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日本株探知機

アップルも背中押す? 「優良IR=買い」のデータ 日本株探知機(1)

2019/1/9

波乱の幕開けとなった2019年の株式市場--。要因の1つが米アップル社の業績下方修正ですが、iPhone(アイフォーン)販売台数の四半期開示中止を決めた昨年11月時点で予兆はあったとの指摘が多く聞かれます。不都合なことは言いたくない、という姿勢が株価のマイナス材料の暗示なら、その逆もまた真なりといえるのでしょうか。決算・経営説明会など投資家向け広報(IR)の質の高さと株価動向を調べてみると意外な相関関係がみえてきました。新コラム「日本株探知機」ではニュースやデータを投資の視点で堀り下げ、有望株発掘の材料や売買のヒントを探ります。(掲載は随時)

日本IR協議会は2018年11月14日、18年度のIR優良企業14社を発表しました(記事参照)。このイベントは毎年この時期に開いており、IR優良企業として選抜された8社(大賞含む、特別賞は除外)の一覧が別表です。相場全体(日経J1000)と比べて株価騰落率がどの程度上回ったか、下回ったかを検証してみました。

■優良8社、過去5年間で平均47%上昇

18年12月末で算出可能なデータを使い、過去3年間と過去5年間の株価パフォーマンスを計測したところ、過去3年間では8社のうち6社が相場全体の動きを上回りました。相場全体が12.4%上昇したのに対して、IR優良8社は平均44%の上昇を示し、およそ32ポイント相場全体の動きを上回りました。

IR優良企業の株価パフォーマンス
株式相場全体の動きを上(下)回った数値
銘柄 過去
3年
過去
5年
2018年度 エーザイ 27.9 158.1
住友化学 ▲ 17.8 21.3
ソニー 77.6 180.2
ピジョン 26.1 161.9
不二製油グループ本社 94.3 91.7
三井物産 20 6.1
三菱商事 51.3 31.6
三菱UFJFG ▲ 26.3 ▲ 38.3
平均 31.6 76.6
勝敗 6勝2敗 7勝1敗
2017年度 コマツ 48.5 15.0
塩野義製薬 31.3 209.9
ダイキン工業 38,3 58.5
大和ハウス工業 0.7 57.8
ナブテスコ 16.4 ▲ 2.9
野村総合研究所 12.1 49.3
ポーラ・オルビスHD 44.5 237.6
丸井グループ 28.9 105.7
三菱UFJFG ▲ 26.3 ▲ 38.3
平均 17.3 77.0
勝敗 8勝1敗 7勝2敗
(算出日=2018年12月28日、日経J1000比較、太字は大賞受賞)

5年間で比べるとこの差はさらに広がり、相場全体の上昇率47%に対して、123%(2.2倍)の上げとなりました。個別企業の分布でみても8社のうち7社が上回りました。

18年が偶然だったという場合もあります。そこで17年に選ばれた企業9社についても平均パフォーマンスを調べてみました。過去3年間では9社のうち8社が相場全体を上回り、平均で17ポイント相場全体の値動きを超過しました。5年間ではさらに運用成績がよくなるという傾向は18年と変わりませんでした。

IRの優れた企業と業績には直接因果関係はありません。しかし、仮に運用成績を押し上げる相関性があると考えるならば以下の理屈が挙げられそうです。

(1)IRの質や回数が上がると投資判断の機会提供を増やし、資金流入量の増加につながる
(2)IR拡充は企業価値が十分に反映されていないという市場の評価=株価に対する不満の裏返しであり「買い」の局面の示唆と受け止められやすい
(3)IRにはコストがかかる。力をかけるのは財務的余裕の表れである。

■優れたIR、株価と一定の相関関係

(1)や(2)のような理由から投資マネーが一時的に流れ込んだとしても、将来の資金流出のリスクを増やす要因になる可能性があります。年を追うごとに経営環境は変化しますし、本来IRとはリスク要因の適切な開示・提供の場です。教科書的には株価に中立要因となるはずのIRですが、アップル社にせよ、今回のIR表彰企業にせよ、一定の相関関係がみられたことは興味深い現象といえるでしょう。

(日経会社情報コンテンツチーム)

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