理容室とひと味違う「バーバー」 大人の男の隠れ家に
こだわりをもったニュースタイルのバーバーやヘアサロンが、男性たちの支持を集めている。従来の理容室のイメージとは一線を画すバーバーを取材し、男性たちを引きつける魅力を探った。
趣味の話ができる社交場
東京のJR神田駅近辺に3店舗を展開する「THE BARBA TOKYO(ザ・バルバ・トウキョウ)」(東京・千代田)。オーナーのTOMさんは「バーバーは、カミソリとハサミで男性をかっこ良くする場所」と話す。目指すのは「マンケイブ(男の隠れ家)」。モーターサイクルや音楽など趣味の話ができる社交場だ。
2017年4月オープンの「THE BARBA TOKYO DINE(ザ・バルバ・トウキョウ ダイン)」(東京・千代田)は、ハワイアンダイニングを併設し、カットの前後に食事やお酒も楽しめる。店舗デザインは1950年代のアメリカンカルチャーが好きなTOMさんが手掛けた。「男たちの集まるガレージ」をイメージ。店の前には大型バイクが止められ、車やバイクの部品が店内を彩る。アンティークのジュークボックスやビリヤード台など「『~っぽい』というのは嫌いなので、本物にこだわった」(TOMさん)。
客層はビジネスマンをはじめ、会社役員やプロスポーツ選手など多彩。年代も上は80代までと幅広い。2年前から通う20代の会社員は「スーツはもちろん、どんなシーンにも合う大人の男っぽいスタイルが魅力。古くさくなく、かといって流行に流されないかっこ良さがある」と話す。
都内で20以上の理容室を展開する「HIRO銀座」(東京・中央)は2018年1月、同社初のアメリカンバーバースタイルの店舗をJR新宿駅近くに開いた。ビンテージのレジスターやサインポールをデザインした壁掛けが並ぶ空間は、古いアメリカ映画に出てくるバーバーの趣。店長の新城一滉さんは「既存店は高級感を打ち出し、客層も30~50代が中心。開店までは受け入れられるか不安もあった」というが、インターネットで「バーバースタイル」や「フェードスタイル」で検索してきた20~30代の若者が集まる。
美容室からのくら替えも少なくない。リーゼントやフェードスタイルなどバーバーならではの髪形を、時代に合った形で取り入れられるのも魅力だ。「薄毛や頭皮のトラブルなど男性特有の悩みは美容室では相談しづらい。かといって、普通の理容室には抵抗があるという層にも受け入れられている」(新城さん)
洋服とヘアスタイルのトータルコーディネートを打ち出すのは、メンズサロン「W.L.T CUT CLUB」(東京・千代田)。「アダム エ ロペ」のメンズコンセプトショップ「アダム エ ロペ WILD LIFE TAILOR丸ノ内店」内に併設されている。
大人が集う洋品店がコンセプト
アダム エ ロペ事業部フィールドマネージャーの山内拓也さんは「ショップのコンセプトが『若い頃に憧れた大人が集う洋品店』。男性が幅広く身だしなみを整える場所にしたかった」と話す。実際に顧客の3~4割がサロンとショップの両方を利用する。
スーツやシューズが並ぶ店内奥がカットスペースで、米国や英国のクラシックなバーバーをイメージ。スタイリストは都内の美容室から派遣される美容師だが、赤白青のサインポールを掲げた外観はバーバーの雰囲気を醸し出す。
丸の内という土地柄、客層は30~60代のビジネスマンが中心。東京出張の度に訪れる地方からの客もいるという。月1回の頻度で訪れるという30代の会社員は「勤務地から近く、会社帰りに立ち寄れるのがいい。メンズ専用で落ち着くし、男性スタイリストとの会話も楽しみの一つ」。
理容室を舞台とした小説「キリの理容室」の作者、上野歩さんは「バーバーには昔から大人の男の行く場所というイメージがある。映画でも『アンタッチャブル』はアル・カポネのひげそりシーンで始まり、『あ・うん』では高倉健が板東英二に『ひげ、あたりに行こうか』と誘うシーンがある」と話す。
バーバー選びについて上野さんは「『ここに行くとかっこ良くなれそうだ』と思わせる店に男は行きたくなるもの。店作りにこだわりが感じられると、仕事にもこだわっている印象を受ける」と話す。
(ライター 李 香)
[日本経済新聞夕刊2018年12月22日付]
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