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「ESに書けるような立派な経験がない!」 ~大丈夫、小さな経験でも「意味」が大事です~ 就活教室 女子学生へ(3)

菊入みゆき 明星大学特任教授

2018/9/21

「私にはES(エントリーシート)に書けるような立派な経験がないです」と相談に来る学生は多いです。しかし、実は大事なのは、経験そのものではなく、あなたが経験から何を学んだのかをアピールすること。その上で、仕事にどう生かしていけるか、なのです。今回は、採用担当者に自分を上手く伝えるためのESの書き方を解説しましょう。

その経験はどんな意味があるのか

「私は、部活とか委員会とかに入ってないし、留学もしてないし、バイトリーダーとかやってないし、ESに書くことがないんです」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

しかし、ESは本来、自分とはどういう人間であるかを企業の担当者に上手く伝えることが目的です。実は、企業の担当者が知りたいのは、部活やアルバイトなどの経験そのものではありません。あなたがその経験の中でどう行動し、何を学んだのか、ということです。そして、そういうあなたが会社に入って、何をしてくれるのかを知りたいのです。

自分の「経験」を他人に伝えるまで

例えば、エントリーシートに書き込むテーマとして大学で受講していた講義を取り上げることができます。講義の中で、印象に残っているのは何でしょうか。

リーダーでなくても、優勝しなくても

野田さん(仮名、女性、21歳)は、授業で、ある企業の新規ビジネスをグループで考え、発表するという経験が、印象に残っているそうです。それは、数週間にわたるプログラムでした。はじめのうちは、グループで初対面のメンバーと話すことに苦手意識があり、苦労しました。しかしメンバーの1人が、「野田さんは、どう思う?」と聞いてくれたことがきっかけで、発言ができるようになりました。ディスカッションが楽しいと感じるようになり、最後の発表のときには、商品のネーミングの説明を担当し、緊張しながらも無事に自分の役割を果たしたのです。

野田さんは、グループのリーダーだったわけではなく、グループが賞を取ったわけでもありません。しかしこれは、野田さんにとって、意味のある経験でした。この経験から次の2つを学んだのです。1つは、「積極的に参加をすることでものごとは楽しくなり、自分も成長できる」ということ、もう1つは、「黙っている人も、声を掛ければ仲間になり、役目を果たせる」ということです。それからは、グループディスカッションでいつも笑顔で発言するようにしています。あまり話さない人がいたら、さりげなく声をかけるようにもしています。

野田さんは、グループの中でみなをサポートし、全員が参加できるように気を配ることのできる人になったのです。これは、野田さんが、私にいろいろな話をする中で、出てきたストーリーです。野田さん自身も、「そうだったんですね。思い返せば、あの経験がきっかけで、私は少し成長したんですね」と気づいたようでした。

内面に目を向けると見えてくる景色

野田さんは、自分の経験の意味づけをしたのです。単純に、「グルディスは最初はいやだったけど、だんだん楽しくなった」「発表できてよかった」という事実だけを見ていると、「リーダーでもないし、優勝とかしていないから、特別な経験ではない」ということになります。しかし、自分の内面に目を向けると、違う景色が見えてきます。野田さんの経験も、企業の担当者に対して、自分がチームでの仕事でどのように貢献できるかをきちんとアピールできるものです。もう1つ大きいのは、「会社に入ってからも、こうして日々の活動から学んで成長していく」という可能性をアピールできることです。

自分の経験に「意味づけ」をしよう

意味づけは、人に「語る」ことでできるものです。気持ちを分かち合いながら語ることで、当時の感情や行動を思い出し、どのような意味があったかを言語化することが大事です。そして実は、女性の方が「語る」ことに慣れていて、自然にできることが多いです。男性よりも対人関係やコミュニケーションに対する関心が高く、女子トークなどでスキルも磨かれているからでしょう。友人同士で「語る」ことで、経験の意味づけをしましょう。あまり構えずに、「ねえ、聞いて聞いて」といつものように語ってみてください。

語るときには、次のようなキーワードを意識しましょう。

【感情に焦点を当てる】

「そのときの気持ちは・・・」、「なぜそう感じたかというと・・・」など辛かったとか、楽しかったといった感情は大切です。あなたが何を大切にしているかが、そこに現れているからです。

【言ったこと、やったことを思い出す】

「そこで私が言ったのは・・・」、「意識してやったことは・・・」、「なぜそうしたかというと・・・」という具合に経験の具体的な中身を振り返ってみましょう。例え小さなことであっても、その場で実際に口に出したり、体を動かしたという行動は重要です。そして、必ず「なぜそうしたか」という意味を考えましょう。

【別の視点から見る】

「(実際は辛かった。けれども)良かったことを挙げるとすると・・・」、「(実際に私は~だった。けれども)まわりの人から見ると・・・」、「もし私が逆の立場だったら・・・」など、いろいろなものの見方で、経験を見てみましょう。複数の意味づけができるようになります。

【学んだことを文章化する】

「その経験から学んだことは・・・」、「気づいたことは・・・」、「その経験によって成長したとすれば・・・・・」という具合に、これまで語ったことをまとめてみましょう。その経験から学んだことが見えてきます。重要なところですので、きちんと文章にしてください。

【学んだことをどう活かすかを考える】

この段階まで来ると、今までと違うマインドが必要とされます。「これから、この経験を活かすとすると・・・」、「学んだことが活かせるのは・・・」。これまでは経験という過去のことを考えてきましたが、未来に目を移します。学びを活かす場面としては、「人とコミュニケーションをとるとき」や「なにか仕事をするとき」などが考えられます。イマジネーションを広げてみましょう。

◇  ◇  ◇

意味づけをするために人に語ったことは、文章にしておきましょう。ESの素材になります。もし、語るタイミングがなかったら、自分を相手に語りかけるつもりで、最初から文章にするのも良いでしょう。意味づけで、自分の経験をアピールポイントに変えてみてください。

菊入みゆき(きくいり・みゆき) 明星大学経済学部特任教授、JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所長。生涯発達科学博士。働く人のモチベーションについて専門的な研究を行う。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBコミュニケーションデザインでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。

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