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和食は日本文化のメインコンテンツ 菊の井村田吉弘氏

菊の井代表取締役 村田吉弘氏(下)

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NIKKEI STYLE

京都の料亭「菊乃井」の三代目を継ぎ、東京出店も成功させた村田吉弘(むらたよしひろ)氏は、「和食」のユネスコ無形文化財登録を進めた中心人物の一人であり、日本料理を世界に発信する仕事に深くかかわってきた。その理由と目的は、日本料理の変革を進めることにより、日本が抱える問題の解決策を提案したいという壮大な思いだった。(前回の記事は「フランスで気づいた日本料理の真髄 菊の井村田吉弘氏」)

――菊乃井の東京出店と同じ2004年に日本料理アカデミー(以下、アカデミー)を設立されました。どんなことをしているのですか。

アカデミーは07年にNPO法人化しました。設立の目的は、日本料理を世界の料理に発展させるために必要な多岐にわたる事業を行うことです。会員の3分の1は学者で、日本料理を科学的に分析しています。

日本料理が世界に広がって、日本の第1次産業の生産物が世界中で売れれば、第1次産業が活性化する。それだけじゃない。日本料理は脂肪分が少なくてヘルシーやから、世界に広げれば地球全体の利益にもなると思うているんです。

――その活動の延長線上にユネスコの世界無形文化遺産への和食の登録があったんですね。フランス料理界の重鎮アラン・デュカス氏に勧められたとか。

僕の還暦パーティーにデュカスが来てくれたんで、フランス料理の無形文化遺産登録を祝福したら、「フランス以外で登録できるのは日本だけだから、ムラタが頑張れ」と言われました。

でも、東日本大震災が起こらへんかったら行動してなかったかもしれない。震災後はみんな「日本は駄目になるんちゃうか」と思ってた。僕も日本を元気にするために、登録申請をしようと思ったんです。

同時期、韓国宮廷料理も無形文化遺産登録申請を進めていたんですが、韓国の宮廷料理店へ「利益誘導がなされる」という理由で却下されました。「日本料理」という呼び方も日本料理店に利益誘導がなされるので駄目なんだと知りました。そこで、日本の伝統的な食文化「Washoku」 なら問題ないだろうということで、これで進めました。2012年に 「和食;日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコへ登録申請し、13年に登録が決定したんです。目的が正しいと天の力が働くねんねえ。

和食の特徴として挙げたのは、食材の持ち味の尊重、栄養バランスに優れた健康的な食生活、自然の美や季節の移ろいを表現した盛り付け、年中行事との密接な関わり、の4点です。

和食の一番の評価ポイントは、1月1日の午前中に、日本国民みんなが雑煮を食べることです。ほかにも、京都の祇園祭にハモを食べる。山形県庄内地方の寒ダラ祭りには寒タラ汁をふるまう。こういう行事と食の関わりが高く評価されました。

――和食登録後、世界中に日本料理店、和食店が増えました。

登録前は世界で約5万6000軒、登録後5年間に約12万3000軒となり、倍以上です。今後もっと増えます。「海外には日本料理とは似ても似つかんものを日本料理と言って出す店がある。あんなものあかん」と言わはる人がいますけど、僕は日本料理と名乗ってもらうだけでありがたいと思うてます。

日本料理はやっと苗木になったんで枝も葉もいっぱい出します。この枝はいらん、あかんと言って切ると盆栽になってしまう。日本料理を盆栽にするつもりはない。枝も葉もいっぱい出したらいい。大木になったときに、まだ変な格好をしていたら剪定(せんてい)すればいい。海外の日本料理店にお客さんが入って商売ができてるのは素晴らしいことです。

日本文化を世界に発信するためのメインコンテンツが和食なんです。世界をマーケットにするとき、食は分かりやすいですから。ロンドンの日本料理店では、英国人はスープ代わりに味噌汁飲んで、前菜にすし食べて、ステーキ食べて、デザートを食べて帰る。それで日本料理を食うたことになってる。それでいいんです。

本物すべからく正しからずや。文化は相手の国の文化とフュージョンする。日本ではラーメンは日本料理とは言わないが、海外では日本料理店のメニューに入ってる。海外でラーメンと刺し身を一緒に提供する日本料理店があってもしょうがないんです。

「すし」を見てください。カリフォルニアロール、エビ天ロール、スパイシーツナロールやらいろんなものがある。江戸前のすし屋は「あんなものはすしじゃない」と言ってたが、すしロールが世界中にすしが認められるきっかけになったんです。

僕は海外に行くと必ずその国のすしロールを食べるけど、結構うまい。その国の生活や風土に合うてて支持されてます。すしロールがあったから回転ずしの人気が出て、次は日本で本物のすしを食べたくなり、外国人観光客が日本に来て、国内のすし屋が繁盛しているんです。

――和食の登録によって、ヨーロッパではどんな影響が出ていますか。

今、フランスで星付きのフランス料理店を経営している日本人オーナーシェフが26人ほどいるようですが、フランス人は彼らのレストランに「日本料理を食べに行く」と言います。彼らはフランス料理を作っているんやけど、もともとのフランス料理とはえらい違うて軽妙洒脱(しゃだつ)だから日本料理と言われる。日本人にとって料理を軽くするのは簡単なんです。フランス人は「クリームとバターを使わないでどうやって料理を作るんだ」という考えだから軽くできない。

菊乃井には世界中のシェフが何人も研修に来てますが、頭と勘がいいシェフは、だしや調味料を研究します。日本料理の根本がうま味であることや、うま味が何からできているかを理解して、グルタミン酸とイノシン酸の抽出方法を学ぶんです。

「うま味のレベルを上げれば、オイルのレベルを下げても満足度は一緒」と理解した「世界中のシェフたちは、ソースを軽うするために日本料理を学びたいんです。フランスの三つ星レストランにはコンブ、しょうゆ、みりんは必ずありますよ。

デンマークの三つ星レストラン「NOMA」のルネ・レゼビは、トナカイの後ろ足をボイルして一冬中つるして、カツオ節ならぬ「トナカイ節」を作りました。そして、デンマーク大学の研究者と一緒に、デンマークの海でグルタミン酸を抽出できる海藻を探して、その海藻と削ったトナカイ節からだしをひいてます。

――赤坂店でシャンパンと日本料理のマリアージュに取り組んでいるのは、文化と文化のフュージョンですか?

1998年にドン・ペリニヨンの醸造最高責任者だったリシャール・ジェフロワと一緒に、モエ・エ・シャンドン社のシャトーに各国のメディアを呼んで「ドン・ペリニヨンと日本料理」というイベントをやったんです。リシャールは、「日本料理の自然観とドン・ペリニヨンが求める自然観は非常に近い。ドン・ペリニヨンの中には山の香りがあって、その奥には海の香りがある」と言うてました。

数年前にはアルローというシャンパン会社と知り合って、菊乃井ブランドのシャンパンを作りました。店名がついたシャンパンはうちだけです。それで毎年、シャンパンと日本料理のマリアージュのイベントをやってます。

日本料理とシャンパンは合うんです。ビールみたいに苦みが際立ってると日本料理と合わせるのは難しい。ビールはハーモニーしない酒で、料理で口の中が脂っこくなったのを洗い流すために飲むから、焼き肉にはよろしいね。

――日本料理を次代に継承し、世界に広めていかなくてはいけませんね。

今は京都府立大学に京都和食研究センターがあり、2019年4月に文学部に和食文化学科を新設予定です。立命館大学には18年に食マネジメント学部ができて、飲食店経営を学べるようになった。ほかにも食を研究する学部学科の申請をしている学校がたくさんあるから、継承システムはできつつあります。

アカデミーの中に「日本料理ラボラトリー」があり、日本料理を科学的視点でとらえる研究をしてます。勘と経験で修業してきた日本料理を科学的に分析して数値に変えて、世界中の人に理解できるものにしようと取り組み、発表会も頻繁に開いてます。アカデミー会員の中で3人が京大の大学院を出て、この春、ドクターになる。彼らは英語で論文書いて、英語で講演するから、世界中の人が日本料理の研究成果を理解できます。

陶芸家が入ってる研究もあります。陶芸のような伝統産業も日本酒も日本料理と一緒に世界に出て行けばええんです。すしブームのときに日本酒業界は失敗した。すしは世界中の食べ物になったのに、日本酒を世界の飲み物にする努力をしなかった。アカデミーは日本酒も一生懸命に世界に広めてます。

今は世界中の日本料理店が繁盛して、日本酒も飲まれてる。日本酒が売れたらコメが必要になり、コメを作れば休耕田が減る。ええことです。とっくりやおちょこを使うから、日本の伝統産業も脚光を浴びるでしょう。日本料理の器はリモージュより絶対に日本の皿のほうがいいです。

以前からアカデミーを中心に進めていた日本料理の検定は、19年の春から段階的に始める予定です。実技とペーパーで試験して、「何点なら日本国内では給料はなんぼ」という基準を出し、働きに見合った給料をもらえる仕組みを作る。誰でも努力すれば正当に報われるようにしたいんです。不均衡は是正せんと、全体のスキルが落ちるからね。外国人も受けられるように英語でもやります。これで日本料理人の希望者が増えて全世界に広がれば、日本の第1次産業の生産物も全世界に広がります。

私は66歳なんで、今後はいかに後進に引き継いで、自分はきれいに身を引くかということを考えています。それをやらんと後進が育たんからね。

村田吉弘
1951年、京都・祇園の料亭「菊乃井」二代目の長男として生まれる。立命館大学在学中、フランス料理修業のために渡仏。大学卒業後、名古屋の料亭で修業し、76年に実家に戻り、「菊乃井木屋町店」開店。斬新な料理で予約の取れない店と呼ばれる。93年菊の井代表取締役に就任。04年日本料理アカデミーを設立し理事長を務め、07年にNPO法人化。13年の和食のユネスコ無形文化遺産登録に尽力。18年黄綬褒章受章し、文化功労者に選出される。

(フリーライター 芦部洋子)

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