親が認知症になったら… 成年後見制度、早めに検討

NIKKEIプラス1

ただ、子が親の後見人になると、悪意がなくても親の資産を自分のものと混同するケースがある。不適切と判断されて後見人を解任されたり、民事や刑事で責任を問われたりする可能性もある。最高裁判所家庭局の宇田川公輔第二課長は「後見人はあくまでも本人の意向を尊重し権利を守る立場ということを忘れないで」と強調する。

親族は3割弱

自分が後見人になるのは負担が重すぎるなら、第三者に任せることも検討したい。裁判所の判断で、家族が医療や介護などの手続き、第三者が財産管理と複数の後見人が選任されることもある。

実際、親族が後見人になるのは3割弱。裁判所の判断で家族は後見人に選ばれないこともある。家族間に意見の違いがある、預金などが多い、多額の遺産相続がある場合は、第三者が後見人に決まるのがほとんど。弁護士など法律の専門家が後見人になった場合は、本人の財産額にもよるが、月2万~3万円程度の報酬を親の財産から支払う。

注意が必要なのは、成年後見はひとたび開始の審判が下りると、本人の症状が改善しない限り利用をやめられない点だ。第三者が後見人になったとしても、後見制度の利用は中止できない。制度はあくまで本人の財産保護が目的なので、本人の意思が確認できないと生前贈与ができないなどの制約もある。

家族の話し合いが大事

もう一つ、知っておきたいのが任意後見だ。自分の判断能力が落ちたときのために、任意後見人を選び、してもらいたい事柄を決めておく。任意後見契約は公証人が作る公正証書で結ぶ。本人の判断能力が落ちたら家裁の手続きを経て契約が発効する。

成年後見制度の利用はあまり進んでいない。認知度の低さに加え、後見人のサポート体制が不十分なためという。厚生労働省では「5年以内に相談から申し立ての準備、後見開始後のサポートまでを一括して担う中核機関を全国に整備する」(成年後見制度利用促進室)としている。

後見制度は判断能力があるうちに検討しておけば慌てずに済む。「認知症になったら」という会話は始めにくいが、「転ばぬ先の杖(つえ)」と考え、家族で話し合ってみたい。

(ライター 藤原 仁美)

[NIKKEIプラス1 2019年1月5日付]

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
注目記事
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし