江戸時代に東海道最初の宿場町として栄えた品川宿。その面影を残す東京・北品川商店街の一角に、25ベッドの小さな簡易宿所「ゲストハウス品川宿」があります。オープンから約10年、外国人観光客の人気を集め、通算100カ国以上から利用がありました。その秘密は1泊3500円からという安価な宿泊料金に加えて、地元の商店街で日本の日常を体験できる点にあります。商店街と一体となった外国人のおもてなしについて、宿を経営する渡辺崇志館長(38)に聞きました。(聞き手はやまとごころの村山慶輔代表)
――渡辺さんがゲストハウスを開いた北品川商店街について説明してください。
「江戸時代そのままの通りに、鮮魚、青果のほか日本茶、のりなど日本ならではの商品を扱う店、居酒屋などがあります。周辺には銭湯や寺社も点在しています。商店街そのものが伝統的な日本を感じられる観光スポットだと、外国人のお客さんは感じているようです」
「北品川は昔から常に外から人がやって来て成り立ってきました。よそ者や若い人を受け入れようという雰囲気があって、宿場町のDNAが伝わっていることを感じます。廃業したビジネス旅館を引き継いで私がゲストハウスを開こうとしたときも、地元の方々に助けていただきました」
――ゲストハウスに泊まる外国人観光客に対して、商店街の店は最初から歓迎していたのでしょうか。
「商店街の人たちの間には躊躇(ちゅうちょ)や戸惑いはありましたし、すべてが順風満帆に進んだわけではありません。私は常に地域とゲストの両方とコミュニケーションをとり、何か問題になりそうなことがあれば先回りして対処していました。だから大きな問題はなかったように思います」
宿泊客に商店街の店を案内
――具体的に、どんなことをしたのですか。
「ゲストハウスはシャワーだけで湯船がないので、お客さんに近所の銭湯を案内するのですが、事前に銭湯の方と話をして、入れ墨のある方も受け入れていただけるようにしました。外国ではファッションとして入れ墨をしている人が多いですからね」
「風呂の入り方についても、当初は銭湯に英語の貼り紙をしたり、ゲストハウスのスタッフがお客さんについていってルールを教えたりしていました。そんなことを繰り返しているうちに、今では近所に住む銭湯の常連さんが、戸惑っている外国人に身ぶり手ぶりで教えてくれます」