働き続けたいから… 平成女子「出産前に成長したい」
20代正社員キャリア座談会
平成の時代は育児休業法(当時)の施行をはじめ、働く女性を支える環境整備が進んだ。子どもを育てながら働き続ける女性が増えて就労期間が長期化。平成生まれの20代女性は結婚・出産などのライフイベントに備え、早くから成長を求める新しいキャリア観が広がっている。職場での女性の活躍への注文を含め、語り合ってもらった。
Bさん 13年から中堅医療機関勤務。医療事務を担当。
Cさん 12年に大手保険会社入社。営業職として働く。
Dさん 12年に運輸大手入社。コーポレート部門で働く。既婚。1児の母。
Eさん 14年に大手広告会社に入社。18年に退職しベンチャー企業でブランディングを先導。既婚。
注)平成元~3年生まれ(27~29歳)の大卒正社員・正規職員
理想の働き方へ、起業・資格など研さん励む
――皆さん「長く働き続けたい」とのことですが、希望の働き方は。
Aさん 「勤め先は若いうちから性別などに関係なくフラットに評価し自由に働けて、さっさと昇進できる。早めに成長させてくれる点に魅力を感じて入社した。役職アップより力をつけたい。将来は独立するなどして人や組織が良くなるように企業へのコンサルティングをやりたい」
Bさん 「現場で働きたい。もっと患者さんやそのご家族をじかに支えたいと社会福祉士の資格を取った。今の職場は人間関係が良く不満はないが、学べることはもうない。転職でソーシャルワーカーになろうかと移り時を検討中。結婚や妊娠・出産は目標がなさすぎるのがやや不安」
Cさん 「私は結婚や育児もしたいが、どちらかというと仕事をメインにできる限り能力を伸ばし管理職になりたい。生え抜きの女性役員が誕生し、目指そうと思えばあそこまでいけるんだと思った。今後、人をまとめる立場として、気持ちよく働ける職場環境や教育体制を整備できたら自分も周囲もハッピー。顧客にも良い価値を提供できる」
Dさん 「午前8時半~午後3時半が私の定時。仕事は細く長く続けたい。子どもは3人くらい欲しい。あと2回育休をとることになるが、子どもの教育のためにも社会との接点は絶対持っていたい。仕事はスキルアップのためにやっていて、今は会社に費用の75%を負担してもらい、英会話を受講中だ」
Eさん 「私は絶対、子どもが欲しい。28歳くらいで出産したい。それまでになるべく仕事の実力をつけなければと、激務でも成長できる職場を求めて大手企業へ。ただその会社は忙しく、子どもを産んでやりがいを持って働くのは不可能と判断した。成長する環境としては良かったが、組織でキャリアを積むのは無理だと思った」
「起業を考え迷っていた頃、友だちが興したベンチャー企業の手伝いを頼まれた。確かに起業に向け経験が積める。いずれ自分のペースで自分にしかできない仕事と育児を両立したい」
上司への希望「強みを鍛えて」
――理想の上司像は。
Aさん 「強みを伸ばし『こういう良いところがあるから、もっとやれよ』と応援してくれる上司」
Bさん 「私は部下の能力の少し上のレベルの仕事をうまく采配できる上司」
Cさん 「バリバリ働いて、こうやるんだと見せてくれるプレーイングマネジャーがいい。背中から学び、追いつけ追い越せと思える」
Dさん 「私は攻めてくる上司。他部署とも戦う人で、その上司を支えようと部下は『これができます』と自分の強みや良さを発揮し鍛えられる。組織が強くなって仕事がしやすくなるし成長できる」
Eさん 「ビジョナリーな人、共感できる軸のある人だと一緒に頑張れる」
――職場の女性の活躍推進で課題はありますか。
Dさん 「女性の管理職が一気に増え、管理職になる年代の男性たちは少し戸惑っているようだ」
Cさん 「私自身も、どちらかというと活躍推進の恩恵を受けていると思う。だが、職場に不平等感や不透明感があるとモチベーションアップにつながらない。上げた理由や評価点を示してほしい」
Dさん 「同感。過去に評価すべき女性を引き上げて来なかったから、急に女性の登用が増えたように見える。そう知らない男性の不満を耳にすると、下の世代の私たちはストレスを感じ、役職に就きたくないと思ってしまう」
Bさん 「私の職場は看護師をはじめ女性が多い。産休・育休に入る人がいると、復帰までのつなぎをどうするかなど現場が混乱することも。育児をする人への周りの理解は必要だろうが難しい」
――今後に向け不安に感じることや希望は。
Bさん 「ロールモデルが欲しい。何歳でこんな仕事ができるようになり、何歳で学びきって次へといったお手本がいないのが悩み」
Aさん 「勤務先はリモートワークができるしフレックスでいつ出社してもいい。でも将来の育休・産休がちょっと不安かな。自分がそうなったときに仕事モードは『お休み』といった感じにはなりたくない。休職中に大学院に通うなどスキルアップに取り組み、戻ってきたらパワーアップしていたとなればいい」
Eさん 「私は自分にしかできない仕事をしつつ、子どもも大事に育てているロールモデルと思える人にもっと出会いたい。そういう人を知るきっかけや場があったらいいと思う」
理想の働き方、最多は「家庭重視の正規雇用」
日本経済新聞社と日経リサーチが共同で実施した「仕事とワークライフバランスに関する調査」で理想の働き方を聞くと平成生まれの20代女性は「結婚や育児を経験し正社員・正規職員でできるだけ長く働き続ける」という家庭重視の正規雇用派が37.3%でトップ。「正社員・正規職員で働き続け仕事重視で生きる」という仕事命派(24.1%)を10ポイント以上上回った。
全体でも32%でトップになった家庭重視の正規雇用派の割合は、結婚や妊娠・出産の現実感が増す30代前半女性が45.1%と高い。ただ、女性の活躍推進に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子・執行役員は「最近は大企業でも入社2、3年目で出産する人が出てきた」と語る。
変化を促したのは、企業に育児のための短時間勤務制度の導入を義務づけた2010年施行の改正育児・介護休業法だと矢島さんは指摘する。厚生労働省の雇用均等基本調査によると、同制度がある事業所は08年度の38.9%から17年度は66.4%に25ポイント以上上昇。「短時間勤務が普及し、『育児で時間の制約があっても、働き続けられるんだ』と若い女性たちの意識が変わった」(矢島さん)
妊娠後もキャリアを積めるようになり、「長く働き続けることを見越して若いうちにスキルアップしようとする女性が増えている」(同)。結婚・出産などのライフイベントを早く迎えて先々の昇進・昇格に備える人も。一方で最初の出産が早まって2人目、3人目で再び育休や短時間勤務となり、キャリアへの意欲を失う人もいる。矢島さんは「短時間勤務者ら、時間に制約のある社員の戦力化が急務」として仕事の与え方や能力評価の見直しの必要性を説く。
調査は11月22~26日、20~49歳の正社員・正規職員の男女775人にインターネットで聞いた。仕事に「満足/まあ満足」の20代女性は65.1%。満足度の要因(複数回答)の首位はこの層のみ「職場の人間関係」(41%)、他層は軒並み「収入」(全体は40.9%)が占めた。20代男性が妻・パートナーの想定で答えた女性の理想の働き方は仕事命派が38.1%で最多。
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