ママ役の武井咲が客役の小泉孝太郎や舘ひろしとハズキルーペについて語り合う

――武井さん、小泉さん、舘さんが出演した高級クラブを舞台にしたCMは、CM好感度ランキング10月度の作品別で、auやソフトバンク、NTTドコモを抑えて1位になりました。成功のポイントは何だと考えていますか。

●やはり武井さんの人気が大きいですね。CMでオマージュしたドラマ『黒革の手帖』での着物姿がきれいで年配の男性ファンも多いし、モデル時代から若い女性からの人気も高い。シニア層と20代の両方に響いたから、好感度でトップとなったのだと思います。それは狙ってのことで、世代を下げていくことで需要を広げようとしていますから。20代の武井さん、40代の小泉さん、60代の舘さんが並ぶことで、ハズキルーペは全世代で使えるということを、視覚でイメージしてもらおうと思いました。口で言っても、人にはなかなか伝わらないので。

ただ、キャスティングがすべてというわけではありません。公式YouTubeの再生回数を他社のCMと比較するとよく分かります。うちは112万回とケタ違いの再生回数。つまり、もう一度見たいと思わせるCMなんです。そういう意味では、作品になっているのかなと。僕がシナリオや絵コンテを作り、映画のプロモーションビデオみたいに撮ってほしい、と映像監督に言っています。だから渡辺さんのCMでは、コールセンターに「出ている映画のタイトルを教えてほしい」という問い合わせが来ましたし、武井さんのCMには「流れるのが楽しみです。ありがとう」という声がたくさん寄せられています。

理論と感情、両方あって人は動く

――映画がお好きで、絵画のコレクターでもある。芸術的な素養があってのクリエイティブディレクターとしての活躍のように思えます。

●映画はすごく好きなので、いい映画は時間の許す限り何回でも見ます。『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』『シンドラーのリスト』は繰り返し見ています。絵画は、父が建築家だったので書斎に絵画の本がたくさんあり、好きで見てました。学生時代もしょっちゅう美術館に行っていたし、今も海外に行くと美術館を回ります。絵画のコレクションは700~800枚あります。僕は、画家が命をかけて描いたものかどうかぱっと分かるんです。画家の大家に「画家の目を持っている」とも言われました。いい絵画は、見る時間や気持ちによって見え方が全然違うので、いろんな楽しみ方ができます。

静止画でそうならば、動画もお金をかけて作り込めば、何回見ても堪えられるものを作れるという確信がありました。なのでクリエイティブディレクターとして、企画、演出、脚本の全てを僕が考えました。企画では、プロの誰もが不可能だと言った『黒革の手帖』をモデルにしたCMを実現させました。オスカープロモーションの古賀社長が自らテレビ朝日の会長を説得までしてくれたのです。セリフも全て僕が書き上げたもの。スタジオでは、現場でカメラの位置まで指示。演出では、何度も撮り直しをさせず、1回目の撮影で決めました。衣装も、予算とは別にポケットマネーで一流のものを用意させました。ただ映像、音楽、CGについては一流のスタッフにお願いしました。

――人の心を動かす作品をつくる上で大事なことは何ですか。

●理論的な部分と気持ちに訴える部分。両方あって、初めて人は動くと思っています。うちのCMなら、機能を説明するだけじゃだめで、感情を入れるのが大事。それが「すごい」「大好き」なんです。やはり人は熱意に押されるので、そこが一番の肝です。

――2019年はどんな展開が待っているのでしょうか。

●CMは、春先に新作を準備しています。絵コンテもできていて、関係者からは「最高傑作じゃないか」とも言われています。楽しみにしていてください。ハズキルーペは、2019年には月産100万本の体制をめざしています。子供までの全世代に対応できるようにする計画です。来年以降にはキッズ向けを出したいと思っています。そのときは、例えばお母さんと子供といった、新しいCMシリーズを立ち上げることになるでしょうね。

(日経エンタテインメント! 小川仁志)

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