残業3割減、削った経費は給料で還元 三菱地所子会社三菱地所プロパティマネジメント 川端良三社長(上)

白河 例えば、どんな案が出てきたんですか?

川端 うちの主業であるテナント対応方法について、基本の体制を見直す案が出てきました。お客様からビルの設備で故障の連絡が入ったときに、これまでは電気・建築・空調など建物に関する専門家が4人ほど集まって訪問していました。当時はそれが手厚いサービスだと認識する文化があり、何も疑わずにやってきた。ところが、あらためて考え直してみると、フルチームでお伺いしても実際に手を動かすのは1人で十分というケースがほとんどで、お客様から「こんなに大人数で来てくれなくてもよかったのに。これが費用にも入ってるんだね」というような笑えない指摘もありました。

そこで、思い切って訪問体制を1人に変更してみたんです。簡単な不具合は直せるくらいの基礎知識は全員備えているので、「コンセントの調子がおかしい」と言われたら電気の専門家だけが1人で伺い、対応できないときだけ専門家が再訪するという形へ。すると、残り3人の時間を有効に活用できるようになった。

白河 「丁寧なチーム対応こそ、三菱ブランド」と信じて続けてきた習慣を一から見直したということですね。

川端 さらに言うと、これは内輪の事情ではあるのですが、弊社は4年前に三菱地所ビルマネジメントと三菱地所プロパティマネジメントという2社の統合によって生まれた会社なんです。旧ビルマネジメントは三菱地所が所有しているビルを管理運営していた会社で、今申し上げたような「手厚いサービス重視」の文化。

もう一方の旧プロパティマネジメントは他のビルオーナーの物件を個別契約で扱っていて、どちらかというと「より効率的なサービスを」という文化。この文化の統合、新たな仕事の仕方や文化の創出も大きなテーマでした。

旧ビルマネジメント側の社員からすると、フルサービスこそアイデンティティーだったわけですが、そこを割り切って新しい形に変えてみたところ、お客様からのお叱りを受けることもなく、今のところうまくいっています。

他にも、会議の回数や時間の削減など、出てきた改善案をどんどん取り入れてきました。フローや段取りを変えるだけで効率化できる業務はかなり見つかったようです。長年の習慣となっている業務はなかなか変えるきっかけがないので、全社的な取り組みとして現場発信の業務改善の機会をつくったことはよかったと感じています。同時に、フレックスタイム制やモバイルパソコンの支給など、より柔軟に働きやすい制度導入も進めてきました。

現場発のアイデアを社内で共有

白河 会社の統合による新しいシステムの創出という課題も改革の重要なテーマなんですね。やはり現場から出てくるアイデアは効果を生みやすいと?

川端 やはり経営層や管理部門から見える範囲というのは限られますので、現場で働く人たちが「きょうにでもこれを変えたい」と感じていることをすぐ実践してもらうことが大事だろうと思います。その意味で、アイデアを実践しやすいように部長の判断に任せるようにして、権限委譲をかなり意識しました。さらにうまくいった事例については、発表会や報告会、広報誌、イントラネット上で積極的に公開して共有してもらうようにしました。

白河 権限委譲することで、現場発の業務改善が日常業務の無駄取りを進めていったのですね。他にも、残業削減のために利いた策はありますか?

川端 17年度に実施した「ワークスタイルチャレンジ」という取り組みは、人事部門がかなり頑張ってやってくれました。これは「部門内の月平均残業時間を20時間以内に減らす」というもので、ある意味ゲーム感覚でチーム一丸となって残業を減らすアクションが盛り上がりました。

あと、一部のユニットでは「夕礼」といって定時前の15分間、ユニットメンバーが集まって、その日に残業する予定とその業務内容を報告し合う取り組みが奏功しました。すると「その仕事は急ぎじゃないから明日でいい」とか「大変だから手分けしよう」というふうに、チーム内での調整が働くようになる。1人に業務が集中するのを防いで、お互いの仕事の見える化にもつながる点でもメリットは大きいですね。

白河 残業を減らしながらチーム力も高まるという副次効果もありそうですね。そして、残業時間は30%も減らせたと。ここからが本題でもあるのですが、「では減らした残業代はどこへ行くのか?」というのが大きな関心の一つです。

現実問題として、残業代が生活費だったという人も少なくありませんよね。働き方改革を推進する企業の社員の本音として「僕たちの給料が減ってしまっては困る」という総論賛成、各論反対という訴えも耳にするわけですが、そのあたりのソリューションも御社は踏み込んだそうですね。

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減らした残業代の使途に納得感を