――厳しい交渉をまとめる秘訣はありますか。

「最初から手の内をすべて明かすと、全部譲れとなってしまう。小出しに譲らなければなりません。どの条件で交渉をスタートするということから、勝負は始まっています。当然、ある条件をのませたら、ここまで譲歩するという社内調整をして交渉に臨みます。最後は根気と胆力です。精神的にも肉体的にもタフでないと交渉は続けられない。交渉で守るべきものと譲るべきものを、ぎりぎりの線をどこで引くかという判断です」

交渉力を身に付けるには現場百遍しかない

海外との交渉は根気と胆力が重要

――そうした海外でも通用するリーダーシップはどのように身につければよいでしょう。

「現場百遍しかないですね。修羅場とはいいませんが、若い頃には徹夜の交渉も何度もやりました。厳しい状況の中で自分の軸がぶれないようコントロールしなければいけない。相手を説得するための話術や、信頼関係を築いていく能力も必要です。それらは結局、研修や講演で身に付くものではなく、仕事の中で経験していくしかありません。だから若い社員には、外に出て経験を積めと言っています」

「社長に就任した15年に若手社員の海外研修制度を改め、原則入社7年目までに海外に派遣することにしました。英語以外の言語圏へ1~2年派遣しています。単に語学を身に付けるだけでなく、異文化を許容する力や俯瞰(ふかん)的に物事を捉える能力を養うことを目的にしています」

――海外で交渉をまとめるリーダーとして、語学の重要性をどう考えますか。

「初めての海外生活は入社3年目で派遣された台湾での中国語研修でした。語学研修は通常6カ月~1年半ですが、私は3カ月だけでした。上司から『動く、食べる、寝る』だけ話せればいいと言われたからです。車での移動と料理の注文、宿泊先の確保だけ中国語でできれば、仕事は英語で問題ないというのです。その後に仕事で派遣された北京では英語が全然通じず焦りました。それでも簡単なことは自分で用を足せるようにはなっていました」

「プラント事業は2~3年は同じ地域を担当します。どこへ行っても語学とその国の歴史・文化は最低限勉強するようにしました。インドネシアでも製油所などの現場に出ると、現地語が話せないと何もできませんでした。言語と一般常識を身につけることは、自分の身を守ります。リーダーが現地語をしゃべれば、交渉相手との距離も縮まります。インドネシア語、ロシア語、スペイン語は片言で話せます」

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日本人だけで経営を回せる時代じゃない