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採用者数大幅増加の企業は危険? 安全?

ホンネの就活ツッコミ論(53)

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今回のテーマは「採用者数の大幅増」です。2019卒の傾向としては全体では売り手市場が継続。金融業界は採用者数を抑制傾向にあります。個別の企業では業績により分かれています。さて、学生からすれば採用者数を増やす企業が安全かどうか、気になることでしょう。これは企業側にとっても同じで、いくら人不足でも急激に増やすわけにもいきません。悪くすれば採用者数増加がリスクとなり、実際に、人気ゲームの開発企業が倒産したこともあります。今回は採用者数の増加の是非についてまとめました。

人不足でも採用者数の大幅増加はリスクも

日本経済新聞社が21日に発表した20119年春入社の新卒採用計画調査(1次集計)によると、主要企業の大卒採用は18年春の実績見込みに比べ9.3%増える見通しです。抑制傾向にある金融業界を除けば、大半の企業が採用者数を増やすか前年度並みです。中には、人不足ということで、大きく増やす企業もあります。

ここで、採用者数を大幅に増加させる企業に対して「採用してくれるのだから気にしない」と深く考えない学生、「こんなに採用して大丈夫だろうか」と警戒する学生、二通りに分かれます。もし、読者の方が後者なら、いい読みをしています。おそらく、社会人になっても、鋭いカンを発揮できるに違いありません。

「人不足であれば新卒採用を増やせばいい」という発想は、マリー・アントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と同じくらい、狭い世界観による発想です。「人不足であれば、人員を増やして対応する」。それはその通りです。そして、その人員がすぐに働けるなら話は簡単です。しかし、新卒採用の場合、すぐに働けるほど、個々の仕事に慣れているでしょうか。

欧米の新卒採用ならまだしも、日本型の新卒採用だと、個々の企業の個々の仕事に慣れていない学生ばかりです(特に文系学部出身の総合職採用)。個々の仕事に慣れていない、ということは、慣れるための研修が必要です。学生ないし新入社員からすれば「大学を卒業してもまだ講義を受けるのか」と思うかもしれません。

その講義、もとい、研修の費用は誰が払うのか、と言えば新入社員ではなく採用した企業です。当然ですね。研修を受けている間は、これも当然ですが、その企業にとって利益となる仕事をするわけではありません。給料に社会保険料、福利厚生費用に研修費用などいずれも企業側の持ち出しとなります。

ここでカンのいい学生の方はもうお気づきですね。研修期間の数カ月ないし半年(企業によっては一年)もの間、利益を生まない社員が一定数、在籍することになります。しかも、この研修、社外の研修会社に依頼すると、その分だけしっかり費用がかかります。と言って、社内だけでどうにかしようとしても任された社員(大体は人事部となります)は、研修専任とはなりません。研修専任の社員を置けるのはごく少数の大企業だけ。大半の企業は他の業務と兼任です。研修の比重が増えるとその分だけ、他の業務を圧迫することになります。

さらに、座学の研修が終わっても、すぐ働けるわけではありません。営業なり総務なりそれぞれの部署に配属された後も、その部署の管理職や先輩社員が指導していって、それでようやく戦力として計算できるようになります。この新入社員への指導も、管理職・先輩社員からすれば、他の業務の片手間に、となります。それが1人どころか、数人ともなれば、これも本来の業務を圧迫することになります。

ぷよぷよ開発企業が人員増で倒産も

このように、採用者数を大幅に増加することは、費用という点でも業務を阻害するという点でも、リスクが大きいのです。実際、過去には、人員を無理に増やした結果、倒産に至った企業もあります。大学生なら誰もが知っているテレビゲーム「ぷよぷよ」。落ち物パズルゲームとして有名であり、現在はセガホールディングスが権利を持っています。

このぷよぷよ、元はコンパイルというゲーム開発メーカーが1991年に開発しています。同社は広島県の小規模な企業だったのですが、ぷよぷよの大ヒットもあり、業績が拡大。1997年3月期には69億円もの売り上げを達成します。これに合わせて新卒採用も1997年に60人、1998年に121人と採用を拡大していきました。ところが、1998年卒の121人が入社する直前、1998年3月に経営が破綻。広島地方裁判所に和議を申請します。負債総額は約75億円で、当時のゲーム業界の倒産劇としては史上最大の規模でした。

なぜ、前年に69億円もの売り上げを出した企業が負債総額75億円で経営破綻をしたのでしょうか。ぷよぷよシリーズの新タイトルの開発遅延、巨額を投じたビジネスソフトの失敗など理由はいくつかあります。その一つが急激な新卒採用の拡大でした。いくら売り上げが伸びていたとは言え、会社の規模以上に新卒採用を拡大したことで資金ショートを招いたのです。

採用を含めた投資は黒字でも倒産を招く

和議申請で、入社直前だった大学4年生121人は全員が内定取り消しとなります。この様子を1998年3月20日の中国新聞朝刊は次のように伝えています。

「入社直前に百二十一人が内定取り消し-。テレビゲーム「ぷよぷよ」が大ヒットしたゲームソフト開発販売、コンパイル(広島市南区)の和議申請から一夜明けた十九日、同社には、今春採用を予定していた学生から問い合わせや抗議の電話が殺到した。四月の入社まで十日余り、学生や家族には「これから、どうすればいいのか」と不安が広がっている。(中略)コンパイルは二十六日から二十八日まで、広島、東京、大阪の順で、内定者を集めて説明会を開いておわびし、新たな就職先探しの努力を約束するという。直前取り消しの補償として一カ月分の給与を支払うほか、既に引っ越しした人への交通費や住宅の解約料などを支払う、としている。同社にはこの日、大手ゲームソフト会社を含む二十社近くから「現社員や内定者を採用したい」との打診があった。ゲームソフトの業界団体を通じて加盟社に採用も要請するなど、さまざまなルートから再就職の道を探る、という」(「内定121人『どうすれば』コンパイル和議申請 不況の春 風は厳しく 抗議の電話殺到 大学も就職先探し」)

入社直前の内定取り消しでしたが、補償金・交通費・解約料の支払い、就職先の斡旋など尽くした点でコンパイルはまだ誠実でした。ところで記事タイトルに「不況の春」とありますが、これはややミスリードです。不況であっても、コンパイルは利益を出していました。ところが新卒採用を含む人件費などが圧迫、資金ショートを招いてしまったのです。人件費以外にも過大な設備投資は企業経営では決して善とは言えません。むしろ、企業経営を圧迫するリスク要因なのです。

採用予算があっても教育は?

仮に採用予算が潤沢であり、黒字倒産の可能性が低い企業があるとします。その場合でも、別の問題があります。それは教育・研修です。企業の規模以上に新卒採用を増やす場合、人件費の手当てがついていても、管理職・先輩社員による指導が追い付くかどうか、という問題があります。

元からいる社員(管理職・先輩社員)は少なく、それでいて大量の新入社員の教育・指導を請け負うことになります。業務の片手間であり、人によっては十分な指導ができないこともあるでしょう。当然ながら、新入社員はそれだけ成長の機会を失うことになります。

大量離職を見込んでの採用も

実は大量採用をする企業は業績が拡大しているところだけではありません。業績拡大以外に、大量離職を見込んでの採用を進める企業も実はあります。もちろん、人件費は掛かるのですが、給与が上がる前に離職していきます。社長と一部役員・管理職以外は数年で顔ぶれが全く変わっているという企業もあるほど。

日本最大の労働組合である連合が2014年に実施した「就職活動に関する調査」によると、「ブラック企業のイメージが強い要素」について尋ねる設問(複数回答可)では、「大量に採用している」が10位(34.8%)に入っていました。

もし、大量採用をしている企業を志望候補とする場合、「人件費の手当ては大丈夫か」「教育・研修はどのように進めるのか」「離職率」、この3点を確認する必要があります。いずれか一点でも曖昧な場合は志望候補から外した方がいいでしょう。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
 1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。

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