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3年生が気にする資格有利説は本当か?

ホンネの就活ツッコミ論(18)

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NIKKEI STYLE

3年生の夏休みと言えば、インターンシップ参加だけではありません。ゼミ・サークルの旅行に行かれる方もいるでしょうし、中には資格の勉強をしておきたい、という方もいるでしょう。資格の有無がどの程度、就活で有利になるか不利になるかご質問もいただきます。ということで今回のテーマは「資格と就活」です。

資格について、過去の就活本を調べていたところ、ある就活本(2012年刊行)では、TOEICについて700点未満は「世の中の動きがわかっていない。時代においついていない」だそうです。すると、中学3年生で実用英検3級を取ったきり、英語は一切手付かずの私など化石みたいなものでしょうか。

ちなみに、700点以上なら「現代の学生として最低限の英語力がある」、800点以上なら「英語がそこそこできる」、900点以上なら「プロ意識が高く、何をやっても結果を出せる人物」だそうです。この本の影響なのか、「TOEICが600点しかないのですが、就活は大丈夫でしょうか」とのご質問もよくいただきます。

1990年代から資格が注目される

就活において資格がいつごろから注目されたか、少なくとも1990年代の就職氷河期には定着していたようです。就職氷河期真っ只中の1996年刊行『採ってごらんなさい!』(高倉あつこ、講談社)という就活コメディー漫画では、資格を取って就活を有利にしたとする学生が登場します。

コメディー漫画は世相を反映しています。1996年時点で、すでに資格が就活で有利、との言説が定着していたと言えます。そういえば、リーマンショック後の就職氷河期では、とある資格予備校が、「資格のない就活は恥ずかしい」とのCMを流していました。冒頭でご紹介した2012年刊行の就活本も、「資格が就活で有利」との言説を敷衍したもの、と思われます。

資格有利説で得をするのは誰?

資格有利説が出るたび、私は田中芳樹『銀河英雄伝』という小説に出てくる名言を思い出します。謀略に関わる中佐の名言なのですが、

「世の中に飛びかっている情報ってものには必ずベクトルがかかっているんだ。つまり、誘導しようとしていたり願望が含まれていたり、その情報の発信者の利益を図る方向性が付加されている」

これは資格有利説にも当てはまります。資格予備校の「資格のない就活は恥ずかしい」がその好例でしょう。このCMで資格有利説をあおっておいて、学生が予備校を受講すれば、それだけ予備校が儲かります。これをベクトルと言わずしてなんと呼びましょう(反語)。

もちろん、資格予備校であれ、私であれ、誰であれ、ビジネスを展開するために宣伝をするのが当たり前です。まさか、資格予備校が「資格のない就活でも恥ずかしくない」とのCMを流すことはまずないでしょう。ただ、その「ベクトル」「宣伝」があまりにも強すぎ、学生を不安にさせるのはいかがなものか、と思う次第です。

資格も種類は色々

そもそも、資格は国家資格、かつ、その資格を取得しないと就職できないものと、資格の有無に関係なく就職できるものに分かれます。医師免許であれば医学部、看護師であれば看護学部、理学療法士であれば医療系学部を卒業している必要があります(かつ、国家試験の合格)。資格と強く結びついている職業であれば「資格のない就活は恥ずかしい」どころではありません。「資格がなければ論外」なのです。

では、民間企業総合職や地方公務員などはどうでしょうか。中には資格と結びつく職種もあります。が、民間企業総合職・地方公務員の大半は資格と結びついているわけではありません。採用担当者からすれば、仮に資格がなければないで他の部分を見て評価します。私が見る限り、資格有利説を喧伝される資格予備校や論客などは、資格と結びつく職種の話を資格との結びつきがそれほどでもない職種の話にやや無理やり置き換えているとしか思えません。

資格有利説・不利説も時代により変化

資格有利説の面倒なところはネットの不確かな情報でもよく出ているところです。就活関連のネット情報は、古い時代のものも上書き保存で現在も流布しているものが多々あります。資格有利説、その逆の資格不利説も、中には古いものがあります。資格全般について言えば、現在の売り手市場ではそこまで気にする企業は多くありません。実際、リクルート就職みらい研究所の「就職白書2017」で「企業が採用で重視する項目」では取得資格は9.5%、14番目という低さです(1位「人柄」92.9%、2位「自社への熱意」76.1%、3位「今後の可能性」68.8%)。

逆に様変わりしているのが自動車普通免許です。1990年代から2000年代前半にかけては軽視され「書くだけムダ」「書くほどではない」との言説すらありました。しかし、この自動車普通免許、現在は重視されています。企業によっては「自動車普通免許がないとエントリーは受け付けない」「選考時になくてもいいが、入社するまでに取得することを確約してもらう」などの企業が増えています。

警察庁の「運転免許統計」によりますと、2001年時点で自動車免許保有者は、16~19歳で172.7万人(構成率2.3%)、20~24歳で678.2万人(構成率9.0%)でした。それが、2016年時点では16~19歳で94.5万人(構成率1.1%)、20~24歳で475万人(構成率5.8%)。構成率で見ると2001年には16~24歳で11.3%だったものが2016年には6.9%と5ポイントも下落しています。

自動車免許を持つ学生が少なくなった割に、営業職などでは社用車の運転が欠かせません。「書くだけムダ」が「必須」「入社までに取得を」と変わるのも自然な流れでしょう。日商簿記も就職氷河期の時には「1級があれば履歴書に書いてもよい」と言われていましたが、今では「2級でも十分。それだけ数字に強いことを示すので営業・総務・経理、どの部署でも使える」(メーカー)とのこと。

大きく変わりつつある資格と言えば、マスコミ系の検定も同じです。ニュース時事能力検定(毎日新聞社)、新聞検定(読売新聞社)、語彙・読解力検定(朝日新聞社・ベネッセ)、日経TEST(日本経済新聞社)などは2000年代後半に始まった当初、企業からはそこまで評価されていませんでした。

現在も、これらの検定に合格していたから内定、という企業は少ないでしょう。ただし、「あまりにも社会情勢を知らない学生が多すぎる。日経TESTやニュース時事能力検定などで結果を出していればそれだけ勉強した、とプラス評価はできる」(専門商社)とする企業が増えてきています。

大学により「資格が命」となることも

資格と就活の関連でいえば、大学というキープレーヤーも見逃せません。

中堅以下の私大、特に定員ギリギリか定員割れの大学や女子大などは、学生にやたらと資格取得をあおります。キャリアセンター職員に話を聞くと、「資格は大学入試の代わり」とする答えが返ってきました。

つまり、難関大は大学入試を乗り越えるだけで受験生は苦労します。その壁を乗り越えて入学した学生は、壁を越えた経験を持っている、とも言えます。

「挫折も成功も知っている点は強みの一つ。その点、うちの学生は入試自体が簡単で半数以上は推薦・AO入試で入る。つまり、挫折も成功も知らない子たちばかり。それだけ打たれ弱い」

そこで、秘書検定など資格取得を勧めることで大学入試の代用とするそうです。

企業からすれば「どちらでも」

採用担当者に資格の有無について取材すると気にしないとする企業が多数を占めました。その典型が旅行業界です。旅行業務取扱管理者を取れば就活に有利、との宣伝を一番真に受ける学生が多い業界でもあります。

学生からすれば、一生懸命勉強したので就職できると思い込んでしますようですが、旅行会社に取材をすると、資格の有無は無関係とのこと。無ければ無いで入社後に勉強して取得してもらう、とのことでした。

資格の有無より人間性

こうした事情は受検する学生が増えたTOEICも同じです。ある専門商社はTOEIC880点の女子学生に内定を出しました。ただこの企業は海外でビジネスを展開しているわけではありません。「TOEICの点数がどうこうより、彼女の人間性に惹かれて内定を出しました。仮に彼女のTOEICスコアが400点でも、スコア無しでも、内定を出していました」とは、採用担当者の弁。別の専門商社では、国内の部署でも英語を使って商談することがあります。「ただ、TOEICのスコアが低いとしても、他の要素を見て採用を決めます。TOEICのスコアが700点、800点だったとしても、うちに合わないと考えればそこは落とすでしょう」。

資格マニアは困る、とするメーカーの採用担当者もいました。「うちだと、TOEICの他に工業英語能力検定を取って、ということであれば業務内容とも関連あるから、意欲が高いと評価できる。しかし、全く無関係の資格を並べられても、それは趣味の延長でしかない。むしろ、『資格』に寄りかかりすぎて、本人をアピールできない人材として落とすことになる。そこに気づいていない学生が多いので説明会などで話すようにしている」。

売り手市場であっても就職氷河期であっても、新卒採用で最後の決め手となるのは人間性。それを踏まえたうえでどの資格を取得するか考えるしかないようです。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
 1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。

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