日食見逃した人にも再チャンス 19年の天体ショー
2019年は、世界の天文ファンにとってうれしい1年になりそうだ。日食や月食が年に複数回起こり、水星の影が太陽を横切るなどの天文現象が見られるのだ。
今年の天体ショーの幕開けは部分日食。1月6日、北海道から沖縄まで、日本全国で観測可能だった。天候が悪かったなどで6日の部分日食を見逃してしまった、という人も安心してほしい。年内に日本でももう1度部分日食が見られるからだ。以下、2019年注目の世界で見られる天体ショーを紹介しよう(記事内の日付は米国時間)。
1月20~21日──スーパー・ブラッドムーンの皆既月食
月食が起こるのは満月のときに限られる。1月20日から21日にかけての満月は、月がいつもよりも大きく、明るく見える「スーパームーン」だ。
そして、皆既月食のとき、月は血のような赤色を帯びて「ブラッドムーン」に姿を変える。今回はこの2つが重なり、特別な皆既月食「スーパー・ブラッドムーン」になる。
このスーパー・ブラッドムーンは、比較的広い範囲で見ることができる。次に地球上で皆既月食を見られる機会は、2021年5月26日までやってこない。
月が完全に地球の影に隠れる皆既食は、日本時間の1月21日午後1時41分に始まり、62分間続く。前後の部分食を含めると3時間半ほどのイベントになる。そのすべてを見られるのは、北南米、グリーンランド、アイスランド、西欧、西アフリカだ。東欧や東アフリカの天文ファンは部分食のみ観測できる。残念ながら、日本を含めたアジアではほぼこの月食は見られない。
4月23日──月と木星の大接近
夜明けの南の空を見上げると、満月を少し過ぎたぐらいのまだ大きめの月が、明るく輝く木星にぴったりと寄り添っているのが見えるだろう。この2つの天体は午前1時ごろに東の空に昇り、夜明けごろには南の空高くにあがる。このカップルの様子は裸眼で見ても印象的だが、双眼鏡や望遠鏡で覗いてみても圧巻だ。
5月──みずがめ座η流星群
2019年、ペルセウス座とふたご座の流星群はどちらも満月の時期と重なってしまうため、月の明かりで見えにくくなる。だが、みずがめ座η(イータ)流星群は新月の時期と重なるので、流星群を観測する絶好の機会となる。
天文学者の予測では、1時間あたり最大で30個ほどの流れ星が空を彩るという。5月5日ごろに始まり、ピークは日本時間の6日23時だ。流星は、この時期に東の空にあるみずがめ座からやってくるように見える。
毎年訪れるこの流星群は、実はハレー彗星のかけらだ。氷と岩石でできたハレー彗星が最後に地球に近づいたのは1986年だった。次にやってくるのは2062年になる。それまでの間は、この天体が残した砂粒ほどの忘れ形見が、夜空で燃え上がる様子を毎年5月に観測できる。
7月2日──皆既日食
2019年7月2日(日本時間では3日)、月が地球と太陽の間を通過する。南太平洋、チリ、アルゼンチンにかけて、幸運な天文ファンは荘厳な皆既日食を見ることができる。
日食は日本時間の7月3日午前1時55分から6時50分まで。食が最大となるのは4時23分だ。南米チリのラ・セレナからアルゼンチンのブエノスアイレスにかけては、2分から2分半の間、太陽が完全に隠れる皆既日食が見られる。
皆既日食になるのは狭い地域のみだが、部分日食はエクアドル、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイでも観測できる。
7月16日──部分月食
1969年7月16日は、史上初めて月に降り立ったNASAの宇宙飛行士を乗せたアポロ11号が打ち上げられた日だ。そのちょうど50年後にあたる日には、地球から部分月食を観測できる。
日本時間の17日午前3時43分、月に地球の影が落ちはじめる。このイベントを目撃できる場所は、南米、欧州、アフリカ、南アジア、オーストラリアだ。月食が続くのは5時間半ほどで、最大で満月の6割ほどが影に隠れる。日本では南西諸島や九州、中国・四国の西部で、月食の途中に月が沈んでしまう月入帯食が観測できる。
11月11日──水星の太陽面通過
これは、太陽の前を水星が滑空するという非常に珍しい現象だ。太陽系の最も内側を回る小さな水星の影が、5時間半ほどかけて太陽の前を横断する。日本時間11日午後9時35分に始まり12日午前3時4分まで続く。
天候がよければ、北南米、欧州、アフリカ、西アジアなど、多くの場所で一部始終を観測できる。残念ながら、この時間帯に夜を迎えている中央アジアや東アジア、日本、オーストラリアでは見られない。安全に観測するには、適切なソーラーフィルターを取りつけた小型望遠鏡が必要だ。前回、水星の太陽面通過が起きたのは2016年だったが、次回は2032年になる。
12月26日──金環日食
中東とアジアの一部地域で、金環日食を目撃できる。この日の日食は、月が地球から遠い位置にあるため、月の見かけ上の大きさが太陽より小さくなるからだ。太陽が完全に覆われないため、美しい「炎の輪」ができるのだ。
金環日食はサウジアラビアやオマーンで観測され始め、インド南端部とスリランカからインドネシアのスマトラ島、シンガポール、グアムまでの地域で見ることができる。
日本では、部分日食を観測でき、午後2時過ぎぐらいから太陽が欠けはじめる。北日本から東日本にかけては、日食の最中に日が沈む「日入帯食」になる。
安全に観測するために、適切な日食観測用グラスを必ず装着しよう。
12月28日──三日月と金星の接近
2019年の終わりには、満ちていく三日月と宵の明星が接近する。街の光に悩まされている都会の天文ファンでも、夕暮れ時、南西の低い空に浮かぶ美しい2つの天体を見ることができる。
(文ANDREW FAZEKAS、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年1月2日付記事を再構成]
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