小学生でウサギ売り MTG社長の原点は親への恩返し
MTG社長 松下剛氏(上)
MTGの松下剛社長(右は主力商品の美容ローラー「リファ」シリーズ)
美容ローラーなどの「リファ」シリーズ、トレーニング関連製品の「シックスパッド」シリーズなどがヒットし、2018年7月には東証マザーズに上場したMTG。サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手や歌手のマドンナさんなど世界的な著名人と共同開発をするという手法も独特だ。創業者の松下剛社長(48)は長崎県の五島列島の出身で、すでに小学生の頃に起業を決意してビジネスを始めていた。商売の基本を学んだ原体験に迫る。
ロナウド選手(左)も出席したシックスパッドの記者発表会(右が松下氏、MTG提供)
15年に発売し、100万台を突破した「シックスパッド」はロナウド選手と共同開発した製品として有名だ。10年からEMSと呼ばれる筋肉を電気で刺激する技術に着目していた松下氏は、「鍛えられた肉体美を最も表現できるのはロナウド選手しかいない」と、ツテをたどってロナウド選手に何とか接触し、共同開発を持ちかけた。
実は共同開発の話はロナウド選手の自宅で2人で話し合って決まった。そこでブランド名やデザインまで議論したという。意外な共通項も2人を近づけた。ともに離島出身なのだ。ロナウド選手が来日したときに松下氏の自宅に招き、五島の魚介類を取り寄せてバーベキューでもてなした。そのお礼として、今度はロナウド選手が松下氏を自宅に招き、出身地の島にも案内したという。
小5で養子であることを知り、恩返しのため「社長になる」
松下氏が育った家は長崎県の五島列島にある。4人兄弟の末っ子だ。驚くことにすでに小学校時代に「社長になる」と周囲に宣言していたという。そのきっかけは自身の生い立ちを知ったことだ。
「小学校5年生のときに学校で先生が親のコメントなどが書かれているノートを教室に忘れていて、偶然それを私が見たんです。そこに自分が養子であるということが書かれていました。本当に衝撃でした」
生後間もなく松下家に引き取られたことはそのときまで知る由もなかった。少年が受け止めるには重い事実だった。「どうせ俺なんか」とふてくされていた時期もあったが、同時に見える世界も変わってきた。