講談界の若き星・神田松之丞さん 北斎の生涯を語る
「絵を描き始めたのは北斎、数え6つの年でした」。人気講談師・神田松之丞さんが、江戸時代の絵師・葛飾北斎の画業を紹介する展覧会で、音声ガイドナレーターを務める。張り扇で台をたたきながら軍記物などを聞かせる講談師としての芸歴はわずか10年ちょっと。異例の抜てきで2020年2月に真打ちに昇進することが決まった若きスターが、日本美術史を代表する巨匠の生涯を語る。
「いちずに自分の好きなジャンルを追求し続けていた。まさに私が好きなタイプの人間」。18年12月、東京都内のスタジオで行われた音声ガイドの収録で北斎についてこう語る。
収録ブースでマイクを前に時折、顔をしかめたり手で覆ったりしながら20ページ近くに及ぶ台本の一節一節を読み上げていく。臨場感あふれる語りは美術展の音声ガイドというよりラジオドラマのようだ。
「いかにも説明調にせずに、『う~』とうなる描写だけでいいのでは」。おおむね台本通りに読み上げていた松之丞さんが収録に待ったをかけたのは、お岩さんで知られる「四谷怪談」を題材に描いた作品解説でのこと。今回の音声ガイドの山場といえる部分だ。
20分近くかけて松之丞さんが書き直した四谷怪談に、スタジオで見守った関係者は思わず息をのむ。「(作品の前で)どこまで立ち止まって聞いてもらえるか。作品の前で渋滞が起こるくらい立ち止まってもらいたい」と笑顔で語る。
展覧会は、北斎が絵師としてデビューした20歳の作品から、90歳で生涯を閉じる間際の作品まで400点以上が並ぶ。今回は、日本で初公開となる肉筆画「向日葵図」(米シンシナティ美術館所蔵)など初お披露目の作品も多い。代表作として世界的に名高い「冨嶽三十六景」シリーズや「北斎漫画」などおなじみの作品だけでなく、新しい北斎像に触れることができそうだ。
「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」は森アーツセンターギャラリーで、17日~3月24日まで。会期中展示替えあり。
(映像報道部 鎌田倫子)
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