何がconvenientなの? 修飾関係間違いは混乱のもと
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(51)convenient
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、「都合がよい」と言いたいときの表現について見ていきましょう。
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勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
事務所では来年度の予算の準備をする時期が近づいています。ナンシーは予算について話す必要があるとヒロシに言いました。ナンシーはいつその話ができるのか、ヒロシの都合を聞きたかったようです。ヒロシは「今だったら都合がいい」と言ったつもりなのですが、ナンシーにはうまく伝わらなかったようです。彼女は首をかしげています。
それはこんな会話でした。
Hiroshi: I'm convenient now.
Nancy: Ah... Convenient for who?
Hiroshi: For me?
Nancy: Sorry, I'm confused.
ヒロシは期せずしてこう言ったことになります。
ヒロシ:今、僕は便利だよ。
ナンシー:え~と……便利って誰にとって?
ヒロシ:自分かな?
ナンシー:ごめん、よく意味が分からない。
ヒロシの言ったI'm convenient now.は「今、ヒロシ自身が便利だ」という意味になります。convenient という形容詞が主語のI(私)を修飾しているからです。ゆえに、ナンシーはConvenient for who?(便利って誰にとって?)と質問してきたのです。ヒロシもナンシーのこの質問が理解できずに、For me?(自分かな?)と自信のなさそうな返答をしています。この状態では、ヒロシもナンシーもお互いの意図するところが全く分かっていません。ここのカギは形容詞のconvenientの使い方にありそうです。
ではどう言えばよかったのでしょうか?