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残業3割減、削った経費は給料で還元 三菱地所子会社

三菱地所プロパティマネジメント 川端良三社長(上)

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NIKKEI STYLE

三菱地所プロパティマネジメントは2016年度から働き方改革実現に向けたプロジェクトを実施した。17年度は、残業時間を3割削減。削減した残業代約1億8000万円を社員に給料他として還元しているという。評価と報酬の改定は働き方改革の成否を握る。川端良三社長にプロジェクトの狙いと今後について聞いた。

商業施設併設の複合ビルの管理が増加

白河桃子さん(以下敬称略) 三菱地所といえば、丸の内の再開発をリードする企業で、どちらかというと長時間労働をいとわない体育会系のイメージがありました。その地所グループでビルの管理を担う御社が、本格的な働き方改革に取り組まれ、劇的な効果を出していると伺ってきょうはお訪ねしました。

川端良三さん(以下敬称略) ありがとうございます。ご注目いただいたのは残業時間の削減のことだと思います。改革を始めた2015年度から比較して17年度は30%の削減になりました。

白河 それはかなりの削減率ですね。働き方改革にはリモートワークなど他にも様々なアプローチがありますが、なぜ「残業削減」に着手されたのでしょうか?

川端 我々の業界は典型的な労働集約型の業界です。特に当社は三菱地所所有ビルは言うまでもなく、三菱地所以外のオーナーが所有するビルの管理運営業務も受託しています。さらにオフィスビルだけでなく、商業施設を併設した複合ビルも受託していることなどにより、業務の守備範囲が広く、かつ勤務形態も多岐にわたります。

また、我々にとってオーナーがお客様である一方、賃貸ビルに入居するテナントも重要なお客様です。見方によっては利害が対立する双方の関係を、立場上うまく取り持たなければなりません。その調整のために自らの時間を犠牲にすることが常態化しており、疲弊感が社員の間で広がっていたという背景があったため、前社長の時代にこの改革に取り掛かった次第です。

白河 たしかに、丸の内の夜は長くなりましたよね。新丸ビルが07年に開業したとき、朝4時までやる飲食フロアができて驚きました。クリスマスの時期はイルミネーションも本当にきれいで、丸の内の外からも人が集まり、夜遅くまでにぎわうビルも増えました。その陰で御社の社員の労働時間は増加傾向にあったと。

川端 おっしゃる通りです。ローテーションを組むにしても、提供サービスや役割は増えていきますので、業務拡大する中での効率化が経営課題となっていました。

「カエル会議」で業務効率化・改善案を協議

白河 具体的に、どうやって減らしていったんですか?

川端 第1段階として、現場から業務改善のアイデアを出してもらい、それをどんどん実践していきました。きっかけとして取り組んだのが、コンサルティングを依頼したワーク・ライフバランスから提案を受けて実施した「カエル会議」です。営業管理に携わる4つのユニットをモニターとして、それぞれ自ユニットにおける業務効率化・改善案を協議・実行してもらいました。

白河 例えば、どんな案が出てきたんですか?

川端 うちの主業であるテナント対応方法について、基本の体制を見直す案が出てきました。お客様からビルの設備で故障の連絡が入ったときに、これまでは電気・建築・空調など建物に関する専門家が4人ほど集まって訪問していました。当時はそれが手厚いサービスだと認識する文化があり、何も疑わずにやってきた。ところが、あらためて考え直してみると、フルチームでお伺いしても実際に手を動かすのは1人で十分というケースがほとんどで、お客様から「こんなに大人数で来てくれなくてもよかったのに。これが費用にも入ってるんだね」というような笑えない指摘もありました。

そこで、思い切って訪問体制を1人に変更してみたんです。簡単な不具合は直せるくらいの基礎知識は全員備えているので、「コンセントの調子がおかしい」と言われたら電気の専門家だけが1人で伺い、対応できないときだけ専門家が再訪するという形へ。すると、残り3人の時間を有効に活用できるようになった。

白河 「丁寧なチーム対応こそ、三菱ブランド」と信じて続けてきた習慣を一から見直したということですね。

川端 さらに言うと、これは内輪の事情ではあるのですが、弊社は4年前に三菱地所ビルマネジメントと三菱地所プロパティマネジメントという2社の統合によって生まれた会社なんです。旧ビルマネジメントは三菱地所が所有しているビルを管理運営していた会社で、今申し上げたような「手厚いサービス重視」の文化。

もう一方の旧プロパティマネジメントは他のビルオーナーの物件を個別契約で扱っていて、どちらかというと「より効率的なサービスを」という文化。この文化の統合、新たな仕事の仕方や文化の創出も大きなテーマでした。

旧ビルマネジメント側の社員からすると、フルサービスこそアイデンティティーだったわけですが、そこを割り切って新しい形に変えてみたところ、お客様からのお叱りを受けることもなく、今のところうまくいっています。

他にも、会議の回数や時間の削減など、出てきた改善案をどんどん取り入れてきました。フローや段取りを変えるだけで効率化できる業務はかなり見つかったようです。長年の習慣となっている業務はなかなか変えるきっかけがないので、全社的な取り組みとして現場発信の業務改善の機会をつくったことはよかったと感じています。同時に、フレックスタイム制やモバイルパソコンの支給など、より柔軟に働きやすい制度導入も進めてきました。

現場発のアイデアを社内で共有

白河 会社の統合による新しいシステムの創出という課題も改革の重要なテーマなんですね。やはり現場から出てくるアイデアは効果を生みやすいと?

川端 やはり経営層や管理部門から見える範囲というのは限られますので、現場で働く人たちが「きょうにでもこれを変えたい」と感じていることをすぐ実践してもらうことが大事だろうと思います。その意味で、アイデアを実践しやすいように部長の判断に任せるようにして、権限委譲をかなり意識しました。さらにうまくいった事例については、発表会や報告会、広報誌、イントラネット上で積極的に公開して共有してもらうようにしました。

白河 権限委譲することで、現場発の業務改善が日常業務の無駄取りを進めていったのですね。他にも、残業削減のために利いた策はありますか?

川端 17年度に実施した「ワークスタイルチャレンジ」という取り組みは、人事部門がかなり頑張ってやってくれました。これは「部門内の月平均残業時間を20時間以内に減らす」というもので、ある意味ゲーム感覚でチーム一丸となって残業を減らすアクションが盛り上がりました。

あと、一部のユニットでは「夕礼」といって定時前の15分間、ユニットメンバーが集まって、その日に残業する予定とその業務内容を報告し合う取り組みが奏功しました。すると「その仕事は急ぎじゃないから明日でいい」とか「大変だから手分けしよう」というふうに、チーム内での調整が働くようになる。1人に業務が集中するのを防いで、お互いの仕事の見える化にもつながる点でもメリットは大きいですね。

白河 残業を減らしながらチーム力も高まるという副次効果もありそうですね。そして、残業時間は30%も減らせたと。ここからが本題でもあるのですが、「では減らした残業代はどこへ行くのか?」というのが大きな関心の一つです。

現実問題として、残業代が生活費だったという人も少なくありませんよね。働き方改革を推進する企業の社員の本音として「僕たちの給料が減ってしまっては困る」という総論賛成、各論反対という訴えも耳にするわけですが、そのあたりのソリューションも御社は踏み込んだそうですね。

減らした残業代の使途に納得感を

川端 おっしゃる通りで、業務改善を積極的に行うことが、自分たちの収入を減らすことにつながるのであれば、それは大きな抵抗要因になります。つまり、削減した残業代の使途に納得感がなければ改革は進みません。他社の事例を調べますと、「研修費など人材育成への投資に使います」という回答が多いようですが、それだけでは社員を本気で巻き込むことはできないと思いました。そこで、ダイレクトに給料として還元する方式を取ることにしたのです。

白河 それは社員の皆さんにとって、分かりやすく、モチベーションが続きやすいですね。還元する金額というのは実際にはいくらくらいになったのでしょう?

川端 改革を始める前の15年をベースにすると、17年度に削減された残業代は1億8000万円ほどです。それを原資に18年度の還元を実行しています。

白河 そんなに……! 想像以上の金額ですが、具体的にどのように還元しているのですか?

川端 一番大きい施策としては、18年度の施策として6月から「固定残業代」を導入しました。職種に応じた基準支給時間を定め、一定の残業代を支払うというもの。もちろん、固定残業時間以上となった場合は、超過分も支給しています。加えて、17年度から引き続き、評価に応じて還元できる仕組みとして、年に2回の賞与に特別加算する仕組みも実施しています。

白河 そうすると、痛みを感じる人がいないので全員賛同しやすくなりますよね。

川端 やはり新しい施策を始めるときには、社員のモチベーションと相乗効果が生まれる仕組みにしなければいけません。まだ試行錯誤段階ではありますが、一定の水準までは持ってこられたかなと思います。

白河 昔は「残業削減はコストカットのため」というイメージが強かったので、いまだに抵抗は大きいと聞きます。その点を解消されようとしているのは大きな意義がありますね。実際、社内からの抵抗感はあまり感じられませんでしたか?

川端 誤解を恐れずに言えば「しなくてもいい残業」をしていた人にとってはプラスしかなく、受け入れやすかったと思います。逆に、「時間をかけてもっと成果を上げたい」という熱心な社員のモチベーションをそがないようにという調整のほうが課題として残っていますね。

先ほど申し上げた固定残業代支給や成果に応じた加算に加え、どんな方法が最適か、検証しているところです。

白河 なるほど。誰も損を感じないような仕組みを目指されているのですね。ちなみに「月20時間分の残業代を必ず払います」としたときに、「だったら20時間分、残らなきゃ」というかえって長居する人は出ていませんか? 日本人は真面目ですし、「長く働くほうがエラい」という固定観念に縛られやすいのでは? と思ったのですが。

川端 今のところは見られないようですね。

白河 最初に「チームで20時間以内に減らそう!」というアクションを起こしてからという順序が効いているのかもしれませんね。「効率よく働くことはいいことだ」という共通認識がすでにあるから、早く帰ることに罪悪感を感じにくいのでは。

川端 たしかにそれはあるかもしれません。

(以下、来週公開の(下)に続く。次回はプロジェクト実施で社員の意識や行動に生じた変化、現場発のアイデアで生まれた新規ビジネス、今後の課題などをお聞きします)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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