその議論に加わっていると思いますが、どんな見通しを持っていますか。

「我々が最初にeスポーツをIOCに紹介したときから、我々の目的はeスポーツがものすごい勢いで成長していることに気付いてもらい、体験してもらい、全体像を理解してもらうことだった。決して、eスポーツを五輪の種目にすることではない。五輪にはギリシャの時代から、脈々と受け継がれてきたものがある。スポーツの精神、肉体を鍛えるということをアスリートから奪い去ろうとは考えていない」

「eスポーツが五輪の種目であるべきかどうか、我々は確信が持てない。(五輪の側が)エンターテインメントという要素でeスポーツを利用するなど互いにいいところ取りすることはあると思っているが、eスポーツを五輪の種目に押し込もうとは考えていない」

――アジアの五輪といわれるアジア大会は、少しずつeスポーツを受け入れています。18年のジャカルタ大会では公開競技でしたし、22年の中国・杭州大会では公式のメダル競技になるといわれています。

「eスポーツに対する理解という面で、アジアは世界のなかで進んでいる。これから(伝統的なスポーツとeスポーツという)2つの世界が大きなスポーツイベントとして、どんどん統合していくと考えるのは自然だ。ただ五輪はグローバルで、大きなディールで、とても伝統的だ。eスポーツをどうみるかはIOCに聞いてほしい。彼らも(統合の流れには)気付いているはずだ」

ドローン規制、日本政府はオープン

――平昌五輪ではドローンのライトショーを実施しました(詳細は「ドローンで五輪彩ったインテル 飛行規制の突破口に?」)。当時の世界最高となる1218台を同時に飛ばして、夜空にスノーボーダーの姿を描きましたが、東京ではどんなショーになりますか。

平昌五輪のドローンショーでは1200台超を同時に飛ばした(写真は開会式で披露された映像)=インテル提供

「平昌ではドローンの台数の多さで人々を驚かせたが、東京は台数だけでなく、(ドローンを飛ばす)正確さなど、ほかの能力にもっとフォーカスしたい。普通のショーにはならない。それが何かは、サプライズなので言えない」

「東京五輪ではショーだけでなく、様々な情報を収集したり、問題を解決したりすることにドローンを活用する。ドローンでなければできないことをする」

――日本はほかの国に比べてドローンの規制が厳しいといわれていますが、障害になることはないですか。

「日本が保守的なのは事実だ。だが政府は五輪を成功させるという目的のため非常にオープンに話してくれていて、大きな問題は起きていない。(あらゆるリスクをなくして)完璧な状態にしたいという政府の立場は理解できるし、我々も急進的でありすぎてうまくいかないことは望んでいない。革新とリスクテーキング、そして完璧さのバランスをとらなければならない」

「何がよくて、何がいけないのか。心配なことは何で、そのためには何をすべきか。我々が話しているのは、すべて五輪についてだ。五輪後に何が起きるかは分からないが、一般的な話として、五輪で何かがうまくいった場合には必ずレガシーが残る。日本でも企業が自らのスポーツチームを持つようになるなど、スポーツビジネスの発展につながっている」

(聞き手は高橋圭介、龍元秀明)

アイシャ・エバンス
インテル上席副社長兼最高戦略責任者として、インテルの長期的な戦略を推進する。現在は五輪などの全社的な戦略活動を指揮している。同社には2006年に入社。直前はコミュニケーション&デバイス事業部事業部長として、マルチ通信向け製品やプラットフォーム向けの無線エンジニアリングを統括していた。

インタビューの記事は日経産業新聞の1月8日付にも掲載しました